嶽南亭主人 ディベート心得帳

ディベートとブラスバンドを双璧に、とにかく道楽のことばっかり・・・

◆5/7道州制モデルDB 延長戦その1

2006-05-09 19:51:15 | ディベート
先の道州制モデルディベート、解説を仰せつかった身としても、学びも多く、非常に楽しかった。関係者の方々、それに各地からお集まり頂いたみなさんに厚く御礼申し上げたい。

ただ、解説で申し上げそこなった部分、言葉たらずになった部分が多くあったので、しばらく解説の延長戦を試みてみようと思う。


●個人的にやるなら、肯定側をとりたいとの意を強くした。戦略としては、「補完性原理」や「地域のことは地域で決めるべし」という地方自治の本旨を価値基準として掲げ、その根拠を『念入り』に説明しておいて、肯定側第1と第2反駁のコンビネーションを通じ、多少のデメリットは残っちゃっても、メリット・デメリットの価値の比較の議論で「ハナ差で逃げ切り、ゴールイン!」、てなイメージ。

●次に否定側について。「地方分権の大義名分が肯定側に持って行かれる以上、否定側のスタンスの立て方が難しく、各論撃破でいくしかないかも」との意見にそれなりの説得力を感じていたのだが、このモデル・ディベートを見て、認識が変わった。否定側でも、理念・スタンスのレベルでがっぷり四つに組むことは可能だ。

●その際の選択としては、2つ。

1)「地方分権は都道府県制を中心に行うのが良い」というもの。

→現状での地方分権の流れを擁護しつつ、地方分権の重要性には賛同するものの、なぜ「道州でなければいけないのか」というポイントをしつこく指摘し続ける。そして、肯定側の自滅を誘う。

2)「中央集権の方が良い」と開き直るもの。

→現状の地方分権の流れでもう十分であり、行き過ぎた地方分権=道州制はかえって良くないと宣言してしまう。当然デメリットは、今後は、国が政策の企画から執行までフルセットで責任を持つ方が「日本全体にとって幸せだ」という主張を裏付けるようなデメリットを用意し、押し通す。

●なお、否定側第2反駁は、1)で行くなら「道州制 vs 都道府県制」、2)なら「地方分権vs中央集権」で議論を整理し、比較対照すると、聞き手に分かりやすくなる。

●いずれにせよ「地方分権」という概念について、さらに言えば「国・地方関係、あるいはこの国のかたちはいかにあるべきか」について、字づらでなく、自らの問題として実感を込めて認識・理解できているかどうかが、ディベーターにとっての試金石となる。せっかくの全国大会である。各地区の代表校には、地域色あふれる議論や事例を、大いに期待したい。

●かくして道州制論題でも、首相公選論題や国民投票/住民投票論題でも登場してきたところの・・・

日本にとって、良い統治とはいったいどういうことなのか

「迷ったときに、『決定する自由』を取るのか、『決定の帰結の良し悪し』をとるのか」

という政治学的にも重要なテーマが、再び本質的な問いかけとして登場してくるのである。


↑この点、敬愛してやまない酔睡亭さんが、

「上手く言えないが、ディベートに参加する一人一人が坂本龍馬になった気持ちになれるのではないかと思う」

と、いみじくも言っておられる。正鵠を射るとは、このことである。

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2 コメント

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TBありがとうございます (酔睡亭)
2006-05-10 15:28:48
わざわざTBありがとうございます。

なんともうしましょうか、非常にいい時間を過ごさせていただいた私としては、恐縮です。



私たちの世代は、ビートルズには5年遅く、校内暴力には5年早く、なんとも中途半端で新人類なんて勝手に名前を付けられた世代です。



龍馬は日本人という呼称を使い始めた一人だと思いますが、龍馬と同じように「内なる他者」に日本人を抱えながら日本という国を考えることが高校生の段階できる彼らをうらやましいと思うと同時に、

(今の若者はいいよなあ)

と私たちが思える社会というのは、社会の進歩の証でありそれは大人の責任なのだと思っている私でございます。



京都は山桜も終わり、ツツジの季節になりました。



では。
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御礼 (嶽南亭)
2006-05-24 01:21:58
コメント、ありがとうございます。



同感です。社会を今よりマシなものにして、次世代、特に現時点での社会的選択に参画しようと思ってもできない世代に継承していく責任から我々はすべて逃れられないのであり、なればこそ、議論を通じて行われる「理解と納得の公共選択」のための演習としてディベートを学ぶ意義があるのだ、との思いを確認しました。



東京の社会人ディベーターの皆さんと、ぜひ京都に行きたいと考えています。



葵祭は無論のこと、祇園祭にも間に合いそうもありませんので、時代祭の頃になんとか開催という感じになりそうです。

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