嶽南亭主人 ディベート心得帳

ディベートとブラスバンドを双璧に、とにかく道楽のことばっかり・・・

【今日のBGM】 M・アーノルド「第六の幸運をもたらす宿」よりⅢ.ハッピー・エンディング

2006-05-28 05:53:35 | ブラスバンド
演奏は、岡山県津山市立津山西中吹奏楽部。2000年の「全国金賞団体の競演」より。

やっぱり、アーノルドはいいなぁ。演奏の方も、しっかりと厚みのある音色が心地よい、かなりの快演。

この楽章、スネアに導かれて、ピッコロによって提示される、例の:

ピポピー、ピポピー、パペピプペポピ~♪

という主題。これ何だっけ?と記憶の糸をたどったら、これは、

刑事コロンボが機嫌の良いときに吹く口笛のメロディー

だった。


【今日のBGM】 小山清茂「吹奏楽のための木挽歌」

2006-05-24 00:54:31 | ブラスバンド
演奏は、もちろん前橋商業。Eternallyの3。

小学生のとき、大相撲とキンカン素人民謡名人戦を祖父と二人で見るのが日課だった。私の民謡好きは、この頃に始まっているのであった。

民謡も数々ある中で、日向木挽歌は、最短の曲のうちに入るだろう。

その日向木挽歌に良く似た旋律をテーマに、「小山木挽歌」が成立している。しかも、第1楽章には、ご丁寧に歌詞(!)までついていたりする。

♪山で暮らせば、コラ木の根が枕。木の根はずせば石枕

作曲者自身の解説のとおり、

第1楽章で、山の奥で歌がうまれ、
第2楽章で、歌が村に降りてきて、祭囃子となり、
第3楽章で、さらに歌が都会に出て洗練され、
第4楽章で、民族的な力強さをもった歌になっていく

というストーリーが隠されている。

中学、高校と、プレイヤーとして2度、この曲を演奏する機会を得た。今考えてみると、非常に幸運かつ幸福であったといういわねばなるまい。

また、棒振りとしてみるとき、第4楽章のエンディング、バスクラのソロに入る前のところで、

いかに観客の拍手を【阻止するか】

が、結構面白かったりする。

個人的には、第3楽章、透き通ったバイブの音色がたまらないのだが、コンクールのように時間制限がある場合、この楽章がカットの憂き目にあうのが、悲しい限り。この点、この前橋商業の演奏も、その例外ではない。全く残念。

あー、ライブで聴きたい。

◆5/7道州制モデルDB 延長戦その2:補完性原理についての補完的解説

2006-05-10 13:51:10 | ディベート
では、今回は、第1試合の肯定側のメリットについてのコメントをば。

第1試合の当事者たる愚留米氏がご自身による議論の振り返りを、例の「四日市高校 ディベート日記」で書き進めておられるので、あわせてご覧頂ければと思う。


肯定側立論の説き起こしは「補完性の原理」。

肯定側の思想を端的に説明するものとして、これに言及したことはとても良い。
が、その背景にある価値規範にまで、説明が及んでいなかったのが、少々残念。

「背景にある価値規範」とは、たとえばこういうことだ(以下、NAKO-Pさんのご質問を受けて、当日もお話したが、例によって「寸止め」をしてしまったので、今回はもう少し踏み込んで解説させて頂こう)

***

郵政民営化が耳目を集めたとき、その推進者は

「民でできることは、民へ」

と絶叫していたことを、皆さんご記憶であろう。

このスローガンは「民の活動領域は大きいほど、政府の活動領域は小さいほど【良い】」という価値判断を含意している。

これは、「誰のお金」を「誰のために使う」かという視点から分析、説明できる。

 1)「自分のお金」を「自分のために使う」・・・これは市場で通常に行われる商取引である。

自分のお金であるので、やましいところは一つもない。
また、自分のためにつかうので、お金との交換の結果、欲求を満たす何かが得られるので、その面でも満足度は保証される。

 2)「自分のお金」を「他人のために使う」・・・これはチャリティ、寄付行為である。

お金が他人のために使われるということは、社会的には非常に麗しい行為である。
ただ、自分のお金と引き換えにもらえるのは、「ありがとう」という声だけ。物質的な満足を得ることができない。

 3)「他人のお金」を「自分のために使う」・・・これはおごり、あるいは「経費による接待」の世界である。

銀座かどこかは知らないが、存分に飲み食いできるのだから、物質的な満足は高い。
ただ、他人の金を横流しするのであるから、やっぱり、後ろめたい。のみならず、自分の財布が傷まないのだから、どうしても気前良くなりがちである。

 では、4)「他人のお金」を「他人のために使う」はどうか?

