嶽南亭主人 ディベート心得帳

ディベートとブラスバンドを双璧に、とにかく道楽のことばっかり・・・

オールジャパンプログラム by よこすかWE

2008-05-22 03:44:04 | ブラスバンド
主人の想いが、天に、いや、選曲委員会に通じたのか・・・

ISさんより、次回コンサート・プログラムの速報をご教示頂いた。

これが、

「オールジャパン」

のプログラムだそうで、感激ひとしおである。

第1部では、

 吹奏楽のためのラプソディー
 コーラル・ブルー
 ぐるりよざ

を、取り上げられるとのこと。実にすばらしい。今から楽しみである。

ちなみに、主人による妄想選曲委員会のプログラムはあと2バージョン残っているが、それは追々、アップするとして(コーラル・ブルーも検討していたのですが、3ジャポの方を採りましたので、その代わりに、沖縄民謡テイストの曲は別の作品にしたのです)。

ストレス~究極のストレス・クラシック

2008-05-20 20:01:23 | ブラスバンド
帯の煽り文句。曰く:

なんや?これ!こんなん最後まで聴けへんわ!!

ただでえストレスたまっとんのに、このCDは強烈や!
最初からずっとストレスたっぷりの激曲ばっかりやで。
クラシック聴いてゆったりしようなんて思てたらどんでもあらへん!
そやかて、聞くところによると、クラシックの歴史に残る名曲ばっかりやそうで、
こりゃまたびっくり。
そないゆうたら、もう一回聴きたなる妙な興奮も感じるしなぁ~。
実はけっこうええかも!ハマルわ!これ。

・・・・だそうだが。

曲目はというと:

プロローグーーいきなり強烈な曲からスタート!1曲目でリタイアか!?
1 ブラック・エンジェルズ:出発より(クラム)
 ★ベトナム戦争に触発されて書かれた現代音楽を代表するヒット作!

2 弦楽四重奏曲第8番:第2楽章(ショスタコービッチ)
 ★圧政ソ連のプレッシャーの中、自死も覚悟して書いたストレス度満点の傑作!

3 交響曲第10番:第2楽章(ショスタコービッチ)
 ★猛スピードで滑走するオーケストラ!スターリンの圧政への強烈な反抗か!

4 シバの女王ベルキス:戦いの踊り(レスピーギ)
 ★吹奏楽コンクール自由曲として大人気の超ハデハデ&ドキドキの1発!

5 ムジカ・リチェルカータ:第1曲(リゲティ)
 ★キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」で不気味に響くあの曲!

6 道化師:ギャロップ(カバレフスキー)
 ★懐かしの運動会でのリレー定番曲!聴くとなぜだか心が焦る!

7 ローマの祭り:チルチェンセス(レスピーギ)
 ★暴君ネロ皇帝が猛獣と人間を戦わせた残酷ショーを再現!

8 黄金時代:ポルカ(ショスタコービッチ)
 ★皮肉と洒落っ気たっぷり!楽しいけどなんだか超不安定!

9 交響曲第3番:第1楽章(ルーセル)
 ★海軍士官でもあったルーセル。緻密に計算して、ぐいぐい迫る!

10 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽:第2楽章(バルトーク)
 ★映画「マルコヴィッチの穴」で人形が踊り狂う不気味なあの音楽!

11 スキタイ組曲:チュジボーグと悪魔あたちの踊り(プロコフィエフ)
 ★邪神と魔物たちの不気味な踊りの音楽。気持ちわるー!

12 火の鳥:カスチェイの家来の凶悪な踊り(ストラヴィンスキー)
 ★強烈な音の洪水で描く魔王の豪胆な踊り!20世紀バレエ音楽の傑作!

13-15 春の祭典:第1部より(ストラヴィンスキー)
 ★超傑作。ロック好きも唸らせる強烈なビートと爆音が超刺激的!

16 プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード:ソナタV(ケージ)
 ★吐いちゃいそうなくらい不安定!?でもハマル傑作!

