深夜、うつらうつらと夢を見ていた。
地球温暖化の根本原因は地球人口の大幅な過剰にあるということから、国連の秘密会合で大幅な人口削減計画とその実行について話しあわれたらしい。現在のペースで少々の省エネルギーをやったところで、地球上の人口をこのままにすれば、現在の地球温暖化の急速な進行を食い止めることは不可能である。今直ちに産業革命以前の人口に減じたとしても、既に排出蓄積した炭酸ガスのせいで、当面の温暖化の進行を食い止めることは出来ない。このような議論を経て、日本の適正人口は3千万人ということに決定したそうだ。何とわが国だけで1億人近い人口を削減しなければならないということとなった。
わが国の人口削減計画は直ちに実行に移された。暴動や社会不安を引き起こさず、粛々と1億人を抹殺するということだ。このことについて、何の報道や予告もないまま、秘密裏に着手された。抹殺対象となる人々の機会の平等を保障するために、行動計画の対象は無作為に抽出された。世界中のすべての国で、やり方は異なるが同様のことが行われているとのことであった。
夢は続く。
自分はある大きなビルのオフィスで仕事をしていた。建物の内部に突然の緊張と殺気が走った。ビルのすべての出入り口が閉じられたことが分かった。屈強な実行部隊の隊員数名が殺人用の機材を持って廊下を走り抜けて行った。ビルの中に居るものは全員、社会的な地位などに関係なくすべて平等に死ななければならないことになったのだ。
自分は逃げた。逃げると言っても、どこへも行くところがない。結局、一つの小さな部屋に逃げ込んで、内側から鍵をかけて息を潜めるだけのことであった。其処には2名の同僚が既に隠れていた。実行部隊の隊員は、各部屋を順に巡回し抹殺の処置を行っているようであった。遠くから物音が段々と近づいてくるので分った。やがて我々の隠れている部屋の前で足音が止まった。鍵の掛かったドアの向うで淡々と作業をしている。人の声は一切なかった。内部の自分を含めた3人は自然に身を寄せ合った。
市民無差別殺害の手順は次のようのものであった。先ず最初にX線が照射された。いわゆるレントゲン撮影である。部屋の内部に人がいるかどうかの確認のためらしい。我々3名の位置がドアの向こう側で精細に検知され特定された模様だ。続いて、抹殺対象の所在場所に強力な放射線が数回にわたって照射された。自分の身体の中を放射線が通過していく。実感はないが、ジーという放射線源の密閉箱のフタの開閉音が聞こえてくるのでそれとなくわかる。3名は少しでも直接の被爆を避けようとしてお互いに後ろへ回り込んだ。3人の陣取り合戦は1分ほどで終わったが、3人とも何事もなかったように生きていた。実行部隊は次の部屋へ行って、同じ処置をしているようであった。
次の瞬間、自分はビルの外を歩いていた。何だ、生きているではないかと思った。しかし、それは甘い考えであった。むしょうに喉が渇く。水が飲みたい。胸がムカムカする。吐きそうである。自分は、ふらふらしながら自宅まで帰った。しかしながら、自分の命は二日しか持たなかった。
ビルの中で多くの人間を殺害すれば、その後の死体の処置が大変である。そんな予算も手数もない。それよりも、対象者は自力で自宅まで帰ってもらって、それぞれ家族に看取られて死んでいくのがよい。その後の葬式を経て行われる死体の処理も、それぞれの家庭の負担できちんと行われる。何ということか、そこまでの政府の計画者の深謀遠慮が働いているのだ。
二日後に自分は死んだ。死んだ自分は地球上には居ない。人はいずれ死ぬのだ。全員が死ぬ。死というもの何も怖いものではない。本人にとっては至極気楽なものであった。
このあたりで目が覚めた。夢でよかった。そして、ぼうっとしながら考え続けた。死ぬということ。それは仕方のないことだ。一人に一回の死が平等に与えられている。何も自分だけのことではない。騒ぐことはない。自分にしても、死んでしまえば、その後は何も出来ないという悔しさが残るが、それを思う自分が既に存在しないのであれば、まあそれでも良い。しかし、他ならぬ自分が死ぬということ。やはり尋常ではない。自分は良くても、周囲の者の悲しみは避けられない。妻や家族やこれまで付き合ってくれた友人たちとの永劫の別れとなるのだ。死の一番の問題は其処にある。
結論として、死と言うもの、やはり、周囲の人々との別れというものが一番恐ろしいことなのであろうと、布団の中で暫し考えている今日の寝覚めであった。


