嶽南亭主人 ディベート心得帳

ディベートとブラスバンドを双璧に、とにかく道楽のことばっかり・・・

【今日のBGM】 M.グールド「狂詩曲・ジェリコ」

2006-07-26 02:19:36 | ブラスバンド
演奏は、ワシントン・ウィンズ。BelwinのバンドコンサートVol.2.

寝る前の一曲。

グールドの軽快なサウンドを聞いて、このところ、聴牌モードの仕事の憂さをはらす。ちょいと長い尺のせいもあってか、コンクールとかでもめったにお目にかかれない。でも、プログラム・ノートを見るに、この曲をたったの25日で書いたってんだから、すごいよね。

あー、城壁を崩すラッパのサウンドを聞いて、すっきり。城壁が崩れるパーカス音も、好印象。

さてと、眠いし、もう寝よう。

【今日のBGM】 B.B.ベネット「バンドのためのシンフォニック・ソング」

2006-07-25 03:22:16 | ブラスバンド
演奏は、フェネルのイーストマン。過日、スベトラーノフ指揮のショスタコ「森の歌」DVDのついでに衝動買いしたCD。

いやぁ、懐かしいぞ、これ。

高校の時、練習曲として吹いたし、富士交響吹奏楽団の定期演奏会でライブでも聴いた。が、しかし・・・

いやぁ、すごいぞ、フェネル。それにイーストマン。

冒頭2拍子と3拍子が同時進行する第1楽章セレナーデ。ラグのリズムの取り方は、これぞお手本っていう感じ。それに、この洗練されたサウンド!

やっぱりこれは名曲だったんだ。と、認識を新たにする。

でも、3楽章セレブレーションを、無理に・・・

「3.祝典音楽」

って、訳さないでもいいですよぉ。


東北大会 高校決勝: 会津高 vs 能代高

2006-07-25 02:59:15 | ディベート
最後は、高校決勝戦の主審をeiriさん、上條さんとともに。

(だいぶ日がたってしまったので、簡略に。それもちょっと辛口に)

肯定側のメリットは「地域主体の行政」
否定側のデメリットは「地方衰退」

この試合がどこで決まったか、一言で言うと・・・

●デメリットの固有性に対する肯定側からの反駁を、否定側が返しきれていなかった

ためである。もちろん、肯定側の第1反駁と第2反駁のはさみうちにあってしまった否定側第2反駁の責任もあるが、それ以上に立論の段階から改善の余地が見えた。さらなる研究を乞う。

●一方、肯定側。今回は巧みな技術でデメリットをおさえることができたが、デメリットの返しのメインが固有性のアタックに依存するようでは弱い。

固有性アタックに、資料的には良いものを使っている。だから一定の説得力はある。が、固有性の議論は、相手に立論の段階から気合を入れて補修されてしまうと、ほんとに部分的にデメリットの発生過程を削ることしかできない。その先の重要性が大きく残った場合、デメリットはやっぱり残ってしまう。対策としては、例の大前研一資料のような、デメリットの発生過程を根本から断つような議論を用意しておくのがよかろうと思う。

判定は3対0。一定程度成立したメリットに対して、固有性が危うい分、リスクにすぎないと判断されたデメリットを比較すれば、容易にメリット>デメリットと結論できる、とジャッジ全員が思った。

なので、肯定側・会津高校の勝利、優勝ということになった。

ともあれ、地区大会の決勝戦に相応しい熱戦であった。会津高、能代高とも、全国優勝をめざしてがんばって欲しい。

ちなみに試合後、上條さんは、

「いやぁ、日本の将来は明るいなぁ」

と、感慨深げにおっしゃった。

全く同感であった。

東北大会第4試合: 大東中vs河東中

2006-07-17 14:43:01 | ディベート
第3試合の主審のコメントが長くなり(運営のみなさん、すみませんでした・・・)、駆けつけるような格好で第4試合へ。