エピローグーーここまで聴きとおせたら、あなたのストレス度はゼロかも!?
17 熊蜂の飛行(R=コルサコフ)
 ★最後は熊蜂たちの乱舞を描いた傑作を


・・・いったい、このどこが「ストレスフル」なんだ???

いわゆる現代音楽っぽくて、聴く人によっては耳に障るのは、プロローグだけであろう。あとは皆、主人が好んで聴く曲ばかりだ。

「タコ」マニアの方々も激怒しておられるであろうし、百歩譲っても、ルーセルがここにあるのは、ほんまにようわからん。

とは言え、これだけ揃えてくれたなら、逆に手間が省ける。

もちろん購入。MDに落として、毎日のように聴いておる。

特にベルキス。ブラスによるものにはよく親しんでおるが、オケ版もよい。

派遣労働 研究ノート

2008-05-19 20:08:40 | ディベート
「間接雇用の弊害」について

Quote)

●「同一労働差別賃金」が広まる元となり、賃金は直接雇用と比べ低く抑えられる。(・・・わが国では、その原則を担保する制度が未整備なので)

●「生涯継続雇用」が困難になる元となり、生計の維持が不安定になる。(・・・派遣の特質は、本来的にその「柔軟性」にあるがゆえに)

●労働者の権利保護の制度が、なし崩しにされる。
①企業別労働組合の形式を採る日本では、労働組合法による労働基本権が実質的に奪われる。
②実質支配する者が雇用者でないので、雇用者の雇用責任・義務を定めることによって労働者の保護を意図した労働基準法等が、実質的に機能しない。

●社会保険制度が十分に適用されず、病気、ケガ、失業などまさかのときの保障も老後の保障もない。

Unquote)「派遣・請負・業務委託と崩壊した労働社会」(平成19年9月30日)

ちなみに、現在日本に合法的に存在している雇用形態のうち、唯一、間接雇用に当たるものが「派遣労働」なのである。

****

俗に、生産の要素として、ヒト・モノ・カネがあるといわれる。資源の最適配分を考える経済学の発想では、三者間は無差別ということになるのかもしれぬ。

しかし、ヒトはあくまで人格と尊厳を有する「ヒト」であって、非情の「モノ」ではない

「労働者の権利」のありがたみを切実に感じるようになるのは、労働者になってからなのかもしれない(!)が、その点にあらかじめ思いをめぐらす機会として、今回の論題の意味が一つあるように思われる。

マイ・ヒーローに、こんなところで出会うとは!

2008-05-17 01:16:38 | ディベート
仕事で特許庁に出向いた。

入るときは霞ヶ関ビル側の裏口から入ったので、まったく気づかなかったのだ。
外堀通りに面した玄関からまさに出ようとするとき、胸像が目に留まった。

どれどれ見てやろう。いったい誰かいな。

あっ、と声が出た。

高橋是清翁の胸像であった。

なんたる迂闊。高橋翁の像なら、あってしかるべきじゃないか、ここには。

日露戦争の戦費調達で欧州を東奔西走する日銀時代や、大蔵大臣として、軍部を敵にまわし、文字通り命を懸けて(それが故に、226事件で落命する。残念無念)、国の予算の膨張を阻止したのは、だいぶ後のこと。ペルーでの銀山開発に失敗、破産(!)して日本に帰ってくる、さらに前。

初代の商標登録所長(1884年)にして、初代の専売特許所長(1885年)。

前島密が近代日本の郵便制度の父ならば、高橋翁は、

日本の特許制度の父

なのであった。

立ち止まって、一礼の後、外堀通りに出た。ああ、良い気分だ。

派遣労働について考える その2

2008-05-17 00:35:06 | ディベート
JBDFの試合を見た。肯定側は、問題解決性の論証には苦労するであろうが、そこさえクリアできれば、それなりに試合になるとの印象をもった(因みに、12-8で、今日は肯定側が勝利を収めた)。

で、肯定側へのエール代わりに、参考データをもうひとつ。

*****

2007年08月23日 (木)
NHKのHP 視点・論点 「派遣業 急成長の影」
龍谷大学教授 脇田 滋

引用開始)

