今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

諏訪山

2006年02月07日 | 山登りの記録 2004
平成16年4月25日(日)

 諏訪山はそれこそ20年来の念願の山だ。昨年も登ろうと準備していて、天気が悪くて行けなかった。西上州最奥、かつては秘境の山だった。登山口からのアプローチそのものよりも、この山がある上野村が、同じ県内とはいえ交通の便が悪くて、なかなか行けないと言うのが、後回しになっていた本当の理由だった。今回は子供二人と、その諏訪山に行くことにした。

 通い慣れた南牧村を経由して上野村に向かう、と塩ノ沢峠への道を上っていく途中に「湯ノ沢トンネル」なる標識がある、…その方へ半信半疑ながら入っていくと。そのまま新設されて開通したばかりのトンネルになった。そう言えば、このトンネルのことと思われる記事をどこかの新聞で読んだ様な気がする。去年の天丸の時、帰りにこのトンネルが工事中であったのは憶えているが、もう開通していたとは思っていなかった。
 ほとんど走っている車もなくて、真新しいトンネル内はきれいだった。トンネルを出ると、そこはもう国道までわずかの上野村だった。そんな訳で思いの外早く上野村に入れた。

 登山口の浜平周辺には県外ナンバーの車が道路脇などに沢山停めてあった。釣りの人たちが多いようだ、ところが旧鉱泉跡の浜平集落にはマイクロバスまで停まっているではないか!団体が入山しているようだ。次男はこれでかなり腐っていた。
 次男は山に沢山人がいるのがイヤだという、みんな同じだよ。「○○山想会御一行様」とか書いてあるので、中高年の登山グループであることは間違いないだろう。

 仕度をして湯ノ沢沿いの登山道に入る。昔鉱泉宿だった建物はそのままで、少し新建材で手入れをされていて、今でも人は住んでいるようだった。ぼくは大変な誤解をしていた、有名な?浜平鉱泉の「奥多野館」(看板は今でも残っている)という宿はてっきり山の中の一軒家だと思っていた、ところがここは古い集落(10軒くらいか?)があって、川の対岸にこの宿が一軒ぽつんとあったのだった。つまり、集落の中にあったということが、そうだったのか、と言うわけ。
 
 湯ノ沢は景観の良くない沢だった。鉱泉が湧きだしているのか、沢の水は不透明で沢床は青白くなっていた、水は飲めそうもない。丸太を渡ったり、何度も右岸左岸と沢を渡り返すのだが、道は荒れ気味だ。水流が無くなるまでかなりのアプローチだが、水流が伏流になり急な斜面をジグザグに登るようになっても傾斜はますますきつくなって結構な登りの連続だった。

 新緑は染みいるように美しい、やっとのことで湯ノ沢の詰めまでたどり着いた。この先まだもう少し頑張らないと湯ノ沢の頭に着かない。次男はたどり着いた尾根で寒風にさらされた途端、顔といわず全身蕁麻疹のような赤いぽつぽつが出来た。本人は痒くないと言っているが、どうも先週の風邪がまだ抜けきっていなくて体調万全とは言えないようだ。ここに来て初めて、目の前木の間越しではあるけれど諏訪山が姿を現した。ここから見ると左右に岩峰を配して中央の本峰はなだらかな樹林の円頂で全体としては、ごつごつした山容だ。意外に高く聳えて見えている。ああ、いかにも秘峰という雰囲気だ。

 湯ノ沢の頭を過ぎ、主稜線に出て楢原からの道を合わせる。楢原からは余り登山者がないようで、踏み跡もこちらのものより薄い感じだ。主稜線はゆるく絡んで進むもので、途中のコブはみな巻いている。
 弘法小屋とガイドブックに記載されている小屋は、鞍部状の林の中にあった。トタン張りで床もなく、中にはどういう訳かツルハシが二本立てかけてあった。雨露をしのげるほどのものではない。そこからは幾らか登りもきつくなってきて、あちこちにアカヤシオの花が見られるようになった。