この試合の主審は、しば君。私は、副審1として、コミュニケーション点のコメント書きに勤しむ。

肯定側は、一関市立大東中。初出場。新規参入は、大いに歓迎したい。

否定側は、会津若松市立河東中。昨年度は、ふじ先生のご指導のもと、堂々の全国3位。今年、ふじ先生は、ご昇任、ご栄転で只見中に移られ、今回は前任校のサポートに回られたとのこと。お手並み拝見といこう。

●メリットは、「動物の虐待防止」

内容的にはオーソドックスで、動物をストレスにさらすのは一種の虐待であるから、動物園を廃止して、それらを救おうというもの。クマ牧場の事例の論証力はそれほど強くないものの、現状分析から発生過程、重要性と、一通りの形になっている。

●一方デメリットは、「動物の命を失う」というもの。

これが実に良くできていて、ものすごく強い議論になっている。プランを取れば、逆に動物の命が危険にさらされるという論旨で、がっちりと論拠を固めて提出している。証拠資料の質も良い。主審のしば君の言うとおり、二重三重の構えで議論を立ててくるので、まともに返そうとするのは容易ではない。よく練られた議論だった。

●ここで、このデメリットについてコメントを少々。以下、議論の内容に踏み込んで論評するので、意図的に婉曲に書く。

このデメリット、実は「相手を選ぶ」。つぼにはまるとその破壊力はものすごいものの、はずれた場合、それっきりになってしまうというリスクを持っている。

そもそも、命あるものは、いつか必ず死ぬ。

だからこそ、命は尊く、粗末にしてはならぬのだ。
死んだものが生き返ってくるのは、テレビゲームかホラー映画の世界ばかりだ。

「失われた命は、二度と取り戻せない」という常識を、あらためて教えなければいけないのかと思うと、暗澹たる気分にさせられるものの、命の大切さを考えなおす機会を得るという意味でも、動物園論題は非常に良い論題だと思う。

もう一度言う。命あるものは、必ず死ぬ。飼育係の皆さんや、観客として訪れる我々と同様に、動物園の動物たちもいつか必ず死ぬ。動物園が廃止されなければ、動物に永遠の命が宿る、などということは絶対にない。

だとすれば、要は「死なせ方」の問題なのだということが明らかになる。

かくして、このデメリットで戦おうとするなら、肯定側の工夫を上回る工夫や、別のアプローチを考える必要が出てくる。おそらく河東中のみなさんは、その点、ぬかりなく検討を進めておられることだろう。

● そして試合は反駁のステージへ。

否定側第1反駁も、手堅い反駁を展開する。

こうなると肯定側は、さらに苦しい。第1反駁は、それぞれの論点に対して、それなりの反論を試みるが、否定側のブロックを崩すには至らなかった。

結果、3-0で否定側の勝利となった。

敗れたとはいえ、大東中の素直なスピーチには好感が持てた。今後を期待したい。

また、勝った河東中は、リーグ1ぬけとなり、この後の決勝戦でも勝って、東北大会中学の部で優勝。2年連続で全国大会へのチケットを手にした。全国大会でのご健闘を祈りたい。

東北大会第3試合: 八戸高vs東海大山形高

2006-07-15 23:22:22 | ディベート
昼食休憩後の第3試合。

対戦は、青森・八戸高校が肯定側、山形・東海大山形高校が否定側。

●メリットは「財政再建」

八戸高校の立論で非常に印象的なのは、立論の中で重要な概念に対して、最初にまとめて「定義」を与えてくれたことである。

「定義」をすべきなのは、何も論題中の語句ばかりとは限らない。専門用語や多義的な用語があれば、特にそれらの語句が論理構成において重要な役割を占めるのであるならば、

「それって、何のことだろう?」

と聞き手に感じさせたまま議論を展開するのは好ましくない。

それを回避するには、自らが使う語句について、

「これは、○○を指して言います」

という風に定義を与えるのがよい。

このコミュニケーションにおける基本動作を、八戸高は堅実に行ってくれた。高く評価したい。

もう少し改善が望まれるのは、またしても重要性の部分。もう一工夫欲しい。

国債の市中消化がまもなく困難になるので、いま手を打たないとまずいという論旨は良く分かる。が、その結果、いかなる悪夢が日本を襲うのか、もっと突っ込んで欲しかった。国債暴落・長期金利高騰からくるリセッションでも良いし、論じたければIMF管理下におかれた場合のインパクトに言及してもよい。(個人的には、金利上昇にともなう、住宅ローン負担の増の方が、よっぽど脅威だが・・・)

