循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

日の出町長の善政?

2008年09月18日 | 廃棄物政策
◆青木町長の善政?
 今朝(9月18日)、みのもんたの「朝ズバッ!」にどこかで見たような老人の顔が映った。しばらくしてそれが青木国太郎日の出町長(80歳)とわかった。なぜ青木が全国をエリアにするテレビなんぞにに出ることになったのか。
 すでに昨日(17日)、「日の出町が75歳以上の高齢者医療費を無料にした」という話題が昼のワイドショーでいち早く流れ、新聞各紙もスポーツ紙を含め一斉にそのニュースを書き立てたのである。
 流行りものが大好きなみのもんたがこれを見逃す筈がない、というだけの話だが、昼のワイドショーにしても朝ズバッ!にしてもオピニオンリーダーを以って任じる評論家や経済学者、大学教授などがコメンテーターとしてズラリ居並んでいる。中には吉本系のお笑いタレントなども混じっているが。
 サブのアナウンサーによると「最近イオン系列のショッピングモールが日の出町にでき、そこからの固定資産税や住宅建設の増加で町の税収が潤ったから」という。これに対しコメンテーターの誰かが「日の出町処分場」をとりあげ、住民の生命と健康を犠牲にして町が多額の金を稼いでいる現実に触れるのかと思ったら、「やる気になればできる」とか「国の政策の不備を補強した」などと寄ってたかって日の出町長を美談の主に仕立て上げてしまったのである。
 もはや彼らの頭から「日の出」はスッポリ抜けてしまったのか。そうではない。後期高齢者医療制度批判という流れに逆らうような異説を唱えたらコメンテーターの座が危うくなるという計算なのだろう。
 少なくとも同時代を共有する知識人なら日の出は安保と同じくらい、心のどこかに突き刺さっていて不思議のない戦後史の棘の筈だ。

◆安い宣伝費
現在、日の出町の人口は約1万6,000人。年間予算(約23億円)の半分は「ごみ」からの収入である。正確には三多摩地区広域処分組合(現在は東京たま広域資源循環組合)から入る地域振興費(迷惑料)で、毎年度約11億円。これに加え、第三処分場と呼ばれる稼働中のエコセメント製造施設からの固定資産税も入る。ちなみに資源循環組合は多摩地域における25市1町の自治体によって構成・運営されており、あきる野市、日の出町、奥多摩町および檜原村は参加していない。
 青木は日の出村時代の厚生課長、税務課長、助役(2期)を経て1990年4月、町長になった。現在は5期目。その任期全体が処分場、特に第二処分場の誘致に辣腕を振るった期間に重なる。
 かつて環境監視研究所の前所長、中南元氏は次のように訴えた。「三多摩はひとつというがわたしは決してそうは思っておらんのです。“見かけの繁栄でモノを捨てている町”と“農業・林業が衰退している農山村”がある。日の出町は後者の方で、赤字財政の弱みに付け込んで人の嫌がるもの(処分場)を日の出町に押し付けているのが実情です」(1991年、「廃棄物問題シンポジウム」で)。
 青木はその状況を逆手に取り、住民の反対運動や裁判闘争など意にも介さず、積極的に三多摩全体のごみ受入れに狂奔した。
日の出処分場闘争を経験した人々は多い。そのうちの一人がいう。「青木町長は地域振興費以外にも組合を脅して何がしかの金をむしり取っています。組合もごみが人質だから殆ど青木のいいなりです」。日の出町民の生命と健康を犠牲にした金儲けが青木町政の本質だった。
 今回青木がやった「後期高齢者医療費の肩代わり」をテレビだけでなく、新聞各紙が一斉にとりあげたことは前記のとおりだが、対象者は1,830人で町財政からの支出総額は8,500万円。11億円の1割にも満たない。そんな金で全国に福島県矢祭村長なみの善政をアピールできたのだから安いものだ。
 過去に学ばないというが、日の出問題は過去ではない。マスコミの能天気ぶりはもはや絶望的である。 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。