嶽南亭主人 ディベート心得帳

ディベートとブラスバンドを双璧に、とにかく道楽のことばっかり・・・

「は」と「を」

2006-03-31 03:17:21 | ディベート
判決は、冒頭の主文を聞けば結論がわかる。

ところが、玄人によれば、刑事裁判では、

主文冒頭の「被告人」

に続く助詞で、もう結果がわかるとのこと。曰く

被告人「は」・・・・なら「無罪」
被告人「を」・・・・なら「●●に処す」が続くので有罪。

*****

「を」でした。負けました。

執行猶予がついたものの有罪。焦点が「共謀の有無」という一点にかかってしまったとき、きっちりと書かれた自白調書と、念入りな検察側証人テストとで構成されたストーリーに、公判廷での証言と尋問で対抗するのは生半なことではありませんでした。判決文で、客観証拠をつきつけられて変遷した検察側証人の信憑性が問われなかったのは、いまだに理解できません。

もちろん、即日控訴。この後、どれだけ続くのでしょうか。

でも、この裁判だけは、最後の最後まで見届けたいと思います。

◆道州制エクササイズ(サンプル事例)

2006-03-27 18:43:13 | ディベート
イクトスさんやeiriさんなどから、見てますよーとのメッセージを頂くと、主人もはりあいがある。調子に乗って、前回のポストの解説を、以下、試みる。

さて、すでにいろいろな方がご指摘の通り、「道州制」にはいろんなバージョンがある。

煎じ詰めれば、道州にどんな【権限】(立法・司法権、執行権、課税権)を、どこまで付与するか、によってバージョン間の相違が出てくるということ。

司法権の付与、税制の設計については、追々お話するとして、今日は「何についての立法・執行権」が道州に移るのかを具体的にイメージするために、前回提示したエクササイズのサンプルをお示ししよう。

************

ここでは、

「社団法人中部経済連合会 道州制移行への提言 
─自立型行財政体制の確立に向けて─」
http://www.chukeiren.or.jp/katudou/teigen/14/7.html

を素材にとり、彼らの考える道州制では、国と道州の役割分担がどのように想定されているかについて、エクササイズのフレームの中で理解してみることにする。

【道州制エクササイズ・サンプル事例】ー国と地方の役割分担:中経連の考える「道州制」でやってみると?

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■プラン前・現状■プラン後・道州制
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■<国>___■<国>                
■○_____■①国家的基盤の維持          
■○_____■ (外交、防衛、司法、通商、通貨等) 
■○_____■②全国的統一基準の制定        
■○_____■ (社会保障基盤、公正取引の確保、  
■○_____■  教育基本、環境基準、労働基準等、  
■○_____■  基本的な法規の制定)        
■○_____■③州間の調整、全国的規模の政策    
■○_____■ (基幹的交通体系等)の推進     
■○_____■ (大規模災害対策等)        
■○_____■④関税                
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■<都道府県>■<州>                
■○_____■①公共事業及び維持管理        
■○_____■(幹線道路、空港、港湾、河川等)   
■○_____■②広域災害対策            
■○_____■③地域労働・雇用対策         
■○_____■④環境保全              
■○_____■⑤治安(警察)            
■○_____■⑥徴税権               
■○_____■⑦教育(大学)            
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■<市>___■<市>
■○_____■①地域社会福祉(児童福祉、老人福祉等)
■○_____■②医療・公衆衛生(生活廃棄物処理を含む)
■○_____■③生活基盤関連(下水道、都市計画等の公共事業)
■○_____■④教育・文化(小・中学校、高等学校、幼稚園、図書館)
■○_____■⑤消防(救急を含む)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

てな、感じになる。

【ここでご注意!!!】

1)この道州制プランは、中経連のバージョンに過ぎない。皆さんは、論題をじっくり解釈して、自らのプランを固めて頂きたい。そしてそのとき、皆さんの「道州政府」はいかなる仕事を担当するようになるのか、冷静に確認して欲しい。

2)表の左側、「現状の国・地方の仕事の分担」は、相変わらず空けてある(ここをうめてしまうと、皆さんの学習にならないので!)。引き続き、じっくりご検討頂きたい。

では、ディベーター諸君の幸運を、切に祈る。

(あー、関東甲信越の春季大会にいけなかったぁ。悲しい・・・)


◆道州制をリアルに認識するためのエクササイズ

2006-03-17 02:17:20 | ディベート
前回申し上げていたエクササイズをお示しする。ご参考となれば幸いである。
実際にトライして頂いた上で、ご感想・ご意見をいただければ、なお幸いである。

