今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

女峰山

2006年02月02日 | 山登りの記録 2004
平成16年10月2日(土)

 次男と2人での登山。子供と登る日光の山は、次は日光白根と思っていたのだが、長男が行けなくなったので、女峰山に切り替えた。

 女峰山は最近男体山の裏の志津林道経由で楽に登れるようになって、登山者も増えているらしい。昔は最も伝統的な日光市街からまっすぐ登ってくる唐澤コースはきつくて一般的では無くなっていたけど、霧降高原から赤薙山を経て一里が曽根を回ってくる道がポピュラーで、このコースでも4時間半くらいはかかるから、日光の山の中では一般ルートが一番長い山だった。
 
 ということで、当然他の山々に比べれば人も少なかったのだ。今は、中高年登山ブームのせいもあるかもしれないが、アプローチの短い山に人が集中する。アプローチの長い山は、新ルートが開かれポピュラーな山になっていく…イイノカワルイノカ。皇海山、袈裟丸山、上州武尊、御神楽岳などみんな昔は遙かに遠い山だったはずだが、百名山になっている山は尚更で、そうでなくともこういった現象は広がっている。道のない山、あっても延々と長い登りの果てにやっとこ登り着く山など、どんどん消えていくばかりだ。
 というわけで、その「恩恵」に預かって女峰山を志津から登ることにした。

 朝、5時に起きて出発。日光に向かう道路は晴天の予報が出ている土曜日でその上ハイシーズンなので、そこそこ混むかなと思ったが、何時もと変わりなく順調に中禅寺湖を過ぎて戦場ヶ原まで来た。紅葉はこの秋、いつまでも夏の続いている毎日でやはり遅れ気味だ。
 いつもならこの辺りまで来れば10月初旬はそこそこ色づいているはずだが、まだ木々の葉は緑色のまま。戦場ヶ原は霜が降りたのかと思うほど草が白くなっていたが、どうも朝露のようだ。三本松の駐車場に車を停めてトイレタイム。ここからは太郎山や男体山がくっきりと晴れ渡った青空をバックに見えている。空気が乾いて透明度が増し、それはやっとやってきた秋の快晴だった。しかし、晴れも今日の日中だけで、明日からはまた雨の天気に戻るという。

 光徳入り口からさらに志津林道に入る。7月に登った太郎山登山口の分岐を過ぎて志津に到着。おととし男体山に登ったときは、確か志津の手前からかなりの悪路になっていたはずだが、そこまでは走りやすく舗装されていた。志津の付近に駐車場はなく路上駐車の車がそこここの、本来は待避スペースに停められている。ここにあるのは男体山に行く人たちのもので、女峰山まではさらに奥の遮断機まで入れられる。遮断機まで行かないうちに雨で道がかなり悪くなっているので、待避場所に駐車した。直ぐに後から2、3台車がやって来たが、一台はここに、他はさらに奥と、引き返していったものもあった。そうして仕度をすませ、今日は助手席で話をしながらここまで来たせいか、次男も快調と言うことだし、出発することにした7時36分。

 乾いて晴れ渡った空気は気持ちよい、この秋一番のお天気かもしれない。男体山がすっきりと山頂まで見渡せる。中腹当たりから上はいくらか紅葉が始まって色づいている。ここから女峰山の真の登山口である馬立まで約1時間歩く。歩いていると何人か他にも登る人たちが前後して女峰山に向かっていく。左手に大真名子山が全体に眺められる場所まで来ると、林道の行く手には女峰山が姿を現した。女峰山は山体が大きく、頂上部はいくつにも分かれているので、丸っこい他の日光の山々とは雰囲気が違う。

