今夜はうれしさのあまり相当飲んだ。安いチリ産のワインなのだが、まだかなり酔っている。いい勝ち方だった。柴崎、山村
梅鉢のような若い選手が入ったアントラーズが、次第に往年のアントラーズらしい戦い方を身につけはじめたと感じる一戦だっ
たと思う。先週のFC東京戦とはまた違った意味での喜びが大きい試合だった。
前半のセレッソの攻撃陣は見事だった。ケンペス、キム・ボギョン、清武、ブランキーニョの動きの連動性が素晴らしく、個々
の技術の高さと寄せの早さは、今ままで戦ったリーグ戦の相手の中では最高だった。これに山口と扇原が加わったセレッソ
のスピードと組み立てのうまさに、アントラーズのDF陣はついていけない感じだった。二得点は、どちらもキム・ボギョン
だったが、見ていてこのままだと後半にもニ・三点取られそうに感じたほど、セレッソの攻撃は鋭かった。
梅鉢と山村も戸惑ったのか、プレーに安定性をやや欠いて、早々に梅鉢を柴崎に代えた。あまりに早い交替で驚いたし、梅
鉢もこの早い交替は悔しかっただろうが、柴崎の広い視野のゲーム全体を見るパスが、アントラーズに落ち着きを与えた面は
大きかったと思う。要するにこういう相手が自分たちの一番いい面を出している時に、どのようにそこを抑え、次第に自分たち
のリズムに持っていくかが大切なのだ。弱いチームだったら、後半もセレッソに引っ掻き回されて、三点くらい取られていたと
思う。そうならなかったのは、今の順位は下とは言っても、アントラーズが底力を持ったチームであり、次第に試合巧者と呼ば
れてきたような面を出し始めたからだと思う。
ジョルジーニョは後半、青木からドゥトラに代えて、トップ下に入れてダイヤモンド型にシフトを代えた。青木はそれほど悪
いとは思わなかったが、二点以上取るためには攻撃的な選手を入れるのは当然だ。ジョルジーニョはオリヴェイラに比べて、か
なり早く選手交代を決断するので、個人的には好きだ。ドゥトラの交替はゲームのリズムを変えて、いつの間にかセレッソの
鋭い攻撃が見られなくなった。アントラーズは二点リードされても焦った感じがなく、試合全体を冷静に見ている感じが良かっ
た。アントラーズのいい時というのは、そういう試合運びをする。
ドゥトラがうまい一点目のシュートを決め、小笠原のふんばりから、ドゥトラが右サイドの突破して興梠が二点目を綺麗に決めたあたりで
は、試合のペースは完全にアントラーズが握っていた。セレッソの前半の素晴らしい攻撃は、90分続くことはないと思ったが、
ドゥトラと柴崎が試合のリズムを変え、セレッソの素晴らしい攻撃陣が機能しなくなっていった。それはセレッソが前半、
飛ばしすぎたというよりも、アントラーズが何かじっと待ちながら次第に自分たちのペースに引きずり込んでいった印象を受けた。
やはりその精神的な支柱になっているのは小笠原だと思う。
見ていて昔のアントラーズみたいだなと思ったのは、あの状況で全員が非常に落ち着いていて、自分たちの形にうまく持っ
ていく余裕みたいなものをどこかに感じたことだ。もちろん若い選手が多いので最強時代のアントラーズではないのだが、次第
にアントラーズらしいしぶとい戦い方を見せて、自分たちのサッカーへの自信を感じさせるようになったきた。
もう数試合見ないと何とも言えないが、若手がアントラーズのスピリットを吸収し始めていることが、はっきり見えるように
なれば素晴らしいことだ。
途中でドゥトラとキム・ボギョンのプレーを巡って、あわや乱闘騒ぎになりかねない事態があり、そのあと一時的にペースが
セレッソに行きかけたのだが、アントラーズは落ち着きをすぐに取り戻して、自分たちのペースにしてしまった。
西のパスからの遠藤の三点目はその流れから生まれた。遠藤としては狙って打ったというより、来たパスを思い切って蹴ったら
あそこに飛んでいったという感じだろうが、ああいうシュートが入ることが大事なのだ。勝てないときというのは、ああいうシ
ュートがクロスバーに当たってしまうものだ。
ジョルジーニョ監督も初めてインタビューで素晴らしい笑顔を見せた。今まで思うような結果が出せなくて苦しかっただろう
が、次第に選手の個性と持ち味を把握して、うまい采配を見せるようになったと思う。遠藤の得点も興梠からジューニーニョに
思い切って変えたことが伏線になっていたと思う。
単に二点差をひっくり返して勝ったというだけではなく、試合運びや試合全体を把握するやり方に、往年のアントラーズらし
さのようなものが見られたことがとてもうれしかった。
次のガンバ戦にも今日のような戦い方ができるなら、アントラーズが上昇していく日は遠くないと思う。
山村 「今日の勝ちは何かがありましたね」
柴崎 「そだね。アントラーズのサッカーが何かが少し見えたような気がした」
山村 「セレッソの攻撃が鋭すぎて・・・・」
柴崎 「清武も良かったし、正直前半はやられるかと思った」
山村 「梅鉢君、悔しそうだった」
柴崎 「まあ・・・・監督にも見えていたんだな」
山村 「え!何が?」
柴崎 「川澄さんがスタンドに来ていたのが」
山村 「あり得ないっすよ!また得意の妄想ですか」
柴崎 「いや、僕にははっきり彼女の声が聞こえたんだ。もっと視野を広く、パスを散らせって声が」
山村 「確かに負けてる割には落ち着いて見えましたね」
柴崎 「彼女の魂の手触りを感じながら走っていたんだ・・・・」
山村 「え、川澄さん、もう幽霊になったんですか?」
柴崎 「呼べばやって来る、幽霊みたいなもんだよ」
遠藤が笑いながらやって来る
山村 「遠藤さん、ナイスシュート!」
遠藤 「なんか女の声で、思い切り蹴りこめばいいのよ!って聞こえたから・・・」
山村 「遠藤さんまで・・・・・」
遠藤 「ズバッといいとこに飛んでいってくれたね」
山村 「東北の人って、霊の声が女の声で聞こえるんだ・・・・・」
柴崎 「山村さんもそうなったら鬼に金棒ですよ」
遠藤 「山村君の金棒はたいしたことないから・・・」
山村 「え!何で知ってるんですか?」
イギリス生まれの、マイケル・ナイマンはもともとは、「最小限の表現しか持たない」という意味の、ミニマル・ミュージッ
クの大家だった。「1-100」という数台のピアノのための作品は、従来の音楽的な制約から離れて、音の減衰を扱った実験
的な音楽だが、次第にに映画音楽や舞台の音楽などで活躍するようになった。
ジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」は、ニュージーランドを舞台にした、ピアノを言葉の代わりにする女性
の激しい愛の物語だが、マイケル・ナイマンの音楽は反復の中に、高揚する感情を表現した美しい音楽だ。
アントラーズらしさが戻りつつあります。まだまだ油断は出来ませんが、いっしょに応援していきましょう。
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