今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

黒檜岳・シゲト山

2006年02月02日 | 山登りの記録 2004
平成16年9月21日(火)

 天気予報では火曜水曜と雨の予報だったので、計画をしていなかった。前日の予報で急に晴れに変ったので、遠くは無理だ、急なことで用意が出来ない。本当は北アルプスの餓鬼岳に行きたいのだが…なんとか今年中にいきたいな。

 長野や新潟などは雨の予報もあるから駄目だ、群馬県内か日光方面だ。結局日光方面、登り残しているヒトケの少ないところで、黒檜岳にした。もっとも黒檜岳については、ガイドブックにものっているし、一応登山道もあって、最近ではツアーで押し掛ける団体までいるという話も聞いている。できればネットで情報を得たその先、シゲト山や三俣山あたりまでピストンと考えた。

 夜中に家を出て日光に向かう、2時半ごろ中禅寺湖に着く。取りあえず菖蒲ヶ浜の駐車場で仮眠をする。

 目が覚めると明るくなっていた。時間は5時50分、アラームの前に目が覚めてしまったわけだ。シュラフを持ってこなかったので少し寒かった。パンを食べ出発の準備をするが、駐車場がここではいかにも遠い、菖蒲ヶ浜の遊歩道入り口はずっと離れている。竜頭の滝入り口からホテルがある遊歩道入り口近くまで行くと、スキー場の駐車場があって停められそうだったので、そこに車を停めて歩き出した。

 プリンスホテルの裏手を回って中禅寺湖畔を高巻くように遊歩道は付いている。中禅寺湖の西側は戦場ヶ原から急斜面で落ち込んでいるが、戦場ヶ原と中禅寺湖はかつて一つの火口原だった。その間を男体山の溶岩が分断して堰止め湖である中禅寺湖ができたという。だから湖の西側は岩場が多く、地形も険しい、つまりそこを通る湖の周回路は渚状の南岸沿いに比べて上り下りが多く、岩場の通過も多いから、遊歩道としてはかなり危険な所もある。初めは、湖を高く巻いていた遊歩道は、赤岩などの岩場を通過した後一旦渚状の所まで降り、再び岩場を高く巻いて入り江を大回りし、またなだらかになって千手ヶ浜に降り立つ。所要時間1時間で人気のない千手ヶ浜にたどり着いた。

 天気は上々、湖に反射する朝日が眩しい。今日は下界では30度以上になって蒸し暑いらしい、今年の猛暑はまだ続いているようだ。遊覧船の桟橋に小旗がひらめいている、シャッターを下ろしたこぎれいな売店があって、見上げるように高く大きなミズナラの大木が疎らに立っている。かつて、ここは学校キャンプのメッカだった。もちろん千手ヶ浜(千手ヶ原が湖に接するところ)まで車で入れたから、そこそこ人が集まる場所であったはずだ。今は小田代原や西湖などを含む戦場ヶ原奥のこの一帯には車が入れない。自然保護のため数年前から一般車の進入が禁止され、そのかわり電気自動車のリムジンバスがここと赤沼茶屋の間を運行している。しかし、まだこの時間では始発のバスは到着しない。

 中禅寺湖に沿ってさらに進む、もう少し阿世潟方面に向かうとそこに登山口があるということ。千手堂跡という小高い遺構を越えると、直ぐにいくつもの指導標が競うように立っていて、そこが黒檜岳の登山口だった。
 
 社山の登り口と似た、少し荒れた雰囲気に見えるのは何故だろうか?登りは直ぐに急になって沢を横切る、ここで思わず旨い水が手に入った。ここからますます急になって尾根をぐんぐん登る、ダケカンバとミズナラの林からシラビソやコメツガの樹相になったが相変わらずの急登が続く。

