Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

長野県観光はこんなもの

2007-12-08 15:05:47 | つぶやき
 信濃毎日新聞12/5朝刊に、上高地への観光客の入り口が松本側から高山側に移りつつあるという記事が掲載されていた。中部縦貫道計画の一環とし開けられた安房トンネルの開通後、上高地への玄関はしだいに長野県側から岐阜県側に移っているというもので、その数字を示している。まだ長野県側からの入り込みが多いようだが、グラフを見る限り、いつかは逆転しないとも限らない(それはないと思うが)。それに対して長野県側は、上高地が長野県の観光地にもかかわらず、まるで裏口から入られているような現実に危機感を感じているわけだ。確かに観光関係者にとっては、表側である自らの地は、素通りどころか通過もしてくれなくなるのではないかと危惧するのも解る。その解決策のひとつとして、田中康夫知事時代に建設促進が停止した中部縦貫自動車道の建設促進を前面に出そうとしている。

 かつて観光シーズンといえば、松本側から上高地への道は大渋滞を起していた。沿線の波田町は、この道路を中心に集落が展開しているところもあって、その渋滞は生活を圧迫していたわけである。波田町だけではない。その奥の奈川村や安曇村も同様の苦労をしてきた。まずは生活する人たちのためにも、観光客と生活者を分離する道路が求められたわけである。かつてのように冬季に通行止めとなる安房峠では、通過する人々にとっては不都合きわまりないわけで、長野県内にはそうした道路が今でもあちこちに存在する。もちろん上高地そのものも冬季には閉鎖されてしまうから、その季節は観光客を目当てにすることはできない。しかし、冬季にも高山―松本というラインが通じていれば、観光客がまったくいなくなるというわけではない。

 記事にもあるように、岐阜県側の方がトンネル開通によるメリットは大きかった。それは当たり前のことで、東京に近くなるという大きなメリットがある。長野県側からは、その延長上に大きな消費地かあるわけではない。高山が近くなったというだけでは、メリットが小さい。東京の住人が、高山への観光のついでに松本を観光の地に選択する、というケースはあり得るが、どうもそれを実感していないようだ。高山から白川、そして富山に抜けるラインができる。けして松本や安曇野、そして長野県内の観光地がそれらと比較して弱い、という印象でもないが、いずれにしても高山という奥まった地が利便性を向上すれば、今までとの環境差があって、初めて訪れる観光客は増加するはずだ。ようはリピーターをどうとらえるかということであって、当面魅力的な岐阜県側により焦点が当たるのは仕方ないことである。そして、そうした背景の中に、けして岐阜県側から遠くはない上高地が存在していたら、岐阜県側からの観光客が多くなるのも当たりまえのことである。今までは道路が行き届いていなかったから、行きも帰りも松本側からだった。観光とは同じ道を2度通ることはしたくないものだ。となれば、行きは松本側でも帰りは岐阜県側となるのは必然で、その逆だってある。単に上高地への入客が岐阜県側だといって嘆くこともないことで、それを嘆くと言うのなら、もともとトンネルなんか反対すればよかったのだ。

 観光関係者は、中部縦貫道への期待を口にする。「松本まで抜けるか、抜けないかで効果が全く違う。今のままでは長野県側に大きなハンディだ」というのは経済団体でつくる早期建設を進める会である。しかし、観光関係者からも心配されているように、その道が整備されることで、ますます素通りとなることも予想される。作られる観光地もあれば、自然の作り出した観光地もある。いずれ観光客が何を求めているのか、というところによるのだが、観光客の数だけを重視したような観光を推し進めていると、長野県観光のイメージは低落すること間違いない。いいや、すでに低落しいて、まとまりのないアンバランスなイメージは、100円ショップの店内のようだ(ただし、わたしはそれでよいと思っているが)。
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