こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『黒い雨』を読んでいる

2006年08月06日 | 読書ノート
黒い雨

新潮社

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 2006年8月6日8時15分。黙祷を済ませてから,井伏鱒二の『黒い雨』を読み始めた。郷土作家による力作。読まなければ,という脅迫観念にとらわれながらも,長い間,読めずにいた本である。

 奇しくも,先月末家族で原爆資料館を訪れた。36年ぶり。広島に職を得て24年。それまで一度も訪れたことのなかった施設である。 
 この施設を初めて訪れたのは11歳の時だった。小学校の見学旅行。東洋工業(マツダ)で自動車の組み立て工程を見たあと,この資料館に足を踏み入れた。

 被爆でひどい火傷を負った写真が胸に刺ささった。あまりの衝撃に声がでなかった。脳裏に焼きついた。帰宅後,夕飯がのどに通らなかった。
 母に当時のことを聞いた。女学校に通う母。広島市内から遠く離れた芸予諸島,大崎上島の校庭からも”きのこ雲”が見えたという。現実が突き刺さった。

 爾来,資料館はある意味トラウマとなった。だから,四半世紀もの間,目と鼻の先にありながらも,そのドアを開けることができなかった。

 そして,36年ぶりに訪れた資料館。『黒い雨』が,投下直後,爆発から20~30分後にもたらされた原爆雨であることを知った。『黒い雨』が井伏鱒二の作品であることは知っていたし,黒い雨が放射能を帯びた危険な雨であることくらいは察しがついていたけれど,恥ずかしいことに,爆発を起因として,その直後に広島市内及びその郊外に降り注いだものとは知らなかった。

 黒い雨のパネルを見たこの日。僕は,この8月6日から『黒い雨』を読もうと決めた。(ちなみに,昨年の今頃は『はだしのゲン』を読んでいた。  6巻中5巻までを読んだ。最後の1巻は読まずに残してある。)
 偶然の悪戯か,私は今,主人公,閑間矢須子(しずまやすこ)が勤務していた日本繊維株式会社古市工場のあった街に住んでいる。疎開準備で運良く被爆を逃れた矢須子を襲った黒い雨。原爆症で彼女の人生は砕けれる。

 助けを求めながらも助けられず果てた多くの命に合掌!

 61年後を生きる今の私には,犠牲に会われた皆さんの苦しみ・悔しさ・無念さを救済する手立てがありませんが,『黒い雨』を読んで,その苦しみ・悔しさ・無念さの一端を少しでも,ほんの少しでも,私の脳裏に刻み付けておきたいと思います。できる限りの想像力で記憶に焼付け忘れないこと。広島市民の務めとして・・・。未来の地球市民の義務として・・・。



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1 コメント

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おひさしぶりです (bellno)
2006-08-10 22:37:52
お元気でしたか。ブログの更新がないのは,お忙しい証拠と,勝手解釈してました。



広島県に生まれ育ったせいか,8/6は忘れてはいけない特別なイメージがあったが,学生時代,広島県を離れて全国各地の子と話したとき,あまりにも8/6に対するギャップがあることにショックを受けたのを思い出しました。

隣の山口県でさえも,違いがあった。



原爆投下の日や時間を言えない子どもが増えているというニュースに再びショックを受けた。



原爆が投下され,罪の無い多くの命が犠牲になったことだけは忘れてはいけない気がします。人として・・・。

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