Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

本当に田舎は大丈夫か

2006-05-29 01:12:05 | 農村環境
 わたしが赴任先にいて不在だった時に大事にならなくて良かった、という事件である。先日、隣の家でボヤがあった。わたしの家とは隣組は異なるのだが、すぐ東側の直線距離で20メートルほど、いやもっと近いかもしれないところに隣の家がある。隣組のどの家よりもっとも近いところにあるのだが、隣組は違う。だからふだんのつき合いはほとんどない。わたしの住む地域は、果樹農家が多いということもあって、農家同士でのつき合いはけっこうあるのだろうが、よそから越してきたような、そして勤め人の家となると、なかなかつき合いはない。とくに果樹農家は忙しいということもあるのだろう、米作地帯に比較すると社会生活は希薄だ。隣組の行事も新年会があるくらいで、あとは全戸が一同に会す行事は冠婚葬祭くらいしかない。これほど希薄な地域は、同じ行政区域でも際立っているのかもしれない。そんなくらいだから、どんなに近い隣であっても、つきあいがそれほどないのもうなづける。

 さて、ボヤ騒ぎに気がついたのは、息子だった。息子の勉強部屋は、もっともその隣に近いところにある。勉強していたら隣が騒がしい。おじさんが「火事だ、火事だ」と騒いでいて、息子は火事だと気がついたという。少しではあるが火も見えたようだ。母のところに来て「隣が火事だ」と告げたわけだ。わたしの家の立地は、隣と近いが、家の向きからいくと、背後にその隣があるような関係のため、もし本当に火事になっていても、気がつかないかもしれない。たまたま息子が部屋にいたから気がついたが、ふだん利用している部屋からは死角なのだ。

 母は急いで隣に駆けつけたわけだが、おじさんが一生懸命消したようで、火は消えていたという。しかし、けっこう天井あたりまで燃えたようで、すごい匂いがしていたようだ。天井裏まで延焼していてはいけないといって、母は消防署に事情を説明したという。そしたら消防がサイレンを鳴らしてやってきて、火は消えてはいたが、火の粉が残っていないか調べてくれたようだ。母が駆けつけると同じくらいに、わたしの隣組で、わたしの家にもっとも近いところにある家の人も駆けつけてくれた。ところが、しばらくしてやはりわたしと同じ隣組で消防団に入っている若い人がやってきて、〝火が出ていたようだけど、どう〟という感じに話すのだという。「早くに認識していたなら、なぜもっと早い対応をしないんだ」と、母はちょっと不愉快だったようだ。それだけでは済まなかった。さらにしばらくしてから、その消防団員の父がやってきて、「火が出ていたけれど飲んでいたので、そのまま寝ていた」というのである。実はその家からは、わたしの家とは立地が異なり、正面にこのボヤを出した家が見えるのだ。ちょうど正面の眼下とまではいかないが、下方にその家が見える。きっと火が一番よく見えた家なのだ。ボヤで済んだからよいが、丸焼けだったらどうだったのだろう。いや、わたしの家に飛び火していたかもしれない。つきあいが希薄だから、近所の家が燃えてても気にもとめないのかそのあたりはよくわからない。

 母はしばらくボヤを出した家にいたが、結局その家の隣組の人は、消防車がサイレンを鳴らしてやってきたのに誰1人として様子を見にやってこなかったという。田舎のつきあいなんて「こんなもの」と教えてくれる事件であった。
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