●デメリットは「格差拡大」

個々の論点はそれなりにわかるのだが、「財政力の格差」→「一極集中の拡大」という論理構成を選択してしまったため、発生過程が不要に長い。改善の余地が大きい。

また、重要性についても同様。

「どのような格差」が
「何ゆえによろしくないのか」

については、このデメリットを出すならば、とことんお考えになられたい。

●ちょっとここで、道州制における「王道の議論」

について、考えてみよう。

別の投稿に対して、現役の方からコメントを寄せて頂いた。

「財政再建は、道州制論題における王道の議論じゃないような気がする。ちょっと寂しい」

とのご趣旨。

いやいや、必ずしもそうではないように思う。

いわゆる【王道の議論】が、

「道州制といえば、やっぱりこのメリット(あるいはデメリット)だよなぁ」

と、聞き手が素直に共感、納得できる議論だとすれば、そのように聞こえない立論は、大方の場合、「内因性」の説明に欠陥がある。というより、その部分に手抜きがある。

こう考えてみては、いかがか。

【良くない例】

(重要性)財政破綻は、やばい。
(内因性)????
(解決性)道州制を導入すれば、○○兆円が入ってくるので、財政破綻を回避できる、あるいはそのリスクが下がる。

・・・と論じてしまうと、「現状を変更/論題を採択しなければ、そのメリットは得られないっていう理由が、何かあるのだろうか?」という疑問を、ジャッジの脳裏に残してしまう。

かくして、「このメリット、【道州制ならでは】とは、感じられないなぁ」という烙印が押されてしまう。これに対して、

【改善例】

(重要性)財政破綻は、やばい。
(内因性)
○消費税増税のような安易な歳入増は、経済に対する負の影響が大きいのみならず、納税者の納得も得られない。
○よって、まず徹底した歳出合理化/行政改革が先決。
○歳出合理化といっても、中央省庁レベルの行政改革は、2000年の中央省庁再編から最近の郵政民営化まで、ほとんど手がつけられた。
○地方レベルの構造的な行革は、平成の大合併によって大きく進んだ。
○となると、残された行革のターゲットは、中央・地方関係の根本的な再編ということになる。
○まさしく、これこそが「道州制」の導入が喫緊の課題たる所以である。
(解決性)この道州制を導入すれば、○○兆円が入ってくるので、財政破綻を回避できる、あるいはそのリスクが下がる。

とすれば、いかがであろうか? だいぶ違った印象を持たれるのではないか?

ともあれ、「王道の議論」かどうかは、予め決まっているようなものではない。歳出削減のメリットが、一概に良くないというつもりもない。

「なぜ論題採択が必要なのか?」

について、深く考え、誠実に議論してくれれば、それで良いのである。

●さて、判定は・・・

双方決め手を欠くまま、試合終了。重要性のはっきりしないデメリットと発生過程のわかりづらいデメリットとの比較考量。ジャッジの票も割れた。

結果は、2-1で、肯定側・八戸高校の勝利と相なった。ちなみに、私はマイナーボートに回った。


東北大会第2試合(続き):会津若松二中vs青葉中

2006-07-12 20:29:23 | ディベート
(前回の続きです)

