【雑報】バチカン秘密文書の漏洩と内部の権力闘争

　バチカン内部の権力争いが熾烈になってきているようです。

バチカン文書流出、暴露された「聖なる」権力闘争: AFPBB News（2012年06月04日 12:48）

　以下、一部抜粋。

／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／

　ローマ法王庁（バチカン）の秘密文書がマスコミに大量流出した問題で専門家らは、法王庁でナンバー2の地位にある枢機卿の追放やローマ法王自身の交代を狙った策略だろうとみている。
　1月に明るみに出た今回の文書流出事件は、「バチカン」と「リークス（漏えい）」を合わせた「バチリークス（Vatileaks）」という造語で呼ばれている。さまざまな陰謀が渦巻くバチカン市国の国務長官（首相に相当）を務めるタルチジオ・ベルトーネ（Tarcisio Bertone）枢機卿の失脚を狙ったものとみられている。バチカン内部にはベルトーネ枢機卿が権力を乱用し、カトリック教会の利益にならない行動を取っていると批判する声があるという。
　流出した文書はローマ法王ベネディクト16世（Benedict XVI）のデスク上から直接持ち出されコピーされた私的文書。内部告発者の一掃に法王庁が動く中、イタリアのメディアでは策略はさらに深いものではないかという臆測が流れている。

　カトリック教会は近年、資金洗浄から聖職者による未成年への性的虐待までさまざまなスキャンダルに見舞われている。そうしたスキャンダルに関する法王庁の対応に不満が広がる中、独自に選んだ人物を未来の法王にしようと準備を始めた者たちがいるようだ。
　伊紙レプブリカ（La Repubblica）によれば、複数の枢機卿から成るあるグループは、非常に野心的な目標を持ってすでに行動を始めている。まず国務長官職を手中に収め、それから自分たちが推す法王候補を伴って新法王を選出する会議「コンクラーベ」を押さえる筋書きだという。
　ベルトーネ枢機卿はベネディクト16世の側近だが、教会内の一部で物議を醸している。特に宗教事業協会（バチカン銀行）の資金洗浄疑惑はバチカンの行政における不透明性とスキャンダルの象徴になっている。
　流出文書によって税金問題や児童虐待疑惑、保守強硬派との交渉など数多くのバチカンの秘密に光が当たった。それらはどれも初めて耳にするものではなかったが、バチカン内の対立勢力間に根深い敵意が存在することが明らかになった。

　バチカンに詳しいブルーノ・バルトローニ（Bruno Bartoloni）氏は、劣悪な統治と腐敗に悩まされ続けているバチカンの多くの関係者は今回の「バチリークス」で我慢の限界を超えたと語る。
　「影響は重大で、枢機卿たちの間に不安と憤慨をもたらすだろう」とバルトローニ氏は言う。「彼らは真剣に浄化のできる人物を探そうとするだろう。ただし、浄化の過程の中で革命が始まるリスクを彼らは犯すことにもなる」

／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／

　今に始まったことではありませんが、さすが超巨大宗教の大本山。「権力は腐敗する、絶対的な権力は絶対的に腐敗する」を地で行っている感じですね。
　ローマ・カトリックの宗勢というのは、どうなっているのでしょうかね。かつてカトリック大国だったフランスでは無神論者が増えているとのこと。イタリアやスペインではけっこう根強いでしょうが、神父のなり手はどこでも少なくなっているとかいう話を聞いたことがあります。注目すべきは南米で、かなり土着的な色合いも含みながら、隆盛のようです。
　ただ、「進化論排撃」などをやっているキリスト教原理主義者は、カトリックではなく、アメリカのプロテスタントだというところが面白いですね。アメリカのプロテスタントはバプティストやメソジストなどいろいろ派閥があって、けっこう新宗教のようなものもあるようです。
　ちなみにアメリカでは、伝統的にプロテスタント優勢ですが、ヒスパニック移民の増加によってカトリック人口が増えているようです。もう出生数では白人は最大集団ではなくなっているとかいう話もあって、いろいろ難しそうです。

【アメリカ成人の宗派別キリスト教徒の比率】
　　キリスト教徒　　　78.4%
　　　　プロテスタント　　51.4%
　　　　　　：エバンジリカル　　26.3%
　　　　　　：主流派教会　　　 18.1%
　　　　　　：黒人教会　　　　　　6.9%
　　　　カトリック教徒　　　23.9%
　　（「アメリカはWASP支配の国」は既に神話：中岡望の目からウロコのアメリカ）

　人種別で見ると、
　　白人　　　　　カトリック22.4%　プロテスタント57.1%
　　黒人　　　　　カトリック 4.2%　プロテスタント82.9%
　　ヒスパニック　カトリック67.6%　プロテスタント21.5%
　　（アメリカの社会と文化：アメリカとキリスト教）

　私は「政教分離」は人類の獲得した智慧であり、宗教政治勢力はない方がいいと思っていますが、世界はなかなかそう簡単には行かないようです。