最近の話題としては、前から噂されていた、実は男体山より高のでは?ということに一応の決着を見たことだろうか。男体山は2,484㍍、女峰山は2,464㍍という標高が以前から知られていたが、男体山の三角点は一番高いところの直ぐ下(ここも最高地点ではない)にあり、一方の女峰山は山頂より一段低い下のピークに三角点があってこの標高値を山の高さとしていた。だから、実は一番高いところで計れば逆転するのではないかというもの。
 しかし、最近女峰山の真の山頂が計られて2,483㍍だったというから、逆転には至らなかったわけだ。男体山も本当はあと1㍍は高いと思うのだが…。まあ、そんなことはどうでもいいが馬立までは思ったほどもなく、40分弱で着いた。

 この辺りは日光の若い火山の崩壊が激しいことから、治山工事が至るところで施されている。それは現在も継続中で砂防ダムがあちこちに建設中だ。
 どれほどこれが治山治水に効果があるのか?判らない、山の上から見ればこれら人間が作ったものはちっぽけで、役に立っているようには見えないのだが、政治家と建設業者にはトテモ重要なのだろう。
 それから、相変わらずの鹿被害で、木々の若木が食害され笹原になってしまったところも多いが、日光白根辺りと同じくここではもっと大規模に苗木を植林し、防護ネットで保護されている光景を見た。それにしても広々としている笹原に、膨大な数の杭が打たれ苗木が植えられ防護ネットが巻かれている光景は異様だ。客観的に見れば、ここは林業試験場か何かの圃場にしか見えない。国立公園内にこの景観は、ここが観光拠点から離れて人目に付かない所だからすむが、どう考えても食害をする鹿の方を調整することが根本的に必要だろう。いくらこんな対策を施しても景観を悪くするばかりで、その実効性については疑問だ。
 現実に防護ネットによって成長が阻害されたせいか、枯れた苗木にがっちり巻き付けられた防護ネットと防腐加工された杭だけが虚しく立っているものも多かった。根付いていない苗木の根に溶け出した防腐剤の害は無いのだろうか?こういった施術はどうも、無意味な方法を用いて税金の無駄遣いが行なわれているように感じられるのは私だけなのか?この膨大な数の苗木と幾重にも作られて直ぐに土砂で埋まってしまう砂防ダムを思いっきり見せられてそう感じた。

 人目に付かないところでこんなにハデに行なわれているのも不信感を誘う。女峰山登山道の砂防ダム工事現場が見下ろせる場所に、わざわざ大きくりっぱな看板を建て砂防ダム建設の正当性を一方的な三段論法で説明している国土交通省の本当の意図は何処にあるのか?この解説に依れば砂防ダムを造ることで土砂流失や河川の氾濫を抑止する効果があり、これは今後も必要であると力説している。しかし、ここから見える砂防ダムが、周囲の大きさからすれば嗤ってしまうほど「ちんけ」なもので、数年経てば土砂が満ちてその役目を終えているように見えるのだが。いくらこの程度の子供だましを作っても、看板で力説しているような効果はあるのだろうか?人目に付かないところで行なわれているこういった税金の無駄というより、不正とも思えるような実効の疑わしい支出には不快な限り…。

 馬立から林道を離れ、下の沢に向かって下る。沢を渡りここからいよいよ女峰山に取り付くのだ。河原で少し休んだ。今日はストロベリーチョコレートを買ってきたが、ここで食べた。こいつは素晴らしくうまかった。

 砂防ダム工事現場と林道を結んで、遊園地の乗り物のようなトロッコが仮設されている。モノレール式でレールにはぎざぎざがあり、丁度ジェットコースターのような形式になっているのか?河原で休んでいたら、ギコギコガーガーと音を立てこれが通過していった。作業員が二人乗って、ブルドーザーの燃料をポリタンクに積んで運んでいるようだった。座って乗っている現場監督みたいな男が次男を見てにやにやしながら通過していった。次男は珍しいのですっかり感激して「乗ってみたいなあ」と言って、さかんに写真を撮っていた。子供は「こういうもの」に弱いのだな。

