最大の問題は「偽情報」 ワクチンをめぐる在米研究者の警告

2021年03月01日 12時26分10秒 | 医科・歯科・介護
イチオシ 國枝すみれ 
 
 毎日新聞 2021/2/14 07:00(最終更新 2/22 20:30) 
 
米テキサス州で行われた新型コロナウイルス感染症のワクチン接種=2021年1月21日、AP
 
 新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が日本でも始まった。専門家が恐れているのは、誤った情報に基づく誤解や副反応への恐れから接種を避ける人が増えることだ。米国立研究機関のウイルス研究者で「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」を出版した峰宗太郎氏(39)は「一般人から科学者までが不確実・不正確な情報を流している」と警告する。
海外取材のため、これまでも多くのワクチンを打ってきた記者が峰氏にさまざまな疑問をぶつけた。【國枝すみれ/統合デジタル取材センター】
 
 「コロナのワクチン打ったほうがいいのかな?」。80代の義母から電話があった。副反応が怖いという。「打つ利益の方がリスクより大きいと思う」と即答したものの、胸がちくりとする。義母は記者なら誰でも情報通と思いこんでいるが、私はワクチンについては素人だ。メディア向け勉強会で率直な発言をしていた峰氏が印象に残っていたので、さっそくオンライン取材を申し込んだ。
 
「人間の自立性と道徳性だけに頼れない」
 
 「本に大規模な人体実験って書いてありますが……」。恐る恐る峰氏の新著の内容に触れると、峰氏は苦笑した。「無理やり実験台にされるわけじゃありません。新技術といっても20年以上、基礎研究は行われていたものです。
やってみなければ分からない部分はもちろんあります。しかし、コロナの時代に一歩前に進むために必要な『社会的実験』なんです」
 
 峰氏は感染拡大防止を「人間の自律性と道徳性」だけに頼って達成するのは無理と考えている。「これだけ自粛を呼びかけても感染拡大するのは、人同士が接触しているからです。感染防止策と同時に科学の力、つまり、ワクチンの普及で立ち向かうしかないのです」
 
1億人が接種して大きな問題なし
 
 そこで気になるのは安全性、副反応だ。
 
 日本政府が供給契約を結ぶワクチンは、米製薬大手のファイザーとモデルナ、英アストラゼネカが開発したワクチンだ。ファイザーとモデルナは新型コロナウイルスの遺伝子の一部を人工的に合成したメッセンジャーRNA(mRNA)を投与する新技術を使う。
ヒトの細胞にmRNAを注入することで新型コロナウイルスが持つたんぱく質を作らせ、人体の免疫系を刺激する方法だ。一方、アストラゼネカ製は「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれ、自己複製能力と増殖力を失わせた「運び屋」のウイルスに新型コロナウイルスの遺伝子の一部を組み込み、それを投与する。エボラ出血熱のワクチンとして使用された事例などがあるだけで、こちらも実績はわずかだ。
 
 世界ではこれまで1億人近くが接種を受けたが、大きな問題は起きていないと峰氏は言う。調査中のケースが1件だけある。米国の医師が接種後、急性免疫性血小板減少症(ITP)を発症し、脳出血で死亡した。ITPはインフルエンザや風疹のワクチンでも非常にまれな確率で起こりうる副反応だ。新型コロナワクチンとの因果関係は不明で、FDA(米食品医薬品局)が調査しているのだという。米国で接種されているのはmRNA方式のワクチンだ。
 
 「mRNAワクチンで未知の副反応が起こる可能性は非常に低いと思います。RNAは不安定でもろい物質で、人体にそれを分解する酵素もある。動物実験でも体内に打ち込んだmRNAは最長10日くらいで消えてしまいます」
 
 一方、ベクターワクチンは、運び屋として使う風邪ウイルスの一種、アデノウイルスに対する免疫反応が起きる可能性はあるという。
 
 
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