***道州制をより良く理解するためのエクササイズ©嶽南亭主人2006***

【作業ステップ0】

まず前回リストアップした「政府の事務」のうち、言葉の意味がさっぱりわからない、あるいは、意味はなんとなくわかるが具体的にどんなものか思いつかないものをチェックしてください。

 →自分で調べるなり、先生に聞いてみるなりして、意味を把握してください。

【作業ステップ1】

次に、それらの事務を、以下の3種類に分類してみてください。

A: 国が現にやっている仕事
B: 都道府県が現にやっている仕事
C: 市町村(基礎自治体と呼びます)が現にやっている仕事

※この作業の中で、皆さんは「法定受託事務」「自治事務」という用語の意味を知ることになるでしょう(例えば「パスポートの発給」のように)

→この作業を終われば、とりあえず「国の仕事」が頭に入ったことになります。

【作業ステップ2】 

さらに、これらの事務を、もし道州制が実施されたならばと仮定して、以下の3種類に分類してみてください。ここでの「道州制」は、皆さんの「仮のプラン」ということで結構です。

D: 国の仕事として残るもの
E: 道州の仕事になるもの
F: 市町村(+都道府県)の仕事になるもの

→この次のステップが、このエクササイズのハイライトです。

【作業ステップ3】 

上記のA・B・CとD・E・Fを表にならべて比較してください。

縦軸は、国、都道府県/道州、市町村の3階層、
横軸は、作業ステップ1と作業ステップ2

ということにしておいてください。

このとき・・・

表の左右の【相違】がプラン前後の姿の【差異】として示される、

すなわち

プランの「前の世界」と「後の世界」が対比された

ということになります。

これでリンクマップの基点が見えました。

あとは、メリット・デメリットを自由な発想に基づいて検討してみてください。

幸運をお祈りしています。


◆(高校論題)道州制をより良く理解するために

2006-03-15 23:55:54 | ディベート
前回、高校生のディベーター諸君に、具体的に国の仕事を理解してみようと言った手前、その作業手順を示さねば不親切であろうと思うに至った。

ちょうどよい参考資料が手に入ったので、それを底本にして、

国、都道府県、市町村の仕事

をリスト化してみた。

うわ。あるわ、あるわ。

政府というのは、こんなことまで仕事をしていたのかと、私も認識を新たにした。

***

では、行きます。

【政府のお仕事一覧】
□皇室関連事務
□全国一律の制度や最低基準についての法律等の制定
□準司法(情報公開審査、個人情報審査、国税不服審判、労働審査、海難審査)
□裁判
□刑事訴追
□法曹人材養成
□広域警察
□地方警察間の連絡調整
□地域警察・防犯
□人権擁護・啓発
□矯正・保護
□犯罪被害者支援
□公務員制度管理
□情報公開・個人情報保護
□選挙運営(国政、地方、最高裁判事国民審査)
□訴訟業務(賠償請求を含む)
□行政監視
□外交交渉、情報収集、国際広報
□出入国管理(パスポート発給)
□出入国管理(出入国記録の作成、入国審査)
□国境警備
□安全保障・防衛
□大型災害対策
□緊急事態対応
□国際協力
□地球環境対策
□遠洋漁業
□通商貿易
□資源エネルギー安全保障
□食糧安全保障
□産業振興
□独占禁止・公正取引
□工業規格・農業規格
□知的所有権
□子育て・少子化対策
□生活保護
□年金(最低年金)
□年金(所得比例年金)
□年金(障害年金)
□教育(基礎教育)
□教育(高等教育)
□教育(専門教育)
□文化財・自然遺産保護
□教育・文化・学術振興
□宇宙開発
□高齢者介護、介護保険
□障害者福祉
□医薬品・食料品安全
□医療、医療保険
□先端医療・難病対策
□生活廃棄物処理
□産業廃棄物処理
□原子力安全
□職業訓練
□労働基準・労働基本権保護
□雇用・失業対策
□失業保険、労災保険
□職業訓練、高等専門教育
□電波・通信・放送
□郵便
□地域振興(村おこし、町おこし、市街地活性化)
□上下水道
□消防・救急
□外国為替管理
□関税
□通貨
□財務・予算管理
□地方政府間の財政調整
□所得把握・課税
□徴税、保険料徴収
□マクロ経済運営
□企業会計制度
□金融取引監視
□証券市場監視
□消費者保護
□登記・戸籍
□度量衡・計時
□統計
□標準語基準
□国際空港・港湾管理
□航空管制・航空保安
□道路規制(運転免許を含む)
□運輸安全(航空、鉄道、海上交通)
□気象
□道路・河川・港湾・空港の建設・対策と維持管理
□土地利用・都市計画
□建築確認

ふう。一応これで、ヌケモレなく「政府の事務」はすべて棚卸できたと思う(調べていて、他にあったら、適宜追加しておいて頂ければ幸甚)。

如何?

