循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

ブログが止まって2カ月!

2011年01月10日 | 廃棄物政策
◆ブログが止まってーーー
 日記文学というジャンルがある。古くは更科日記、蜻蛉日記が有名だが、大正期以降の傑作のひとつが永井荷風の「断腸亭日乗」だ。
 日乗は日記の別名だが、断腸とは文字通り「腸(はらわた)が千切れるほどの深い悲しみ、苦しみ」を指す。昔、中国で心ない兵士に子猿を奪われた母猿が、船で川を下る軍隊を百里も追いかけ、ようやく子猿のもとに辿りついた時、腸が千切れて死んでいた、という故事からきている。昔の文士は例外なく漢籍の素養があったのだ。
 大正6年(1917年)から昭和34年(1959年)の42年間、荷風は世の変転や俗物どもの振る舞いに眉を顰め、断腸亭と名付けたといわれているが、実際は子供のときから腸が悪く、のべつ幕なし下痢に悩まされていたのである。ところが去年10月末、まるで他人事と思っていた「断腸」が突如わが身にふりかかってきた。
 2010年10月29日早朝、下腹が雷の如く震動し、脱兎のごとくトイレへ飛び込む。ひと渡り天をも揺るがすイグアスの大瀑布が起きたあと、ついに俺も断腸亭かと覗きこんだら便器全体が茜色の鮮血で染まっていた。
 え、俺は男だ、と森田健作風に叫んでみたが、やがて恐怖が襲いかかり、急きょ地元の総合病院にタクシーで駆け込んだ。やや治まったところで点滴を受け、3日後、内視鏡検査と決まった。この種の検査は本番より事前の準備で誰もが難行苦行する。
 内視鏡検査は腸壁のポリープを切除し、若干の掃除を済ませて終わった。時間にして約25分。担当の医師によれば出血の原因は「憩室炎の悪化」だという。
 憩室炎とは腸の内壁に何らかの原因で窪みができ、そこに異物(食い物の滓等)が溜まる疾病で、罹病率の大半は50歳以上の中年男子だという。そういえば俺も50歳以上だった。多くはそのまま気付かず日常を過ごすが、稀に炎症がこじれて出血することがある。だがその稀なひとりが自分だったとは! 
 術後、医師が自分のパソコンに大腸のカラー写真を呼び出し、やおら能書きを垂れはじめた。そんなものを見せられながら、つくづくと考えた。人間の身体は口腔から始まって食道、胃袋を経て、十二指腸、結腸、直腸から肛門に至る壮大な管(パイプ)でしかない。
 ふと、奇妙なキャッチコピーが浮かんだ。すなわち「人間は考える管である」。以後、どんな美人を見ても心が動くことはなくなった。その代わり頭も動かなくなった。ブログも止まって2カ月が過ぎた。

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