他人のお金であるから、無駄遣いしたって、自分が困るわけではない。
他人のためにお金を使っており、物質的な見返り(=経済的な効用)が自分にくるわけではないので、しょせんは他人事。もっとがんばって見返りをゲットしようという意欲も湧かない。

→結果、どうしても「真剣味に欠けるお金の使い方になる

かくして、市場原理を信奉する経済学者は言う。

「これこそが【税金(他人の金)による政府(他人のために使う組織)】の運営の本質である」と。

必然的に、「4)よりは1)の方が良い」→「民がやる方が、官がやるよりマシだ」との結論が下されることになる。

そして、この思想が、「郵政事業の官営はよくない。民間企業によって行われるのが良いのだ」という主張の通奏低音として機能していたのである。

***

「補完性原理」の底流にも、それとは異なった、ある種の価値判断がある。そして、それが、

「地方でできることは、地方で」

という、もう一つのスローガンを下から支えているのである。

一般にそれは「地方自治の本旨」という言い方で表現されることが多い。が、それでは、行政関係者や研究者のような、「その筋の人」にしか、伝わらない。再三再四になるが、ディベーター諸君には、これを自分の言葉として理解、表現し、審査員に語りかけて頂きたいのである。

→その大きなヒントは、先般ご紹介した地方制度調査会の道州制答申のどこかに書いてある。乞うご研究。ついでに申せば、カトリック教会、ピオ十三世の回勅で「補完性原理」が明確に定義されたのは1931年。イタリアやドイツではすでに独裁政権が成立していたという切羽詰った時期にこの回勅が出たということは、決して偶然ではない。



あ。メリットに対するコメントをするつもりだったのに、肯定側スタンスへのコメントだけで、こんなに長くなってしまった。続きは、改めた方がよさそうだ。

◆5/7道州制モデルDB 延長戦その1

2006-05-09 19:51:15 | ディベート
先の道州制モデルディベート、解説を仰せつかった身としても、学びも多く、非常に楽しかった。関係者の方々、それに各地からお集まり頂いたみなさんに厚く御礼申し上げたい。

ただ、解説で申し上げそこなった部分、言葉たらずになった部分が多くあったので、しばらく解説の延長戦を試みてみようと思う。


●個人的にやるなら、肯定側をとりたいとの意を強くした。戦略としては、「補完性原理」や「地域のことは地域で決めるべし」という地方自治の本旨を価値基準として掲げ、その根拠を『念入り』に説明しておいて、肯定側第1と第2反駁のコンビネーションを通じ、多少のデメリットは残っちゃっても、メリット・デメリットの価値の比較の議論で「ハナ差で逃げ切り、ゴールイン!」、てなイメージ。

●次に否定側について。「地方分権の大義名分が肯定側に持って行かれる以上、否定側のスタンスの立て方が難しく、各論撃破でいくしかないかも」との意見にそれなりの説得力を感じていたのだが、このモデル・ディベートを見て、認識が変わった。否定側でも、理念・スタンスのレベルでがっぷり四つに組むことは可能だ。

●その際の選択としては、2つ。

1)「地方分権は都道府県制を中心に行うのが良い」というもの。

→現状での地方分権の流れを擁護しつつ、地方分権の重要性には賛同するものの、なぜ「道州でなければいけないのか」というポイントをしつこく指摘し続ける。そして、肯定側の自滅を誘う。

2)「中央集権の方が良い」と開き直るもの。

→現状の地方分権の流れでもう十分であり、行き過ぎた地方分権=道州制はかえって良くないと宣言してしまう。当然デメリットは、今後は、国が政策の企画から執行までフルセットで責任を持つ方が「日本全体にとって幸せだ」という主張を裏付けるようなデメリットを用意し、押し通す。

