Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

五人坊主

2006-05-25 12:32:07 | 自然から学ぶ


 上伊那郡飯島町から中川村、そして下伊那郡松川町あたりまで、中央アルプスの南駒ケ岳はよく望める。そしてそのあたりから眺めると、摺鉢窪カールがよく見える。写真中央の山が南駒ケ岳(2841m)であり、右手が赤梛岳、左が仙崖嶺である。南駒ケ岳と赤梛岳の間の窪んだ場所がカールなのである。このへこんだところの尾根伝いの残雪に点々と雪解けが見え始めている。まだわかりずらいが、点が五つある。この点が五つ並んだように見える雪形を「五人坊主」とか「五人坊」などという。5月も末に近づいて、ようやくこの雪形がかろうじて見え始めた。このカールの下端からナギが大きく見えている。この大崩れを百間ナギという。かなり大規模な崩落であり、このナギ下からオンボロ沢という沢になり、与田切川へ合流する。このナギの上に摺鉢窪の避難小屋があるのだが、しだいに崩れていく崩落で、いつかは小屋まで崩落が達するのではないかといわれている。こうした険しさかが人の足を遠ざけていて、この山へ登山する人は少ない。もちろん、わたしの生まれ故郷であるが、この毎日眺めている山に登ったことはない。

 『中川村誌・下巻』民俗編によると、「五人坊主が現れたら籾播きを始めると霜に合わないで良い苗ができる」といったという。また、「今年は南駒の雪の消え方が遅いので霜に気をつけろ」「山に雪が多いので梅雨に大水が出る」「南駒の雪が少ないから夏に水が足りない」などといったようである。

 さて、南駒ケ岳の山頂の下あたりに稗播き女の雪形も見えている。ちょうど山頂から少し右手に下がったあたりの雪解けした肌がそんな具合に見える。松村義也先生の『山裾筆記』によると、飯島町七久保の北村では、「稗播きじょろし(女郎衆)」と言うらしい。右側もう1人同じくらいの人影があり、さらに右手に人のようには見えないが、もう1人いて、3人合わせて女郎衆と言ったようだ。

 撮影 2006.5.21 AM
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