循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

中防灰溶融施設で起きたこと

2007年12月06日 | ガス化溶融炉
 本年(07年)5月から続いた中防灰溶融施設スラグからの高濃度の鉛溶出とそれにつづく排ガスからの水銀発生。現場は延べ1年近くの操業停止と大規模改修を余儀なくされている。 
 施設設置者の東京二十三区清掃一部事務組合(一組)がホームページ(以下HP)に「水銀トラブルの原因と対応策、および工事スケジュール」を公表したのは07年11月21日のことであった。
 HPによればまず灰溶融施設からの排ガス処理は主灰乾燥機なる装置と溶融炉本体の両系統方式になっているという。それぞれ別個にバグフィルターでろ過したあと、洗浄装置の手前で排ガスを合流させる。その後、脱硝装置(窒素酸化物を除去する装置だが、一組の場合は触媒反応塔)を経て煙突から排出される。
 主灰乾燥機とは各清掃工場から搬入される主灰が水分を多く含むため、都市ガスを使って約600度に加熱、乾燥させる装置であるが、多くの住民にとってこの話は初耳だろう。灰を乾燥するため都市ガスまで動員していたのである。
 しかも「調査の結果、主灰乾燥機系の排ガスに含まれる水銀が十分取り切れていなかった」とHPは記述する。だがそれはあくまで記述であって、「自主基準値以上の水銀が出た本当の原因」については何も語っていない。
 焼却技術に詳しい専門家の話では「搬入側の清掃工場に水銀を含むごみが大量に持ち込まれたとしか考えられない」とのことである。それが事実で、どこかの不心得者が蛍光灯か体温計を持ち込んだとすれば、一組はそれを突き止めて告発措置をとるべきであろう。ちなみに蛍光灯1本には10mgの水銀が含まれる。
 一組施設管理部技術課の生田目清治・溶融処理施設係長によれば「(触媒反応塔には)かなりの水銀が付着しているおそれがあり、再び水銀が揮散するリスクを考え、4炉分すべての触媒反応塔を交換することにした」という。もともと触媒は希少金属を内蔵しているため値段は目の玉が飛び出るほど高い。一説には1セット1億円ともいう。しかも劣化が激しく、3年が限度というが、これを実質1年で交換するのである。まるで防衛費乱費事件のミニ版だ。
 HPには今後の改修スケジュールが図示されている。それによると3号炉のみ本年1月上旬に稼動する見込みだが、1、2、4号炉は来年1月はじめから改修に入り、都の環境局や地元江東区との折衝を経て、本格的に全炉が動くのは3月中旬である。改修工事は瑕疵担保責任によって全部メーカーが行なう。ちなみに担保期間は3年、メーカーは世界企業の三菱重工業というから笑えない(別稿で「重工伝説の崩壊」を搭載)。いくらかかるか分からぬコストはすべて重工の負担だが、一組も「自分たちの腹は痛まない」と他人事で済ませられるわけもない。事故のあと中防を訪れたとき、現場責任者は「心休まるときがない」としみじみ語った。
 灰溶融炉が稼動するまでの間、中防施設に搬入していた江戸川、中央、新江東、有明の各工場は焼却残渣を自前で処理し、最終処分場へ運び込むことになる。
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。