●なお、否定側第2反駁は、1)で行くなら「道州制 vs 都道府県制」、2)なら「地方分権vs中央集権」で議論を整理し、比較対照すると、聞き手に分かりやすくなる。

●いずれにせよ「地方分権」という概念について、さらに言えば「国・地方関係、あるいはこの国のかたちはいかにあるべきか」について、字づらでなく、自らの問題として実感を込めて認識・理解できているかどうかが、ディベーターにとっての試金石となる。せっかくの全国大会である。各地区の代表校には、地域色あふれる議論や事例を、大いに期待したい。

●かくして道州制論題でも、首相公選論題や国民投票/住民投票論題でも登場してきたところの・・・

日本にとって、良い統治とはいったいどういうことなのか

「迷ったときに、『決定する自由』を取るのか、『決定の帰結の良し悪し』をとるのか」

という政治学的にも重要なテーマが、再び本質的な問いかけとして登場してくるのである。


↑この点、敬愛してやまない酔睡亭さんが、

「上手く言えないが、ディベートに参加する一人一人が坂本龍馬になった気持ちになれるのではないかと思う」

と、いみじくも言っておられる。正鵠を射るとは、このことである。

◆(道州制論題)H18.2.28の地制調答申を読もう

2006-05-02 18:23:35 | ディベート
平成18年2月28日の地方制度調査会の「道州制のあり方に関する答申」を、皆さん、ご覧になられたであろうか。

基本資料中の基本資料なので、新聞等による要約や解説で済ますのではなく、この際、ぜひ原典をご確認いただくことを、ディベーター諸君には、強くお勧めする。総務省ホームページから、造作なくこの資料にたどり着ける。

この答申、基本的な制度設計についての考え方等が書かれており、議論の素材として非常に有益である(←そりゃそうだ、そもそも「本答申を基礎として、今後、国民的な論議が幅広く行われることを期待する」と結ばれておる通り、この答申は政府が出した国民的な議論のためのたたき台なんだから・・・)。

うち、興味深い情報を、一部、紹介しておこう。

<道州制の下で道州が担う事務のイメージ>

と題された参考資料がある。道州が担う事務の例は、以下の通りとなっている。つまり、道州制下において道州政府はこのような「お仕事」をすることが想定されているのである。

(凡例) 【行政分野】
○・・道州が担う事務

【社会資本整備】
 ○国道の管理
 ○地方道の管理(広域)
 ○一級河川の管理
 ○二級河川の管理(広域)
 ○特定重要港湾の管理
 ○第二種空港の管理
 ○第三種空港の管理
 ○砂防設備の管理
 ○保安林の指定
【環境】
 ○有害化学物質対策
 ○大気汚染防止対策
 ○水質汚濁防止対策
 ○産業廃棄物処理対策
 ○国定公園の管理
 ○野生生物の保護、狩猟監視(希少、広域)
【産業・経済】
 ○中小企業対策
 ○地域産業政策
 ○観光振興政策
 ○農業振興政策
 ○農地転用の許可
 ○指定漁業の許可
 ○漁業権免許
【交通・通信】
 ○自動車運送、内航海運業等の許可
 ○自動車登録検査
 ○旅行業、ホテル・旅館の登録
【雇用・労働】
 ○職業紹介
 ○職業訓練
 ○労働相談
【安全・防災】
 ○危険物規制
 ○大規模災害対策
 ○広域防災計画の作成
 ○武力攻撃事態等における避難指示等
【福祉・健康】
 ○介護事業者の指定
 ○重度障害者福祉施設の設置
 ○高度医療
 ○医療法人の設立認可
 ○感染症対策
【教育文化】
 ○学校法人の認可
 ○高校の設置認可
 ○文化財の保護
【市町村間の調整】
 ○市町村間の調整

※(ご注意)上記の事務のうち、あるものは「道州制によって国から権限委譲があるもの」であり、残りは「現状で都道府県が担当している事務を引き継ぐもの」である。例によって、わざと伏せさせて頂いた(不悪)。

 どれがどれなのかは、原典を見ればわかる。特に「国がやっていたときにはろくでもない仕事っぷりだったけど、道州が担当すれば、それがぐーんと改善するのだ」というような主張をなさりたいのであるならば、ぜひその点を確認しておいて頂きたい。