地球温暖化の根本原因は地球人口の大幅な過剰にあるということから、国連の秘密会合で大幅な人口削減計画とその実行について話しあわれたらしい。現在のペースで少々の省エネルギーをやったところで、地球上の人口をこのままにすれば、現在の地球温暖化の急速な進行を食い止めることは不可能である。今直ちに産業革命以前の人口に減じたとしても、既に排出蓄積した炭酸ガスのせいで、当面の温暖化の進行を食い止めることは出来ない。このような議論を経て、日本の適正人口は3千万人ということに決定したそうだ。何とわが国だけで1億人近い人口を削減しなければならないということとなった。
わが国の人口削減計画は直ちに実行に移された。暴動や社会不安を引き起こさず、粛々と1億人を抹殺するということだ。このことについて、何の報道や予告もないまま、秘密裏に着手された。抹殺対象となる人々の機会の平等を保障するために、行動計画の対象は無作為に抽出された。世界中のすべての国で、やり方は異なるが同様のことが行われているとのことであった。
夢は続く。
自分はある大きなビルのオフィスで仕事をしていた。建物の内部に突然の緊張と殺気が走った。ビルのすべての出入り口が閉じられたことが分かった。屈強な実行部隊の隊員数名が殺人用の機材を持って廊下を走り抜けて行った。ビルの中に居るものは全員、社会的な地位などに関係なくすべて平等に死ななければならないことになったのだ。
自分は逃げた。逃げると言っても、どこへも行くところがない。結局、一つの小さな部屋に逃げ込んで、内側から鍵をかけて息を潜めるだけのことであった。其処には2名の同僚が既に隠れていた。実行部隊の隊員は、各部屋を順に巡回し抹殺の処置を行っているようであった。遠くから物音が段々と近づいてくるので分った。やがて我々の隠れている部屋の前で足音が止まった。鍵の掛かったドアの向うで淡々と作業をしている。人の声は一切なかった。内部の自分を含めた3人は自然に身を寄せ合った。
市民無差別殺害の手順は次のようのものであった。先ず最初にX線が照射された。いわゆるレントゲン撮影である。部屋の内部に人がいるかどうかの確認のためらしい。我々3名の位置がドアの向こう側で精細に検知され特定された模様だ。続いて、抹殺対象の所在場所に強力な放射線が数回にわたって照射された。自分の身体の中を放射線が通過していく。実感はないが、ジーという放射線源の密閉箱のフタの開閉音が聞こえてくるのでそれとなくわかる。3名は少しでも直接の被爆を避けようとしてお互いに後ろへ回り込んだ。3人の陣取り合戦は1分ほどで終わったが、3人とも何事もなかったように生きていた。実行部隊は次の部屋へ行って、同じ処置をしているようであった。
次の瞬間、自分はビルの外を歩いていた。何だ、生きているではないかと思った。しかし、それは甘い考えであった。むしょうに喉が渇く。水が飲みたい。胸がムカムカする。吐きそうである。自分は、ふらふらしながら自宅まで帰った。しかしながら、自分の命は二日しか持たなかった。
ビルの中で多くの人間を殺害すれば、その後の死体の処置が大変である。そんな予算も手数もない。それよりも、対象者は自力で自宅まで帰ってもらって、それぞれ家族に看取られて死んでいくのがよい。その後の葬式を経て行われる死体の処理も、それぞれの家庭の負担できちんと行われる。何ということか、そこまでの政府の計画者の深謀遠慮が働いているのだ。
二日後に自分は死んだ。死んだ自分は地球上には居ない。人はいずれ死ぬのだ。全員が死ぬ。死というもの何も怖いものではない。本人にとっては至極気楽なものであった。
このあたりで目が覚めた。夢でよかった。そして、ぼうっとしながら考え続けた。死ぬということ。それは仕方のないことだ。一人に一回の死が平等に与えられている。何も自分だけのことではない。騒ぐことはない。自分にしても、死んでしまえば、その後は何も出来ないという悔しさが残るが、それを思う自分が既に存在しないのであれば、まあそれでも良い。しかし、他ならぬ自分が死ぬということ。やはり尋常ではない。自分は良くても、周囲の者の悲しみは避けられない。妻や家族やこれまで付き合ってくれた友人たちとの永劫の別れとなるのだ。死の一番の問題は其処にある。
結論として、死と言うもの、やはり、周囲の人々との別れというものが一番恐ろしいことなのであろうと、布団の中で暫し考えている今日の寝覚めであった。