 樹林の切れ間から前白根や錫ヶ岳がかなり近くに見えた。特に錫ヶ岳は7月に登ったばかりなので嬉しかったが、ここから見上げるとずんぐりと丸い山だ。尚も展望のない樹林帯を登り続け、傾斜が緩んでもう少しかと思ったが、そこからが長かった。一旦平らなところに登り着いたので、今度こそ直ぐだと思ったら、そこからまた登りになって、倒木帯で道を失ってしまった。すぐ手前にははっきりとした道があるのにここで急に道が無いのだ。赤テープを頼りに直登したがすぐ藪で通行困難、戻ってきてうろうろしてしまった。この夏の台風のせいか、このあたりコメツガの大木がばたばた倒れていて道が隠されてしまったようだ。

 一番たくさん倒木が折り重なった所を越えてまっすぐ登っていったら、また見覚えのある黄と赤の2トーンプレートが現われた。そこを上がっていくと間もなくまた小広い平坦な林になって、その中のむしろ周囲よりやや低いのではと思われる場所に黒檜岳山頂名のプレートと三角点があった。そこは社山方面への分岐にもなっている。何の変哲もないコメツガの樹林の中は休むにも適さない、直ぐ先にあるという雨量観測局というところに向かう。

 100㍍近く進んでそこに笹の切り開きがあり、少し降りる形になって黒檜岳雨量観測局と名前が付けられた、要するにロボット雨量計があった。まだ真新しく、つい最近設置されたようで国土交通省渡瀬工事事務所と書いてある。そこに立つと錫ヶ岳や白根山の山並みが見えた。左手の木々の上に少し伸び上がって見ると皇海山が意外に近かった。そして真下にシゲト山とその先に三俣山へ延びる稜線が見渡せた。まだ少し迷っていた、今の時刻は既に10時を回っている。意外に手こずって、登山口から2時間以上カカッテシマッタ、倒木で道を見失ったのも原因だが。軽く考えていた黒檜岳が結構手強かったわけだ。

 ともかく、しばらく休んでから考えることにして、取りあえずおむすびやお菓子を食べて腹ごしらえ。朝、出発前に菓子パンを2個も食べていたので、あまりお腹は空いていない、この頃山に来ると食べてばかりのような気がする。登りでどっさり汗を絞られたので、沢の源流で汲んだ水が一番うまかった。天気予報通り夏のような陽が照り返して景色が白く見えるほど。でも、汗で濡れた体は休んでいると冷えてきて寒く感じるので、長袖シャツを着た。夏の様と言っても、今日は乾いた風が結構強く吹いていて、汗を乾かす。熊よけに登り初めからずっとラジオを付けっぱなしにしている。

 ここから眺める山々は、昔登ってみたいと思っていた山域の山々だ。皇海山から白根山、そして半月山から三俣山と登山道が不明瞭で人気も少ない、かつては情報も少なくて道の有無やその状況さえ知るよしもなかった。最近はインターネットのおかげでこれらのマイナーな山の情報さえ簡単に知ることができる、こういった山に登っている人たちも案外多い事を知ったのも驚きだ。おかげで錫ヶ岳にも登れたし、こうして今黒檜岳以西の未知の山にも登れるというものだ。しばらく休んだら、まだ時間も早いしここで引き返したのではいかにも物足りないということもあり、三俣山まではこの時間からでは無理だろうけど、手前のシゲト山までなら行きたいと思い腰を上げた。

 雨量観測局からシャクナゲの藪をかきわけ(といっても藪は大したことはないし、ルートははっきりしていて迷うこともない)コメツガの樹林の中を下って鞍部に下りた。またそこから少し登って下り、ちょうど錫ヶ岳の最後の登り手前辺りと雰囲気の似た笹の広がった緩い斜面を、またコメツガの小山に上り返し、赤テープ類に導かれて下り始めようとしたら、ものすごい急傾斜になってルートが不明になってしまった。
 急傾斜の向こうに低く先のピークが見えるが、このまま下っていくとかなり下の方まで下らなくてはならない。地図で確認するが、ネットの情報ではシゲト山付近が唯一地形が複雑で注意が必要と書いてあったのを思い出して、そのプリントを見てみるがどうも南側にいったん折れ曲がってから下る様に書いてあるので、引き返し南斜面を下る。直ぐに緩い鞍部状になるが、目印が無くてルートは判別としない。また引き返し、西にトラヴァース気味に巻いて先ほど引き返した急斜面付近に再度戻るがやっぱり不明。仕方なく、またこの小山の頂上付近まで引き返す。引き返した時点で疲れも手伝い、もうどうでも良くなった。この付近でやはりルートを失って道を間違えたという他のHPも見ていたが、少しやけになった。