●ここで、勝手に想像して、思考実験を行い、それによって今回のメリット・デメリットがどう変動するかを考えてみる。

プラン後に「種の保存を行う」ことの実践方法として、「客を入場させない”動物園”として施設を維持する」という案を考えてみよう。

そうするなら、園の有する種の維持機能については、現状とプラン後の差はない。よって、デメリット1は消える。

ただし、メリット1も、種の維持機能に不要な個体(サル山のサルとかかな?)「のみ」が、野生に解放できることとなるため、メリットの大きさも激減する。

メリット2。費用面で考えると、飼育のための維持費や専門職の人件費(例:野生復帰したサル等のえさ代等)は現状より微減、集客・接客関連の人件費や管理費のリストラ分が減少、それに野生復帰のための活動費用が追加。総費用は今よりもやや減少するかも。しかし収入面で、入場料収入がまるっきりなくなるのが手痛すぎる。合計では、赤字が今よりひどくなる予感大。となると、これはメリットからデメリットに転落する。

一方、デメリット2は、少なくとも集客・接客関連の人々のリストラ分は、あいかわらず発生するだろう。

うーん、この解釈をとっても、やはり、肯定側は勝てなさそうだ。

→「客を入場させない動物園」というのは、賢くない方法だということがわかった。ならば肯定側は、それ以外の動物園廃止後の「種の保存」の上手い方法を考えてほしい。

個人的には「トキ保護センターを全国に立地させる必要がない」のと同様に、「種の保存施設が全国に満遍なく存在する必要」は感じませんから。

●あと、この試合の講評で述べた「数のとりあつかい」について

口頭でものを伝えるのは、意外に難しい。特に数字が入ってくると。

この試合、お金や失業者に関して、数字が飛び交った。いわゆる早読みで数字そのものが聞き取れないというような状況ではなかったものの、かなり数字がらみの議論の理解に苦労させられた。有り体に申せば、疲れた。

そうならないようディベーターの皆さんにお願いしたいのは、

「数字」そのものを明確に伝えるのは当然として、

・その「数字の意味」
・その数字を導出する「四則演算」の数式

を伝える際にも、同様の配慮をして欲しいということである。

試しに、数学(証明問題がよろしかろう)の問題の解答を、口頭で読み上げて、どれだけ人に伝わるか、やってご覧になると良い。

数字や計算式、つまり数的な論理展開が議論の内容に入ってくるということは、話している内容を聞き取る+書き取るのに忙しい聞き手に対して、さらに「聞きながら考えさせる」という負担を強いているということなのである。

その負担がどんなものかに気がつけば、立論の構成および伝達において、どうしたら聞き手がラクになるか、工夫の余地が見つけられるようになるであろう。

●そして判定。

試合の判定は、メリット1に大きな意味を認めたジャッジは肯定側に投票し、デメリット1の大きさを認め、メリット・デメリットの総合評価ではデメリットが上回る、もしくはメリットが上回るとは言いがたいとしたジャッジが否定側に投票。

そうして判定は、1-2で否定側、青葉中の勝利となった。

残念ながらこの時点で、若松二中は二敗目を喫し、全国大会出場の可能性が消えた。捲土重来を願う。

ちなみに、これら2校が入った中学Aリーグは、2勝1敗が2校、1勝2敗が2校という大混戦だった(得票差で東北学院中が、決勝戦に進出)。

この論題のせいもあるだろうし、地区全体でレベルが拮抗してきていることの証でもあろう。

【教訓】 プランの「前」と「後」で、何がどう違うのか、しっかり想定しておこう。聞かれたら説明できるようにまでしておこう。「種の保存活動」をプランとする場合には、特に。

東北大会第2試合: 会津若松二中vs青葉中

2006-07-12 06:29:09 | ディベート
第2試合は、中学の部の主審にまわる。対戦は、会津若松二中vs青葉中

若松二中は、昨年の東北大会優勝校。同じ会津の河東中の卒業生とともに、そのメンバーが会津高校でもディベートを続けてくれているようである。ディベートの裾野の広がりを体現する話であり、うれしいことである。

