嶽南亭主人 ディベート心得帳

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ディベート甲子園2011中学論題(13) 選挙の原則~自由選挙

2011-06-10 04:20:12 | ディベート
お待たせしました。

選挙の原則シリーズ、第3弾の今回は、「自由選挙」です。

「自由選挙」とは、「誰もが、自由に政治団体を組織でき、自らを含めて自由に
候補者を立候補させることができ、そして支持獲得のために自由に運動を行うことを
認める一方、誰にも干渉されず、自分の判断で自由に投票することができる」ということ
を指す概念です。

お気づきの通り、政治的意思を表明して自ら政治活動を行う自由と、政治的支持を
選択できる自由との2つの側面があります。

この概念の反対は、選挙運動が公正で競争的に行われない「非競合的選挙」や、
有権者に強制的に投票させる「強制投票」ということになります。

さて、今回も調べ学習です。

●問い

自由選挙の原則に照らして考えた時、昭和17年4月30日の第21回衆議院選挙
の問題点を述べてください。

以下、参考資料をお示しします。


→てっとり早く調べたい方へ: 

ウィキペディアをご覧ください(笑)

→もっと詳しく知りたい方へ: 

清水聡(著)「気骨の判決 ― 東條英機と闘った裁判官」
(新潮新書) 2008.8 をご覧ください。

  ※ご参考までに、まえがきの一部を引用しておきましょう。

 「国会議員を選ぶ選挙で、政党が存在しない。
  その代わりに、、事実上政府が定員と同数の候補者を推薦する。
  もちろん気に入らなければ、その人に投票しなければいい。しかし、推薦候補
者の選挙費用は国が出し、選挙運動は警察、道府県、市町村、さらには自治会レベ
ルで後押しされている。地域によっては推薦候補者に投票しないと非国民と呼ばれ
てしまい、配給を止めるぞと脅される。さらに、誰に一票を投じたか調査さえる所
まである。
  どこかの独裁国家の話ではない。
  日本で実際にあった選挙である。昭和十七年の衆議院議員選挙がそうだった」
  (出典) 前掲書


→本格的にこの問題を考えたい方へ: 

矢澤久純「第21回衆議院選挙鹿児島第2区無効判決と司法権の独立」
(中央大学法学会『法学新報』2001年5月号108巻2号)を、
図書館でお探しの上、ご参照下さい。

では、どうぞ。


****

(指導者の方へ)→

●昭和17年の「翼賛選挙」は、組織的かつ広範な選挙干渉が行われた一つの歴史的事例です。
ここでは、「選挙干渉の何が問題なのか」について、深くディベーター諸君に考えさせて頂きたいと思います。

●候補者側の「政治的支持を獲得する自由=多数派を形成する自由」は、
民主主義の原理における「非専制」と深く関連するものであり、非常に重要な理念なのだ、
ということを、まずはディベーター諸君にご指導下さい。

→アメリカの政治学者であるR・ダールは、「実在する政治体制の民主主義の度合い」を
実証的に検討・分析するための概念として「ポリアーキー」という概念を提唱し、

(1)公的異議申し立ての自由、(2)参加の広汎性

の2つを分類軸として設定し、両者を満たす政治体制を「ポリアーキー」として分類しています。

この2条件に照らせば、国名で「××民主主義人民共和国」と名乗っていても、政府が反対党/野党を
組織的に抑圧していたら、(1)の条件に抵触し、民主主義的な「ポリアーキー」とは認められない
のである
、という分析をご紹介頂くのもよいでしょう。

●また、候補者側の自由が制約される結果として、選択の余地が狭まるならば、それは
選ぶ側=有権者の自由をも制約することにもなるという点もご指導ください。

●この検討のまとめ・整理として、

1)政治的自由を制度的に顕現させたところの「自由選挙」のベースには、
思想・信条、集会、結社及び言論、出版、表現等の自由といった基本的人権がある


ということ、また、

2)自由選挙が保障されることによって、有権者の側でも、自らが知りたい情報を得て自由に判断し、
自身の意思を投票で示すことが可能になる


ということに、ディベーター諸君の想いが到るように、お導き下さい。

●以上をふまえた上で、今回の立論構築上のヒントとして、「自由の制限が正当化されるのは、
具体的にどのような場合なのか
」について、ディベーター諸君に問題提起をお願いします。

→例えば「自由な選挙運動」は大切です。しかし、金権選挙の抑止の目的から「一定の支出制限」が
公職選挙法によって実際に行われています。すなわち「お金を際限なくつぎ込む自由」は、
現状でも候補者には法的に認められていないのです!

→このような例を示しながら、本来、なるべく自由であるべき選挙活動ですら、一定の制限を
法的に課すことが実際に行われているのだということをご指導ください。

→そして、肯定側のメリット検討の観点による検討の一環として、今回の論題の中心的な
問題である有限者の棄権行為に対して罰金等の制裁を科すことに「なんらかの合理性」
(=社会的なメリットと換言できます)を見出すことができれば、それを是とすることが
できるかもしれない
。では、その合理性/社会的メリットとは何だろうか?
と、問いかけてみてください。

●さらに、その議論への反駁/デメリットの検討として、「投票しない自由(正確には、
投票所に足を運ばない自由)」が「なぜ重要だと考えられるのか」、
その根拠について
徹底的にブレストを行う+資料の読み込みを行うことを、ディベーターに示唆してあげるのが
よろしいと思います。

以上です。


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