労働者派遣や請負などで働く人が増えています。近年、派遣業が急成長してきましたが、派遣で働く労働者の雇用や労働条件の劣悪さが大きな問題として注目されています。

最近の問題の中心は、日雇派遣と偽装請負の二つです。

まず、日雇派遣ですが、東京都労働局は、8月3日、日雇派遣の最大手企業であるフルキャストに対し、違法派遣を繰り返していたとして、300以上の事業所に1カ月、3支店には2カ月の「事業停止命令」を出しました。派遣業者に対する「事業停止命令」は2004年4月以降、3社目で、フルキャストの処分期間が一番長いものです。

フルキャストでは、派遣が禁止されている建設、港湾、警備などの業務に労働者を派遣するなどの違法行為が問題になりました。また、日雇派遣大手のグッドウィルなどでも法的根拠がない賃金天引きがあったと問題になっています。

もう一つの問題は「偽装請負」です。

偽装請負とは、請負の形式をとりながら、実際には派遣と同様に、発注企業は指揮命令して労働者を働かせることを意味します。本来の請負なら、発注企業が労働者に直接の業務指示ができません。労働基準法、労働安全衛生法、派遣法などが定める派遣先責任を逃れることが偽装請負利用の目的だと考えられます。

昨年、大手企業が、製造現場などでこうした偽装請負を利用して、労働者を低劣な労働条件で、違法に働かせていることが明らかになりました。

請負労働者の多くが、フリーターと呼ばれる若い男性です。同じように働きながら正社員とは違って雇用が不安定で労働条件も劣悪です。企業が大きな利益をあげる反面、その足下で、多くの若者がまじめに働きながら報われることが少ない状況に追いやられています。格差社会やワーキング・プア生み出す背景に偽装請負があると思います。

こうした偽装請負は、派遣法に違反する違法派遣であるとともに、職業安定法が禁止する「労働者供給事業」に該当するものと考えられます。

2003年改正で製造業への派遣が解禁されました。しかし、製造現場では以前から請負労働者が多かったのですが、派遣解禁以降もその状況が変わらなかったことから、偽装請負の蔓延がかえって認識されることになりました。

厚生労働省も、2006年になって、全国各地で偽装請負が問題になった請負事業者に対して、文書指導を含め行政指導を従来に比べてかなり積極的に行うようになりました。2006年9月には、監督指導の強化を各都道府県労働局に通知しました。そして、10月3日、大阪労働局は、製造請負で最大手企業であった「コラボレート」に対して、労働者派遣法に基づく事業の停止命令と事業改善命令を出しました。偽装請負で事業停止命令が出たのは労働者派遣法施行後20年を経過して初めてでした。

1985年、労働者派遣法が制定され、翌1986年に施行されて今年7月で22年目に入りました。当時、職安法違反の疑いの強い業務請負が広がっていましたが、新しい法規制の下で、許可や届出といった要件を課して一定の派遣業務に限って適法化することが派遣法の目的でした。

派遣法施行後、新たに派遣業が認められ急速に拡大してきました。

最近10年間では、派遣労働者は3.5倍に、派遣実績のあった派遣元事業所は3.1倍、派遣先件数は3倍、売上高で2.38倍になっています。

とくに、1999年の派遣法改正によって派遣業務が原則自由化されて以降の急増ぶりが際立っています。

私は、派遣法施行直後から派遣労働をめぐる個別の相談を受けてきました。数千にものぼる相談例からは、派遣労働者の雇用や労働条件には深刻な状況があることが分かりました。とくに、派遣期間中途での解約、低い労働条件、派遣先でのイジメやセクハラ、権利行使の困難が際立っています。

派遣労働者が無権利になる主な理由は、次の6点だと思います。

派遣元と派遣先に使用者責任が分かれていること、派遣先で就労したときにだけ派遣元と雇用関係があるという登録型派遣が認められたこと、派遣期間よりも短い細切れの短期契約が増えていること、派遣先従業員と同一労働でありながら、低い差別的な待遇であること、雇用保険・社会保険が派遣労働者には不利なままであること、労働組合への加入や組織が困難であることです。