 気乗りしないまま、もう一度南に下って、さっき引き返した最後の赤テープ付近を少し我慢して先まで進むと、シカのヌタ場と思われるものを2カ所見た。実は急斜面の下りに地図で位置確認をした時、南にやや低い笹のピークが見えていた。もしやと思ったので、さらに先に進むとまたそこに例の金属の目印プレートを見つけた。そうして、よくよく見れば左手が笹の斜面になった小山に向かって薄い踏跡まで付いていた。

 少し登ると足尾側の展望が広がった。松木渓谷の岩肌むき出しの荒々しい光景と、その高まりに皇海山、左奥に庚申山、そのむこう遙かに袈裟丸連峰が逆光でシルエットになって見えていた。わずかな登りでシゲト山のプレートがいくつもぶら下がった頂上に着いた。シゲト山頂上と言っても疎らな林の中で展望はない。山頂標識のある、ほんの少し手前には稜線の南側に笹の斜面が広がり、足尾方面や黒檜岳と大平山がよく見えた。ここまで来られて満足。静かでマイナーな山の頂を満喫した。ちょうど反対側庚申山方面からは何度か眺めた山に今こうして居るわけで、誰もいないし、またこの後、少なくとも今日は人が来るとは思えない。

 確かにこの山だけ登るというような山ではない、黒檜岳にしたって標高こそそこそこだけど、登ってそれ程楽しい山ではない。玄人好みという言い方があるが、それはめぼしい山を登りつくして次にじゃあ何処に登ろうか?というようなレベルの話だ。でも、山そのものは確かに立派で、品格も雰囲気も申し分ない、登山道も指導標もお節介すぎるほどの有名山岳は人も多いし、今ひとつ登った充実感に乏しいのも事実だ。何となく登らされたという感じも面白くはないし、地図やガイドブックさえ不要なイージー登山でも、不安なく登頂できてしまったりする物足りなさがつきまとう。道を探したり、迷いそうな心細さに自らを励まして到達した山頂は、たとえ展望が無かったり何の変哲もない平凡な一地点であっても喜びは一塩だ。

 足尾山塊のなじみのある山々を眺めながら、そういった密かな満足感に浸った。この先の三俣山はまた別のルートから周回できそうだ。三俣山はともかく、錫ヶ岳の次と言えば、宿堂坊山だな、そのうち登ろう。こうやって点々と繋いでいくとこの辺りのめぼしい山はみんな登れてしまうかもしれない。

 シゲト山で15分ほど休んで、帰りは飛ばした。一度来た道を戻るのは楽だ。シゲト山を1時前に出発して、黒檜岳を下り中禅寺湖畔に降り立ってまだ3時だ、来た道を戻りスキー場の駐車場に4時過ぎに戻った。予想したよりは強行軍だったが、また未登の山2山登れたのは収穫だ。結局朝から帰りまで人に会わない山登りだった。まあ、正確に言えば帰りの千手ヶ浜にバスで来た観光客4,5人を見たが、それは数に入れるまい。

 残念なのは、千手ヶ浜のベンチに使われている丸太の足に生えていて、帰りに取っていこうと思っていたムキタケとヌメリスギタケを誰かに取られてしまったことか。ンー無念。
 中禅寺湖畔も前日までの3連休は混んだであろうが、今日は人気も少なく静かだった。夏のような陽射しの奥日光は景色も白っぽく、休んでいるようだった。水沼温泉センターに寄って帰った。

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