 休憩後シラビソの明るい森に入る、しばらくは緩い登りで時々笹原状になっている。背後に男体山や大真名子山が見えるようになってくる。砂防ダムの縁を登り、次第に急な登りになってくるが、ジグザグに登るようになって、あっけなく水場に到着。
 かなり急角度の沢で、水が音をたてて流れている。休んでいる人、到着して休む人など結構人が多い、もちろん若者はごく少数。冷たくておいしい水を補給、日光の山は水場がほとんどないからこの水場は貴重だ。

 水場からは、次男が古い登山地図で確認したところ40分で山頂とある。もう登ったも同然だと言った。ここから唐澤小屋まではよじ登ると言う感じの急な登りで、20分ほど。唐澤小屋は志津小屋と同じような感じの避難小屋で、隣に朽ちて間もなく崩れ落ちそうな古い小屋があった。唐澤小屋の中はこぎれいで整頓してあった。泊まり客は少ないようだ。このコースを取ればアプローチは短いし、泊まるほどではないのだろう。

 小屋の周囲は割と平坦な笹原が広がり、シラビソやダケカンバがまばらに生えている、気持ちのいい環境だ。ここからの夜景は素晴らしいらしい。小屋を少し進むと不動明王の古い石像があった。光背部分が割れて針金でくっつけてある、裏側を見てみたが相当古いものの様だ。ここからはシラビソの森を出て、いよいよ最後のガレ場の急登だ。

 空気は乾燥して遠くまでよく見えるが、やはり遮るもののない陽当たりはけっこう暑い、汗が出てくる。それにしても急な登りで、その上白っぽい岩ががらがら転がっている所を登るので、浮き石や落石に気を付けなくてはならない。ゆっくりゆっくりで、最後のシャクナゲやコメツガのわい樹の茂みを抜け、ハイマツがほんの頂上付近だけに生えているのだが、それを分けて頂上の祠の前に出た。その一段上が20年前に登った時と同じ?山頂名標柱のある女峰山の山頂だった。11時だから、ほぼ歩行時間は3時間と言うところだろうか、まあ順調に登ってきたという感じだ。

 女峰山は遙かな遠い山だったが、こうして今はそんなに大変な思いをしなくても頂上に立てるのだ。山頂の一番高いところがケルン状の岩の小山になっているが、その上に刺さっているように貧弱な山名標識がある。今回また久しぶりに女峰山に登るというので、実家にある昔のアルバムを見てみたのだが、そこに写っているものと、今ここにあるものが形や書体からしても同じものに見える。女峰山という文字は薄れて良く読めないのだが、その下に1977年と書いてある、この標識の状態を見ると、とてもこの程度の木製の標識がそんなに長い年月、過酷な天候に晒される場所にそのままあるとは思えないのだが?途中で全く同じ形のものと取り替えたのかな?どちらにしても、有名なこの山にしては、それはあまりに粗末な山名板だった。

 山頂名の標識、銘板、どう呼ぶのか?どっちでも良いけど、大したこと無い山にびっくりするくらいりっぱなものがあったり、その逆だったりで面白い。

 しばらく休んでいるうちに景色はやや霞んできた。もう山頂に着く前にずっと展望があったので、ここに来て会津や那須方面が見えるようになったが、そちらの方角は霞みがちで余りよく見えない。時間は11時を回って朝からの澄んだ青空が少し霞み始めていた。頂上にいる間も、次々に登山者が登ってくるが、土曜日と言うこともあってか、さほど広くない山頂が人で一杯になることは無かった。

 おむすびやお菓子、カップラーメンを食べたりして気持ちのいい山頂の眺めを満喫、次男は双眼鏡で久しぶりにあちこち眺めていた。今日は前回忘れたスケッチブックを持ってきたはずなのに、持ってきたことを忘れていたのか、あるいは熱が冷めてしまったのか描こうとしなかった。
 1時間ほど休んで、「パパがまだ登ったことのない女峰山続きの帝釈山まで行くか?」と聞いたら、行こうと言うので、出発した。帝釈山まで行くと帰りの林道歩きが倍になるけど…2時間も林道を歩かなくてはならないんだよ。と、一応確認したが、次男は「いいよ」と言う。随分足が強くなったものだな。