ここで途方にくれていても仕方ないので、道州制論題のディベートの準備・学習を効率的に進めるためのエクササイズをお示ししよう。

(つづく)

主人、論題記念チャットに出没す【高校論題編】

2006-03-14 02:32:17 | ディベート
年度末なので予見されていたことではあるが、今月に入り、仕事が二進も三進もいかなくなっている。

忸怩たる思いはあれど、ブログの更新もままならぬ。

書きたいことは、増えつつある。

●JDAの私のジャッジング、特に3試合めの判定についての弁明、とか。
●今年のディベート甲子園論題の展望、とか。
●まとめ編をかけないでいる、発生過程の分析視点、とか。

そんな中、過日、ラバーズ主催の論題記念チャットに出没してきた。

その折に申し述べたことを、ご参考までに整理して記しておこうと思う。

まずは、高校論題【道州制】編ということで。

****

【ディベート甲子園に臨む高校生のみなさんへ】

論題発表を受け、「道州制」って何?ということを、地道にリサーチしておられることと思う。

ここで、頭の体操にお付き合いいただきたい。

→とりあえず、肯定側プランを立てたとする。その時、あなたのプランでは、以下の点がどうなるか、ちょっとお考え頂きたい。そのプランの下で・・・

1.アメリカとの農産物の貿易交渉は、誰がどうやってやるのだろうか。
2.環境対策としての炭素税は、どうやって導入できるのだろうか。あるいはできないのだろうか。
3.年金制度は、どうなるのだろうか。
4.学校の週休二日制度は、どうなるのだろうか。
5.高速道路の建設は、どうなるのだろうか。また、高速道路の無料化は可能になるのだろうか。
 
等々

お断りしておくが、これらの質問の一つ一つに、必ずしもお答えいただく必要はない。むしろ、この際、申し上げたいのは、

皆さんがプランによって、道州に移管しようとしている「国の仕事」とは、

とてもリアルな取り組みの集合体なのです

ということなのだ。

この論題、「国の仕事」についての理解が浅いと、議論が上滑りになる。それが災いして、ジャッジの脳裏に鮮烈な印象を残せず、試合の勝敗に直結した例を、いくつも見てきた。

【結論】 ぜひ「現状の国の仕事」を徹底的に洗い出して、できるだけ具体的なイメージをもって理解して頂きたい。

さすれば、議論に迫力と説得力がついてくること、請け合いである。

The 6th Titech Cup

2006-03-03 03:08:57 | ディベート
に、Kさんに誘われて、出場することと相成った。

大会の詳細は、こちら

社会人も出場できる英語パーラメンタリー・ディベートの大会は、これとESUJの大会以外に知らない(これら以外をご存知の方、是非ご教示頂きたく)。

この大会のユニークなのは、現役とOB/OGの交流戦であるという点。全24チームが、4つのブロックに分かれて総当り戦を行い(1日5試合というのはかなりしんどいが・・・)、上位8チームで決勝トーナメントを行う。

ちなみに、これまで私が参加したパーラの大会は、すべて準決勝で敗退。見事なまでのブロンズ・コレクターとなっている。

今回、わがチーム"Advocates for Equality"がアサインされたのはブロックC。過去の大会の優勝者だの、Best Debater だのが顔をそろえるブロックで、どうも今回、予選を勝ち抜けるかどうか、心もとない。甚だ、心もとない。

さはさりながら、パーラの大会に出るたびに、

 1. Speech to inform
 2. Speech to entertain
 3. Speech to persuade

【同時に】実践する、すなわち:

「記録より、記憶に残るディベート」

を心がけるということをモットーに掲げる身にとって、相手に不足はない。

できるだけ「派手に」やりたいと思う。


【今日のBGM】河辺公一「高度な技術への指標」

2006-03-02 03:11:13 | ブラスバンド
演奏は今津中。ソニーの吹奏楽課題曲集のvol.2。

この曲のシエナの演奏もCDで聞いたが、ノリ過ぎの嫌いがややあり、技術的な未熟さが散見されても、今津中の演奏の方に好感が持てる。聴いて頂ければ瞭然とするが、これは中学のバンドのレベルではない。伝説の名演の中でも屈指の演奏だと思う。

時は1970年代半ば。「昭和歌謡」が隆盛を極めていた頃。

数年間だけ、まるで彗星のように「ポップス課題曲」が光を放ったときがあった。

この曲も、課題曲然、クリニック曲然とした題名とは裏腹に、その中身は華やかにして軽快なポップスそのもの。私のランキングでは、数ある課題曲の中でベスト1か2を争う名曲である。