一方、青葉中は石巻からの参加。石巻といえばは、かつて中学生のディベート大会が開催されるなど、ディベートが盛んなところ。大会の復活を願ってやまない。

さて、動物園論題である。

プランは、定番の「廃止して、動物を野生に返す」のほか、「種の保存は、廃止後もやり続ける」、「プランの一切を国の責任において行う」というもの

メリットは「1.動物のストレスからの解放」と「2.(地方の)経済的負担の削減」

デメリットは「1.種の保存ができなくなる(動物の救急病院的機能の逸失という側面を含む)」と「2.失業者の発生」

●まずメリットについてのコメント

メリット1: ストレス解放については、もう少し論証を深めて欲しかった。閉鎖空間にいるストレスで、動物に異常行動が発生するというところまでは論証できていたが、それが故に動物の生命が脅かされる可能性が「高い」というというところが、聞き手の想像に委ねられてしまっている。

また、惜しいことに、立論中で動物の権利という論点に言及があったのだが、論証が無い。質疑応答から察するに、論証しようと思えばできたようだが、肯定側はこれをしなかった。これがあれば、試合の結果はわからなくなっていたように思う分、誠に惜しい。

メリット2: 財政負担の軽減については、「廃止分によって、赤字分が助かる」という点までしか論証されていない。「その」ありがたみ、すなわち地方財政の苦しさの緩和についても説明が足りず、デメリットとして迫力を欠く。さらに、プランで野生復帰活動や種の保存活動を行った上でも、お金が浮くのかどうかは、まったく不明である。種の保存活動はまだしも、プランで新たに行う野生復帰活動に巨額を要するようならば、逆にデメリットとしても受取られる恐れすらある。

「国の責任において行う」というプランを活用して、「とりあえず地方は動物園運営(+プランで付帯的に行う諸活動)にかかる財政負担から解放されるのであって、その負担を地方から国に付け回すだけでも意味がある」という風に論ずることも可能ではある(だいぶ込み入った論旨だが)。しかし、それならそのように議論してもらわないと困る。

●次に、デメリットについてのコメント。

問題は、肯定側のプランにある【動物園の廃止後】に行う「種の保存のための活動」の実態が、よく分からないという点だ。

このプランは、デメリットとして予想される「動物園のもつ種の保存機能の逸失」に対抗することを目的として出したのは明らか。

しかし、

1.そもそも、どのような活動を指しているのか、すなわち実態上、何を行えというのか。
2.本当にそれが実行できるのか
3.実行できたとして、効果を発揮するのか

それぞれについて、説明がない場合、

「プランで種を保存するので、デメリットは成立しません」

と言われても、ジャッジは当惑するばかりである。

別の言い方をすれば、「プランの前と後」の描写に、もっと気を配って欲しいのである。

否定側は、プラン前にはあった動物園の「種の保存機能」が、プラン後には消失すると、とりあえず論証している。

ならば肯定側も、プラン後において、「種の保存活動を行う」というプランによって、「動物園の活動や機能のどこがどのように変化するのか、あるいは、しないのか」について、丁寧に説明して欲しいのである。

その点の説明を欠く今回の展開では、プランでは、デメリット1は防止できない恐れが大である、と判断せざるを得ない。

なお、デメリット2については、プランによって、園の運営に機能変化が起きる以上、リストラは不可避であると思われる。少なくとも、入場券販売や場内清掃、売店・レストラン等、集客・接客関連のスタッフは、不要になるだろう。動物のお世話担当の専門職は、種の保存機能のための再雇用があるかもしれないが、全員再雇用されるかはわからない。ということで、デメリットは、一定程度は成立すると思われる。

***

このように考えて、動物がかわいそうというレベルに留まるメリット1、発生過程、重要性ともに説明不足が残るメリット2をあわせて考えても、それなりのインパクトを伴っているデメリット1よりは小さい。これにデメリット2を考慮すれば、確実に、デメリットの方がメリットよりも大きい。

と、思われたので、私の一票は、否定側に行った。

(まだ、続きます)