有給休暇など、労働基準法が定める最低基準の権利も、それを行使すれば、次の契約更新がされないのではという不安から、権利行使をためらう労働者が少なくありません。登録型の場合、派遣元が変わるたびに休暇日数がゼロにリセットされてしまいます。派遣法施行後、規制緩和一辺倒であったため、派遣労働の弊害是正はほとんどありませんでした。

その結果、派遣労働が量的に拡大するなかで弊害も広がっています。とくに、99年派遣法改正の結果、単純業務での日雇い派遣が広がることになりました。

日雇い労働は、不安定で劣悪な労働形態として、極限に位置するものです。戦後、雇用状況がきわめて悪かったとき、建築、港湾などの業務を中心に広がっていました。とくに悪質な仲介業者による弊害が大きく、職業安定法や港湾労働法の規制ができ、日雇い労働者に特別な失業保険や健康保険も制度化されました。

その後、雇用状況が改善され、日雇い労働は徐々に雇用問題の中心から離れ、政府は日雇い労働者のための各種制度を縮小してきたと言えます。

ところが、99年の派遣法大改正によって、単純労働での派遣や、スポット派遣を認める規制緩和が導入されました。それが、現在問題になっている日雇い派遣が広がる背景になりました。日雇い労働者への保護を維持・強化して日雇い派遣を容認するのではなく、保護は縮小しながら、日雇い派遣を容認してしまった政府の責任が大きいと思います。

日本の労働者派遣制度は、労働者保護という点では世界最低水準です。EU諸国では当然とされる派遣制度本来の内容を盛り込むことが必要です。

とくに、同一労働同一待遇、派遣期間後の派遣先常用雇用などを明確にすることが重要です。

当面の改善としては、少なくとも、派遣の弊害を一挙に拡大した99年改正前に戻すことを基本にした是正が必要です。

このうち、日雇派遣・スポット派遣の廃止、専門業務への派遣業務限定は、法改正を伴う是正です。

しかし、派遣労働者への社会・労働保険適用や、違反企業の許可取消、偽装請負受入企業の雇用責任は、現行法を厳格に適用すれば可能です。

労働行政には、派遣労働者保護の姿勢を明確にして、監督や指導を強めることが大いに期待されていると思います。

引用終了)

***

「間接労働」の後ろめたさを、諸君なりの言葉で、説明できておられるであろうか? さらなるご検討を乞う。

遅ればせながら派遣労働を考えてみる

2008-05-14 02:29:02 | ディベート
先の週末、なんとか時間のやりくりの末、関東甲信越支部の論題研究会に出席できた。

労働経済学がご専攻の今村先生のお話は、非常に示唆に富むお話であった。

また質疑応答の際に、

「経済学って、何のための学問ですか?」

という質問が飛び出したのは、誠に微笑ましくも、好ましく感じた。

経済学に関心をもつことや、大いによし。ゆくゆくは、資源の効率的利用や、一般均衡理論の完成にばかり目を向けるのではなく、同じ経済学でも、ベンガル大飢饉に強烈な危機感をもったA・センがノーベル経済学賞を獲ったことの意義まで感じ取ってもらいたいものだと思った。

さてさて。

主人もそろそろ、高校論題について背景知識をつけておこうと思う。

しらべたところ、導入としては、以下の資料が参考になった。長文になるが全文を引用しておく。

(出典)NHKのHP「解説委員室」
 2008年03月04日 (火) 時論公論 「見直し求められる派遣労働」

引用開始)

 一日単位で契約を結んで仕事をする、日雇いの人材派遣を禁止するかどうかなど、労働者派遣法の改正論議が高まってきています。友井解説委員がお伝えします。

【前説】
今まさに春闘の時期で、賃上げが広がるかどうかが注目されていますが、その一方で、非正規労働が増えている問題にどう対応するのか、大きな課題です。
国会でも、派遣労働のあり方をどうするのか、今後、テーマになってくる見通しです。

