Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ニホンジカに会う方法

2007-12-06 12:15:23 | 自然から学ぶ
 「伊那谷自然友の会報」134号では、ニホンジカについて特集している。時代の流れともいえるが、特集の視点は食害から始まっている。「人間を守ることを第一義に」の中でも触れたように、このごろ野生鳥獣被害が顕著で話題になっている。自然保護団体も含め、食害にどう対応するのか、さまざまな議論が必要だろう。会長の小林正明氏が触れているが、よく知られた話に南アルプスのお花畑の被害がある。小林氏は、1963年と2007年の三伏峠のお花畑の写真を並べて紹介されているが、写真と言う限られた小さなスペースを見ただけでも、その違いははっきりと解る。2007年の写真は、どうみてもお花畑などという称号は適さない。これほどの変化があるということを、瞬時に教えてくれる事例だ。標高の低い地域の生息密度が高まるとともに、ニホンジカは生息域の高度をあげていった。小林氏の指摘に面白い指摘がある。登山道沿いに生える潅木に食害を受けているものが多いと言う。「シカも藪の中は歩きにくく、登山道はシカの移動路になっている」というものだ。ニホンジカが川を渡るのは苦手だという話は知っていた。そして、積雪の中もだめだという。それが生息域をあげていったというのだから、いかに高山帯の積雪量が減少してきたか、ということもうかがえる。そして示されたように、藪の中は苦手、というまるで人間のような生態である。あの細々とした足では、なかなかほかの獣のようにはいかないということだ。

 生息域をあげていくという事実もあるが、もちろん下げてもいる。それだけ生息数が多くなったということもいえるのだろう。同号において宮下稔氏は、生息域の時代の変化を取り上げている。かつては天竜川左岸の南アルプス山麓に生息していたものが、しだいに西へ生息域を増やしていき、今やかつてはいなかったといわれる中央アルプス山麓でもその姿を見るようになった。実は宮下氏も触れているが、天竜川の西側にまったく生息していなかったというわけではない。むしろ古い時代のシカの遺物が西側でもあったり、また目撃情報というものも伝承として残る。だから西側にはいなかったというのは間違いで、目撃事例がなくなるほど、かつてニホンジカが少なくなった時期もあったということなのだろう。今や農産物被害の最たるものとも言われる。

 以前にも触れたが、わたしは5年ほど前に中央アルプス山麓でニホンジカに遭遇している。そしてその後も何度かニホンジカに遭遇しており、天竜川の東側地域ではあたりまえのように目撃する印象がある。東岸の山間部を縦断する広域農道は、通行量が極めて少ない。その沿線にはかなりのニホンジカが下りてきている。跳ねそうになる、なんていうこともあるだろう。カーブの多い道路だけに、いきなり遭遇などということもありそうだ。「シカってどんな動物」の中で菅原寛氏は、〝シカに会う方法〟なるものを紹介している。①森林帯をひたすら歩く、②夜に車で林道を走ってみる、という二つの方法をあげている。そこまでしなくても簡単に会えるような気がするが、こんなにニホンジカと簡単に遭遇するのはわたしだけなのだろうか。
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