東北大会第1試合: 会津高vs東北学院高

2006-07-11 00:46:44 | ディベート
一泊二日で、東北大会を見てきた。

関東派遣の8名の審判団の一員として、東京駅から新幹線に乗り込む。

仙台まで2時間ちょっとの旅。ホテル到着。

このホテルに泊めてもらえるなら、それだけでも仙台に来た価値がある。今回の優秀なるツアコン、「社長」さんに深甚なる感謝を捧げたい。

到着後、小休止して夕食を食べに出る。ここで北海道から岡山さん登場。フェリーで来仙とのこと。船旅もいいなぁ、とちょっと思う。

話題になった芯タンは、折悪しく品切れ。とはいえ1.5人前定食でも、十分に満足。その後、支部長との顔合わせ方々、軽く一献。11時にはホテルに引き上げる。

さて翌日。定刻に会場入り。運営マニュアルを見ると、5試合フルの登場。長い1日になりそうだ・・・

*****

第1試合 会津高 vs 東北学院高

昨年の全国代表校同士の対決。期待が持てる。

メリットは「地域主体の行政」。王道を行く議論である。議論の構成もなかなか良い。現行のシステムの欠陥も、ちゃんと論証している。実害も説明できている。聞いていて、安心できる立論だった。

こういうふうに立論を組むと、なかなか否定側は大変だぞと思っていたところに出てきたデメリットが、「国内対立」と「地方の人口流出」。

後者は、初見の印象でも、説明がもうちょいほしいなぁとの感は否めず、今後の改善を期待したいところ。

しかし、前者の出来は相当にいい。とりわけ、その可能性を論証するために採択した事例の選択の仕方、それに証拠資料、ともに良い。

丁半出そろったこの時点では、どちらが勝つのか、正直わからなかったほどだ。

否定側第1反駁。やや議論の質に玉石混交の印象はいなめないものの、「人がいなけりゃ、いい行政はできない」という、まったくおっしゃるとおりの議論もあって、否定側第1反駁が終わった時点では、

こりゃ、肯定1反はたいへんだぁ

と感じていた。正直、この試合、否定側が勝つか、とも思った。

さて、肯定側の会津高校。この第1反駁と第2反駁、この2人の力量の高さは、地区のみならず、昨年の全国大会でも広く知れ渡っているところ。後であらためて述べるが、今回の決勝戦のスピーチなど、昨年の全国大会に比べても、「凄み」を増していた。練達の大学生のレベルまで達していると、正直思う。

ところが、これが第1試合の怖さというものなのか。。。

この試合、2人とも、言葉数が多いわりに、キレがいまいち。重要でない箇所に時間を投入しすぎている。結果、重要なポイントが落ちていく。

・「沖縄の米軍再編問題」が、まるっきり置き去りにされているのはマズイ。立論の中で外交に関する分析をせっかく持っているのだから、それを転用して反論することができたはずなのに、それもしない。
・発生過程にチャレンジしている強い議論も落としてしまっている。かなりやばい。
・メリットの延ばしが長すぎる。そもそも、デメリットがある程度残っているこのような試合では、まずデメリットの返しからスピーチを始めるべきだった。
・さらに悪いことに、メリット・デメリットについての明示の比較がない。デメリットが生き残っている場合、ここで手をぬくと致命傷になりかねない。

仮定の話になるが、もし否定側が第2反駁でデメリットの再構築に時間をかけて説明できていたら(私なら、ジャッジに「あー、わかった、わかった。もう、そんなに言わなくてもいいから・・・」と言わしめるために、持ち時間の3分の2をその説明に費やしていたであろう。)、勝敗は間違いなく逆になっていた。

実際には、双方とも投票理由を明確に説明できないまま試合終了。メリット、デメリットともそれぞれ残り、

「ジャッジさん、どうぞご勝手にご判断下さい」

という、不満の残る試合の典型になってしまった。多数決の結果、メリット>デメリットが2名、メリット<デメリットが1名。2-1で、肯定側・会津高の辛勝。

実力校ですらこういうことが起きる。東北学院高は、大魚を逃した。

思い起こせば、この道州制論題。一発勝負の決勝トーナメントで、強豪校や優勝経験校が早い段階で消えていった。今年の全国大会も、そうなるのかもしれない。ふと、そう思った。