 女峰山から帝釈山までは途中に「馬の背の険」というのがある、何となく高山の雰囲気があって、ハイマツが生えていたり岩稜帯が続いていたりで、八ヶ岳やアルプスみたい、楽しい縦走気分のプロムナードだった。一カ所鎖場もあって次男も少し満足したようだ。

 帝釈山頂も女峰山頂と展望はあまり変わり映えしなかったが、ここまでの道のりから眺める女峰山は鋭角に尖った見事なピナクルだ。ここでも数人の登山者に会ったが、女峰山に比べれば大分静かな場所だった。女峰山より立派な山頂名標識がある。
 下の野門沢の原生林辺りから鹿の鳴き声が聞こえる。次男は何を思ったか、遭難した時のためにと、いつも持たせている呼子笛(ホイッスル)を出すと、それを吹いて、鹿と鳴き交わしをしていた。鹿も次男の笛の音を同類のテリトリー宣言と勘違いしたのか?結構真剣に応戦しているのだった。鹿と遊ぶなよ…もう。

15分ほど休んで、富士見峠まで急な下りを辿る。下る道は直線的な急坂のせいか、雨にえぐられて土が流失し木の根がむき出しの歩きにくい道だった。

 富士見峠という名前の帝釈山と小真名子山の鞍部に下り着く。さすがに秋の日は短く、もう夕方の雰囲気だが、まだ時間は2時だ。少し疲れてきたが、ここから長い林道を、とは言っても歩き始めて間もなく行くと河原の中を歩くような石のごろごろ道になった。
 ここの手前で、四駆じゃなくちゃこんな道は走れないよね、と次男と話していたばかりだけど、これはどんな車でもとても走れそうもない、ラフロードを通り越してほぼ登山道ランクの道だ。そのうち道幅も木が生い茂って狭くなっていたり、倒木や大きな岩が転がっていたりと、登山道でもラフな部類か?と思う様な道になった。こうやって林道は手入れをされないとやがて崩壊して自然に戻っていくのだが、植生や何かは容易には回復しないで、山の中に傷跡を残していくのだろう。二人ともかなり疲れて、励ましながらやっとこ馬立まで戻って来る。

 ここまでくればあと40分程だ。小休止して、お菓子を食べる。足が痛いがもう少しだ。また、気を取り直して重い腰を上げ、どうにか4時10分頃無事に駐車地点まで戻ってきた。疲れたけど最高のお天気で、次男も20㌔も歩けたと満足そうだった。

 この時間にまだ駐車スペースに停まっている車は多い。
 帰りはやや人混みも疎らになった中禅寺湖畔を、それでも5時近くなってもうろうろする観光客を尻目にイロハ坂を下り、初めての「日光やしおの湯」という日帰り温泉に寄ってから帰った。まあまあの風呂だったが余り特徴はなし、ロケーションのためか駐車場に停められないくらい混んでいた。
 次男も言っていたが、それでもいつも風呂にはいると不思議なくらい空いてるね、だって。車の割に風呂に人が少ないというのはいつも感じる…。まあ、この日はそんなに空いてはいなかったが、それは風呂が余り広くないせいだろうけどね。

 いつでも混まない国道122号を飛ばして家に7時前に帰れた。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (syooosuke)
2006-02-05 16:52:40
こんにちは。女峰は登っても良く、眺めてもカッコ良い山ですよね!僕も一昨年に登って、山頂でテントを張ってしまいました。女峰と男体山の標高差の問題があったなんて知りませんでした。勉強になりました。
返信する

コメントを投稿