Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

代掻き馬

2006-05-27 09:35:38 | 自然から学ぶ


 北アルプス白馬岳の右手(写真の中央)に代掻き馬が現れている。中条村と小川村境の現場を訪れた際に、途中で眺めた北アルプスの山々である。ちょうど田植え前のシロカキの時期であったことから、シロカキの馬とされ白馬岳の名になったといわれる。また、年によってはこの馬が頭を高く上げたノボリウマになったり、頭を下げたクダリウマになったりすることで作柄を占うこともあったという。『長野県史 民俗編第三巻(二)中信地方 仕事と行事』には、小谷村奉納での伝承が書かれていて、そこには「白馬岳の残雪が馬の形になったり、向かいの山の台ぐらの残雪が馬の顔の形になると畑仕事にかかる。台ぐらの残雪がだんだんマグワの形に変わると、シロカキをする。」とある。「宝剣岳の駒形」でも述べたが、駒ケ岳の名の原点にも駒形の雪形がある。同様の事例は、北アルプスの爺ケ岳や蝶ケ岳にも見られ、各地にある駒ケ岳も代表的な雪形から名づけられた山が多いようだ。

 ところで、写真の山々だが、左手の尖っている山が白馬鑓ケ岳、その右手のなだらかな頂点は杓子岳、そして代掻き馬の左手の頂点が白馬岳となる。少し雲が出て隠れている山が小蓮華山、そして右端の白馬乗鞍岳となる。長野県観光課が数年前に作成した「信州の雪形」というパンフレットに、小蓮華山から乗鞍にかけての雪形が紹介されていて、そのパンフレットを読み取ったものがもう1枚の写真である。白馬乗鞍岳の④が嫁岩、⑤が鶏である。小蓮華山の⑥が種まき爺さん婆さん、⑦が仔馬、⑧が種まき爺と紹介されている。集団で現れる雪形であるが、確認しにくい雪形である。撮った写真と比較してみよう。



 右端の⑤にしてもその左の④にしても、写真をみる限り雪解けが進んですでに確認できない。ところが、⑧はまだ白い雪の中だし、⑦に至ってはまったく姿がない。⑥の種まき爺さん婆さんは、ちょうど良いくらいのように思うのだが、はっきりは確認できない。パンフレットには写真も併列にあり、その写真にはこの五つの雪形が確かに見えている。ということはどういうことかというと、年によって雪解けに変化があって、必ずしもこの五つが同時に見えるとは限らないわけだ。北アルプスにはいくつもの雪形があるようだが、白馬岳の代掻き馬ほどよくわかる雪形は少ない。

 撮影 2006.5.25 AM
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