【教訓】肯定・否定とも、第2反駁は「自分のサイドにジャッジが投票すべき理由」を明確に述べよう。少なくとも終わり30秒は、メリット・デメリット比較に時間を割こう。

三回忌

2006-07-06 02:30:21 | 追憶
君の訃報に接したのが、一昨年の6月だから、先月で三回忌になる。

***

「僕にとって一番思い出の深いDBは、All KEIOでしたからね。先輩、こんなのがありましたよ。懐かしいでしょ?」

と笑いながら、成蹊大学で行われたNADE関東主催の大会のジャッジ控室で、汚い字でかかれたメモを渡してくれた。

書いた私すら忘れていた。いまとは違ってワープロのない頃、私がB5のレポート用紙に鉛筆でグリグリと書いた「セオリー解説メモ」。ハイポやCWが横行していた往時、ALL KEIOののプレパの一環として、持てる知識と経験を伝承しようと、必死になって書き残そうとしたんだった。

よくぞ、16年間も、そんな紙くず同然のものをとっておいてくれたものだ。あまりの懐かしさとうれしさに、涙をこらえるのが、実は大変だったんだぞ。

ALL KEIOで、君とチームを組んだのは、私が3年のときだったろうか、4年のときだったろうか。富坂や早稲田の木村セミナーハウスでのプレパ合宿は、実に楽しかった。

君と組めたのは、それっきりになってしまったな。全く、残念だ。

デイリーヨミウリの大会に君を誘ったときには、ハワイに留学中だったし、JBDFの例会に誘ったときも、不登校の生徒さんの面倒を見るために、君は奔走している最中だったし。

だいたい、君はナイスガイすぎるんだ。君の各方面での大活躍は耳にしていた。君の人柄のなせる業だということもよーくわかる。でもその活躍のしすぎがゆえに、君は倒れてしまった。倒れるどころか、あっさりとこの世を去ってしまった。

この大馬鹿野郎、何も死ぬことはないじゃないか。

「いつか、もう一度いっしょに組んで、ディベートの試合に出ましょう」

っていう約束は、まだ残ってるぞ。

だから、私がそっちに行ったら、その時こそ、チームを組んでディベートをしよう。対戦相手は、後藤哲典と相談して、そっちで決めておいてくれればいいから。今から、楽しみだ。

試合の服装は、紺のスリーピースのスーツに、臙脂色のネクタイだぞ。中コミ、ディベ外の君なら、それはわかってるよな?

***

深井智純君。享年36才。

その早すぎる死は、痛恨の極みである。

三回忌の今、あらためて衷心より、ご冥福をお祈り申し上げる。

【今日のBGM】 C.T.スミス「ルイ・ブルジョワの讃美歌による変奏曲」

2006-07-05 02:21:39 | ブラスバンド
演奏は、近畿大学。LegendaryⅡシリーズ。

例の「クラ/オーボエおよびラッパのための曲を集めたMD」の選曲も終わりが見えてきた。

検討の末、コラールの後のObソロとラッパによるフーガが印象的なこの曲を含めることとした。

この曲、前に述べた昨年の全国大会の精華女子の演奏も名演なのだが、今回の趣旨に照らしてみると、肝心のObソロがいっぱい、いっぱいで、余裕がない。なので、こちらを採用することにした。

あらためてこのCDを見てみると、【100%】私の好みに合致した選曲になっている。曰く:

 1.黙示録(R.ジェイガー)
 2.アンティフォナーレ(V.ネリベル)
 3.大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)
 4.ヒロイック・サガ(R.ジェイガー)
 5.ルイ・ブルジョワの讃美歌による変奏曲(C.T.スミス)
 6.交響詩「ローマの祭」より「主顕祭」(O.レスピーギ)
 7.「カルミナ・ブラーナ」より(C.オルフ)
 8.バレエ音楽「シバの女王ベルキス」(O.レスピーギ)

ここまでテイストが一致する人がいるかと思うと、それはそれで嬉しい。

ちなみに、この曲を聴いていたら、家人が

「このメロディー、教会の礼拝のときによく聴くわ~」

などと、のたまう。ちょっと、びっくり。

さて、ようやく終局が見えてきた。あと一曲で、ようやく完成だ。