高校2年のとき、幸運なことに、この曲を地区の吹奏楽フェスティバルで取り上げ、私の棒振りで演奏する機会に恵まれた。曲の題名どおりの相当の難曲にもかかわらず、仲間達はよく練習し、ノリよく吹きおおせてくれた。いまだに感謝の念に堪えない。

この正月、ブラバン仲間の家に集まって酒盛りをしていたとき、物持ちと整理のよい、あかいけ君の嫁さんが、そのときのプログラムを引っ張り出してきて、見せてくれた。あまりの懐かしさに落涙しそうになった。

あの時、悪戯で、オープニングの後、スウィングに入る前に、

<指揮者をはじめバンド全員によるフィンガースナップ>

を入れてみた。ほんとに愉快だった。さらにあの時、もしもサンバホイッスルが部の備品にあったなら、サンバの部分がさらに愉快になっていたはずだ。

なぜかは知らぬが、課題曲の中でポップス曲が取り上げられたのは、この70年代中葉の数年間だけ。

コンクールでは、ポップス曲は絶滅したと思っていた。

ところが、昨年のコンクール全国大会、NTT西日本中国吹奏楽クラブが、信じられないことに、

トリビュート・トゥ・カウント・ベイシー・オーケストラ(C.ベイシー他、真島俊夫・編曲)

などという曲を自由曲で取り上げ、堂々と金賞を勝ち取ってくれた。

実に痛快である。

「意見と事実」について考える(3)他人の人生を左右するあなたの意見

2006-03-01 02:22:47 | ディベート
前回、ディベートはあくまで議論を生産的かつ効果的に行う形式のひとつであって、それが議論のプロセスとして位置づけられ、その後にそれとは独立して決定を行う限り、ディベートにおける立場の固定と自己の選好の修正作業とは全く矛盾しないと論じた。

ここで、大きな但し書きがつく。ディベートそのものを「社会的決定の方法」として採用、制度化している重要な例外がある。

裁判制度である。

「ディベート」とは、1)論題、2)それを肯定・否定する役割分担、3)どちらの主張がより説得的であったかを判断する第三者という3つの構成要件から成立する議論の一形式であるという定義を採用する限り、裁判は立派な「ディベート」である。アメリカの学生ディベーターの多くが法曹界を志すというのも、故なきことではない。

裁判では、原告(およびその利益の代弁者)と、被告(およびその利益の代弁者)とが、主に事実認定に関する【議論】(=主張と論拠・証拠の集合体)を正面から戦わせる。冒頭で罪状認否が行われ、スタンスが形成されると、両サイドとも途中でスタンスは変えない。そして裁判官の判定によって、どちらかが必ず「勝つ」。付言しておくが、刑事裁判には「和解はない」のである。

数年後、一般市民が刑事裁判に参画する裁判員制度が始まると聞き及ぶ。「その時、自分ならどうする」(相田みつを)と大書した啓蒙ポスターが、地下鉄の駅のそこかしこに貼り出されている。

いよいよ、「相対立する主張を聞き、どちらがより説得的であったかを導出する」という「議論を評価する能力」が、我々のような一般市民に、のっぴきならないシチュエーションで要求されるようになる訳だ。

私は刑事事件の被告になるつもりはさらさらないが、【議論を論理的に評価する力量】をお持ちでない方には、正直、私は裁かれたくない。判決が、論理的に納得できるものでなければ、死んでも死にきれないではないか!

実は、いま、とある刑事事件の公判をモニターしている。殺人事件などとは異なり、物証はほとんど出てこない。唯一の物証は、アリバイを証明するためのパスポートの写しのみ。その他の証拠はすべて供述調書、および証人の証言だけである。否認事件であるので、検察側と弁護側の主張は、真っ向から対立している。この判決が被告人の人生を決定的に左右するのはまちがいなく、「一票の重み」はとてつもなく大きい。

その一票を職業裁判官ならぬ我々が持つ日、すなわち我々の意見が他人の人生を直接的に左右する機会が、現実にくるのである。

百歩譲ろう。

その技量の学習方法は、問わない。なんらかの理由でディベートをお好みにならないのなら、その他の方法でもかまわない。自由に選択して頂いて結構。

しかし、裁判員制度が導入される以上、ディベートの実践や見学を繰り返し体験することで身につくところの・・・

「論理的に考え、意見を形成・検証するスキル」

の習得が、一般市民にあまねく要求されるようになったという事実には、いよいよ議論の余地がなくなってきたのである。