 アカヤシオはここでもかなり咲いている。特に下ヤツウチグラ周辺の岩場が見事で、先日の三ツ岩岳や大津に劣るものではなかった。しかし、ピッチは上がらず、予定の時間を既にかなりオーバーしている。とてもお昼までには着きそうもない…んんん、出発は予定より早かったものの、なぜか時間がかかる。この山がやっぱり嵩があると言うことなのか。意外に遠いのです。

 早朝に出発した?と思われる人たちはもう帰ってくるようだ。ここまでに4人くらいの人たちに追い越された。ヤツウチグラ手前の岩場の下でおむすびを食べていると、中高年ご婦人グループがもう帰り道を急いでいた。

 展望のいい岩場に出るとそこいらじゅうアカヤシオがきれいだ。向かいにはなつかしい?帳付とそれに続く天丸山方面がすぐそこに見えている。ここから見ても帳付はピラミダルでいい形だ。二連バシゴが二つ設置してある岩場を過ぎ(昔は鎖だったのかな?古い鎖有り、鎖だったら結構高度感あるから怖いかも)薄暗い樹林を抜けて行く。アカヤシオが花盛りで、岩尾根を絡む登山路の右に左に古木の大株が生えていて、ピンクの花のトンネルを作っている。

 再び明るい道になると、目の前に下ヤツウチグラの岩峰が現れた。成程ただここから見上げると、とても簡単に登れそうには見えないな。しかし、斜上するバンドが旨い具合にあって、それ伝いにごく普通の登山道が岩峰の右肩まで登って、後はざらざらしたガレ場を少し登ると下ヤツウチグラの頂上に出た。 
 例の団体(バスで来た人々)は、この山頂を占拠していて物凄くにぎやかだった。ここは、「彼らの山」だと思っているらしかった。座る場所も無いから、そのままここは通過し、団体が去ったと思われる本峰頂上を目指す。
 一カ所岩場があったが、ロープが垂れていて問題なし。そこを過ぎると緩く登るようになる。でも結構なかなか着かなかったが、ようやく樹林の中の諏訪山山頂に着いた。

 諏訪山の山頂は本当にただの林の中だった。まだ別の団体がそこにいたが、間もなく下っていった。その他にも、山頂の一段下に10人くらいの団体がいた。長男が数えていたところによると、今日は100人近い人が登っているようだ、秘境の山というのも昔のことか?「どこが秘境の山なのさ…」と子供たちは大分シラケ気味。

 山頂には山名の表示板が3つもあった。全体として、諏訪山は古木も多く原生林の山という雰囲気は残っているが、山頂はガイドブックやホームページに書いてあるような「深山の雰囲気があるところ」という印象は薄く、何の変哲もない疎林の中という感じだ。
 下ヤツウチグラまでの尾根すじの道はブナの古木などがあって、西上州というより上越の山のような印象だった。ここは針葉樹が混じって低木層にアセビが多く、あえて言えば「神社の裏山」という雰囲気。
 山頂で30分ほど休んでから、下ヤツウチグラに戻る。下ヤツウチグラの頂上には三笠山山頂の山名板があり、もう誰もいなかった。

 3人だけの山頂でしばらく休んで、食事をしたり、次男は一番近くて大きい帳付山を描いていた。彼は「ちょうずこ」と発音した。その方がカッコいいのだそうだ?勝手に名前を変えるなよ。

 日の長い春だから、帰りを急ぐこともなく、のんびりとしていられる。でもあんまりのんびりしていたからか、帰りの道もそれなりに時間がかかって、結局登山口に戻り付いたのは6時に近かった。途中でガイドが案内している山の初心者の団体を湯ノ沢の下りで追い越したが、今日はほとんど抜かれるばかりだったので、初めて人を抜いた。なんだか、今日はペースが上がらない日だった。

 遅くなったけれど、また磯辺の「恵の湯」に寄って帰った。念願の諏訪山は思っていたイメージの山とは大分違っていた。ちっとも「秘峰」でも、ちっとも「秘境」でも無いのだった。

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