「日雇い派遣」をはじめとする、ごく短期の契約で働く派遣労働が広がっていることは、正社員中心に組み立てられてきた社会が、大きく変わっていることを象徴していると言えます。何が問題になっているかを整理し、どう対応するべきかを探ります。

【広がる派遣労働】

<派遣労働の規制緩和>

派遣労働は、規制緩和が進む中で広がってきました。1985年に労働者派遣法ができたときには、専門的な職種に限って、あくまで例外として認められました。段階的に対象の職種が広がり、1999年には、原則と例外が逆転して、原則自由化され、その後、製造業にも解禁されて一気に広がりました。2006年度には、派遣で働いた人が、321万人にのぼりました。

派遣労働は、かつて、専門的な能力を活かして、会社の枠にとらわれずに、希望の条件で働けるというイメージがありました。今もそのイメージ通りの派遣労働もありますが、一方で、規制緩和によって専門職以外にも派遣労働が広がった結果、不安定な生活に陥る人が出てきました。

【特に日雇い派遣が問題】

<日雇い派遣とは>

特に、問題になっているのが、日雇いの人材派遣です。「日雇い派遣」は、人材派遣会社に登録しておいて、仕事がある時だけ派遣会社に雇われ、派遣先の現場で働く仕組みです。

仕事がある時には、会社から、携帯電話のメールで、引越しだとか、工場の製造業務などという、簡単な仕事の内容や、労働条件、集合時間の連絡が来ます。仕事があるかどうかは、前の日にならないとわからない、その日暮らしの生活です。

日雇い派遣自体は、法律で認められた働き方ですが、極めて不安定な生活を強いられ、ワーキングプアにもつながっていると批判が強くなっています。生活のために、複数の派遣会社に登録して毎日違う現場に出かける人もいますし、逆に毎日契約を更新しながら何年も同じ職場で働いている人もいます。「どんなに働いても明日が見えない生活で、食べていけなくなって生活保護を受けるようになったら、ようやくほっとした」と話す人もいます。

不安定な働き方に加えて、賃金は低く抑えられ、安全指導も不十分で、労災事故にあう危険性も高いと指摘されています。法律で禁止されている作業をさせたなどとして、大手のフルキャストやグッドウィルが去年と今年、相次いで業務停止になったことも記憶に新しいところです。

<「日雇い派遣」の広がり>

「日雇い派遣」をしている人が、どれくらいいるか、去年、厚生労働省が初めて調査をしたところ、回答があった人材派遣会社10社で、毎日5万人余りにのぼっていました。

「日雇い派遣」の人数について、「働く人全体の中ではごく一部だ」という見方もありますが、「全容はつかめておらず、実際にはもっと深刻だ」とも指摘されています。「日雇い派遣」を含めた、1ヶ月未満というごく短期間の契約で働く人の収入は、平均で月に13万3000円で、それだけで暮らしていくのは厳しい状況です。働いている人のおよそ70%が34歳以下で、若い世代に、広がっています。
このような細切れの契約で生計を立てている人が、半数を超えていました。

25歳から40歳未満の男性では、「できれば正社員として働きたい」と希望する人が多くなっています。

パートやアルバイトではなく、フルタイムで働きたいけれども、正社員になれなかったという人が、日雇い派遣に流れこんで来ている実態が窺えます。「日雇い派遣」には、空いた時間に手軽に仕事を探せるなどのメリットがあるのは確かですが、他に選択肢がなく、やむを得ず「日雇い派遣」で働いている人が少なくないことも事実です。

<コストダウンしやすい派遣労働~間接雇用>

このように日雇い派遣で働く人が、厳しい状況に置かれるのには、派遣労働そのものの仕組みが関係していると指摘されています。

正社員の場合は、会社から直接雇われます。会社側が、解雇したり、賃金を下げたりは、簡単にはできません。それに対して、派遣で働く人を雇っているのは派遣会社で、実際に働く会社は、派遣会社と契約を結んでいるだけで雇い主ではありません。雇い主と働く会社が違うため「間接雇用」と言われます。

