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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

水銀を焼却炉に入れないために

2011年02月20日 | 廃棄物政策
 2月26日(土)に「検証!焼却大国日本の水銀汚染」というシンポジウムが開催される。場所は豊島区勤労福祉会館・大会議室、時間は午後1時15分から同4時30分で、主催は水銀汚染検証市民委員会である。
 パネラーは貴田晶子(国立環境研究所)、池田こみち(環境総合研究所副所長)の両氏および小生の3人。主催者側が小生に送ってきたタイトルは「東京23区4清掃工場の水銀事故と背景」となっている。以下、当日の発言要旨。

 2010年6月11日に起きたこと
(1)足立清掃工場(350t×2)2号炉で11日午後3時30分、水銀濃度の異常上昇が起きた。数値は東京都清掃局時代に決めた自己 規制値(0.05mg/Nm3)の30倍と現場の労働者は証言している。
(2)水銀濃度計(以下水銀計=設定レンジ1.0mg/Nm3)が振り切れ、故障という形で数値がゼロになった。以後計測不能となり、いまもって正確な投入量は不明である。ただしバグフィルター、触媒反応塔に多量の水銀が付着し、機能不全になった。交換費用は2億8,000万円といわれるが、それをかなり上回っているようだ。
*水銀計は紫外線を対象物(バグフィルターや触媒反応塔等)に照射し、その吸収率で濃 度を判定する装置。それぞれの対象 物は紫外線を吸収する波長が決まっている。
現在、自治体に水銀計を納入しているメーカーは3社。23区には京都の「堀場製作所」の製品が入っている。堀場も他のメーカーとも「前代未聞の事件」と驚いていた。
 なお東京23区以外の大都市自治体で水銀計をつけているのは横浜市、名古屋市ぐらいで、大阪市、京都市、神戸市などはつけていない。だが水銀計をつける、つけないの前に毒物を清掃工場に入れない体制をどうつくるかが重要である。
 焼却炉に水銀が入るということ
(1)水銀は特別管理廃棄物つまり毒物であるが、以前から足立清掃工場に水銀は頻繁に入っていたという。その都度現場労働者の組合(一組労組)は工場管理者と東京二十三区清掃一部事務組合(一組)に対し厳しい原因追及を求めて申入書を出している。
(2)完璧な排ガス除去装置で水銀も捕集されるというが、そんな単純なものではない。
焼却炉に入った水銀量が50g前後だったら排ガス処理装置(バグフィルター、触媒反応塔など)で処理可能だが、それ以上になると除去困難になり、水銀は煙突から大気中に放出される。もともと水銀は炉に入ると一瞬に気化する性質をもった重金属類である。もしかなりの時間をかけて徐々に気化するなら量が多くても(たとえば200g以上でも)処理装置で除去可能だが、まったく現実的ではない。
(3)水銀が入ることが前提なら住宅地に清掃工場なんか建てられなかった筈である。
(4)日常的にかなりの重金属類、とりわけ水銀が煙突から大気中に出ている。周辺の汚染度を調査すべきではないか。
 
 二度と焼却炉に(水銀を)入れさせないために
(1)これは事故ではなく「環境犯罪」である。そのための防止・摘発体制はできているのか。被害届は出したが、刑事告発をす るための「犯人特定」ができていない。
(2)昨年(2010年)夏の収集運搬業者と排出事業者への聴き取り調査も医療機関だけに限定した。しかし水銀を扱う持込み業者 等がはるかに疑わしい。
(3)一組には処理業者を規制する権限と許認可権限がなく、それはすべて23区長が持っている。
(4)その23区側に当事者意識がまったくなかった。だが今回の事件でようやく責任を自覚したようだ。「清掃事業区移管」が今日の事態を招いたというべきである。
(5)一組の幹部が23区の課長を集め、対策のための横断組織をつくった。一組労組の申入れに対する反省もあったようだが、23区が「主人」で 一組が「従」という関係が変わらないかぎり限界がある。
(6)ようやく新年度(2011年4月1日)から「搬入指導担当係長」を設けることになったが、係員はいない。ただのポーズにすぎないと現場は見ている。
(7)今後、水銀の不法投棄事件は中央防波堤処分場(中防)で起きるのではないか。搬入前検査は事実上不可能だからである。


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