愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

タビとお婆さん②

2010年08月13日 | ネコの寓話
真夏の終戦から、だいぶ秋の気配が感じられるようになった10月初旬のことだった。自宅に猫が1匹迷い込んだ。よく見ると、猫は大きなお腹をしている。その猫の姿に、夫を失って子どもを抱えて生活を始めた自分の姿が重なった。
敗戦から2カ月ほど経ったばかりで、まだ食べ物の少ないとき。猫もだいぶお腹をすかせているようだった。千代は、自分の配給の食糧から猫に分け与えた。その甲斐あって、1週間もすると猫は元気な3匹の子猫を出産した。三毛と八割れとキジ。このうち、八割れとキジは成長すると家を出て行き、後を追うように母猫もどこかに去った。
三毛だけが残り、その後、この三毛がさらに三毛の子どもを産み、その三毛の子猫だけが家に残り…という具合に千代の家には常に三毛猫がいた。
その何代目かの三毛猫の子どもがタビだった。
生まれたばかりのタビは、他の猫よりも小さく弱かった。千代は、そのタビを注意深く見守ってくれた。
寒い夜には、よく千代がそっと布団の中に引き入れてやさしく抱きしめてくれた。
そんなときには、よく千代はタビに夫の話を聞かせた。
「働き者でやさしくて、とっても素敵な人だったんだよ」
終戦から何年経っても千代は夫を愛し続けていることがタビにも伝わった。
タビは千代のやさしさに守られ、すくすくと成長しいつの間にか体格も他のきょうだい猫たちと変わらなくなった。
「よかった。ほっとしたよ」
千代はやさしくそういって、そっとタビの頭をなでだ。
その数日後、タビときょうだいたちは家を出て行った。いつものように三毛猫を残して…。
しかし猫の去勢・不妊手術が一般化していく中で、千代の家の三毛猫の系譜もタビの出生から数年後に途絶えた。
そして、いくつかの季節を経た後、タビは千代のもとを訪れた。
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