このため、働く人の労働条件をどうするかという意識を持たずに、会社同士の商取引として、派遣料金を安くするよう求めたり、契約を打ち切ったりすることができるのです。それが、働く人にとっては解雇や賃金の引き下げです。派遣労働という仕組みそのものによって、企業が、働いている人を、生身の人間としてではなく、純粋なコストとして考える傾向が強くなるという見方もあります。

【派遣めぐる議論】

派遣労働について、労働組合からは、あくまで直接雇われるのが原則なのに、例外的であるはずの派遣労働の規制緩和を進めてきたこと自体に問題がある、以前のように限定するべきだという意見が出ていますし、日雇い派遣は禁止するという法案も国会に提出される見通しです。

しかし、一方で、企業側の反対も強く、派遣法の見直しがすぐに進むとは限りません。派遣労働に対するニーズが大きいのだから、むしろ規制をもっと緩和して、業種の制限もなくすべきだという意見も出ています。

【見過ごせない日雇い派遣】

規制緩和の是非については、このように議論がありますが、しかし、社会的な条件が整わないまま、規制緩和が先行した結果、弊害が出てきていることを見過ごすことはできません。この問題を考えるにあたっては、派遣労働に限らず、パートなども含め、正社員ではない働き方が増えている現状の中で考えていく必要があります。

【正社員前提の社会保障制度から外れる恐れ】

もともと日本では、会社が、社宅という形で正社員に住宅を用意し、家族手当を出し、職業訓練も行っていました。

健康保険や厚生年金、雇用保険も、一つの会社に長く勤めることを前提にした制度になっています。かつては、非正規の労働者と言っても、正社員の父親が家計を支えたうえで、補助的にパートで働く母親や、アルバイトをする息子や娘のことでした。非正規の労働者は、正社員の扶養家族として、社会保障制度の対象になっていました。しかし、非正規労働で食べていかなくてはならない人が大幅に増え、非正規の意味あいが変わりました。

それなのに、社会的な制度は、正社員前提のままです。健康保険や厚生年金は、一つの事業所で働く時間が、正社員の4分の3以上に達することなどが条件になっています。生活のために、いくつかの派遣会社を掛け持ちしている人は、休むまもなく働いても、社会保険の対象にならず、病気で休んだときの手当ても受け取れません。雇用保険も、一つの事業所で週に20時間以上働く、一年以上継続して働くことが条件になっています。日雇い労働者向けの雇用保険もありますが、適用されている人はほとんどいません。

平成17年の調査では、社会保険や雇用保険に入っていない人が10%を超えていました。社会保障の制度が、社会の変化に追いついておらず、働く人にしわ寄せが行っている状態と言えます。

【見直し求められる派遣労働】

規制緩和が進んで、様々な働き方を選べるようになり、その上で、正社員か非正規かに関わらず、同じような生活が送れる状況になれば、それは望ましいことです。しかし、現在、そのための条件が整っているとは言えない状況です。

不安定な生活や低賃金を生み出す、細切れの契約や間接雇用のあり方については、規制の強化も検討すべきではないでしょうか。同じ派遣労働でも、仕事がない時でも派遣会社の社員として雇うなど、不安定な雇用を改める努力が必要です。

【社会全体のあり方に関わる問題】

派遣労働のあり方をどうするかという問題は、働く人と企業との関係をどうするのか、どのような働き方が望ましいのかという問題につながります。働き方の多様化と言われますが、それは、働く人にとって、多くの選択肢がある、という意味でなければなりません。

年収200万円以下の人が1000万人にのぼり、少子化が進んで労働力人口も減少していく中で、将来の展望をどのように描くのか。

働き方がどうあるべきかを考えることを通じて、どのような社会を目指すのかが問われています。

引用おわり)



肯定側に立つディベーター諸君、よろしいか。

日雇い労働の悲惨さという現象【のみ】に目を奪われてはならぬ。

1985年の労働者派遣法成立以前は、日雇い派遣はおろか、「派遣」という慣行そのものが、社会的に好ましからざるものとして、認められてはいなかったのである。その背景となる考え方を、ぜひ突き詰めて掘り当てて欲しい。

さすれば、単なる知識として労働三権を暗記する以上に、学ぶところがあろう。