愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

ミィちゃんとエサやりさん(第2話)

2010年05月02日 | ネコの寓話
(第1話から読んでください)
予想に反し、三毛猫は急速に回復していった。獣医師も「このコ、生命力が強いよ」と太鼓判を押した。同時に「できれば念のため2~3日は家に入れて世話をしてあげて下さい」と付け加えた。彼女はちょっと躊躇したが、すぐに了解した。
彼女はひとり暮らし。歩いて15分ほどの場所に娘夫婦が住んでいる。以前は息子も近くに住んでいたが、転勤で郊外に移り住んだ。郊外といっても彼女の住む場所から2時間ほど。孫を連れてたまに遊びに来てくれるのはありがたいが、猫アレルギーのため猫と対面させることができない。それどころか換気と掃除に手を抜くと、猫を泊めてから数日間、日が空いていても反応してしまう。彼女のちょっとした躊躇はそこにあった。
この公営住宅には、当初夫婦で移り住んだ。彼女の夫はとび職だった。いわゆる「一人親方」で50歳を過ぎても、その腕を見込まれ工事現場を飛び回るように働いていた。ある日、足場から落ちて大けがを負った。身体が思うように動かなくなり、働けなくなった。
昔気質の職人だけに「宵越しの金は持たない」などと気取っていたため、蓄えも少なかった。それまでは、腕の良さを見込まれて仕事が耐えなかったため、何とかやりくりができていたが、家計はまさに自転車操業だっただけに、働けなくなるとすぐに行き詰まった。結局、家賃も安く息子と娘の自宅にも近い公営住宅に移り住んだ。
夫は、犬や猫が好きな人だった。
「年をとったら、田舎に移り住んで犬と猫を飼うぞ」
そんなことを言っていただけに、どちらも飼うことのできない公営住宅に引っ越しが決まったときは、とても落胆していた。
「ケガさえしなければなぁ…」
事あるごとにそんなことを口にするようになった。若々しく、気風のいい人だったが、目に見えて弱っていき、引っ越してからちょうど1年後に亡くなった。乱暴なようでいて、彼女の誕生日を忘れたことのない夫を彼女は愛していた。それだけに、彼女の落胆は大きく息子と娘は「後追い自殺でもするんじゃないか」と心配したほどだった。
隣接する駐輪場に猫が捨てられるようになったのは、ちょうどそのころからだった。
「お父さんなら、きっと放ってはおかなかった」
 猫たちを見て、そう思った。そんな思いが彼女を動かしていた。
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