ウイングロー

2005年10月31日 | 航空祭

今日は新しい飛行技術への挑戦である。その名は

=ウイングロー=

この方法は横風を受けながら着陸する時、飛行機が流されないよう、風上側の翼を下げて進入する技術。

専門的な話になるが、ウイングローとは、偏流を相殺して前後軸と滑走路中心線とを一致させることで、すべったままの状態で滑走路の中心線上に進入するという、かなり高度な操縦操作のことである。

高度3500フィートの上空で水平飛行の状態から教官が操縦輪を右に切って、機体を右に傾ける。通常なら同じ右方向へラダーを踏み込んで旋回させるところを、逆の左足を踏み込んでみるよう指示された。

目標を遠くの山に合わせラダーを踏み込んでいくと、右へは旋回せずに機体は直進する。

教官が機体の傾きを少しずつ増やしているようだが、私は目標である前方の山に目を見据えて機首を合わせようと、ラダーの踏み込み操作だけに必死で専念する。

どんどん、どんどん力を入れて目一杯のところでしまいには機首を山に合わせられなくなった。 そこがセスナ172の限界なのだと教わる。最終的にラダーを踏み込んだ位置は目一杯で、足に感じる風圧はかなりなものだった。

なるほど、これがウイングローのラダーの使い方かと体験し、うれしくなった。 飛行機の操縦とは、こうしてさまざまな技術が結集して構成されていくのだということを実際の訓練をとおして学んだ。

飛行機の操縦に限らず熟練者の持つ磨かれた技術は時に感動的でさえある。 高校生のとき、英語教師が授業の一部として『幸せの黄色いハンカチ』という曲のカセットを教室に持ち込んではしばしばその曲を流した。

たしか『ドーン』というグループの曲だったと思う。 今思うと生徒の授業としてというよりも、先生自身が楽しむために流していたような気がしないでもない。それでも繰り返し繰り返し聞いているうちにその歌が好きになり、覚えてしまった。

I,m coming home I,ve done my time ~ If you recieved my letter・・

卒業して約30年という月日が経過しているので歌詞は怪しいがそのメロディーは忘れていない

着陸の時、滑走路左横に見えるPAPIの赤白ランプを見ていた時、不思議なことに突然、この歌のメロディーがどこからともなく聞こえてきた。

一航空ファンの私がフライトシュミレターによる仮想の世界で飛んでいたのは今からちょうど1年前。ジョイスティックから本物の操縦輪に持ち替え、曲がりなりにも飛行機をまっすぐに飛ばせるようになったのは

 自分に厳しく訓練生には優しい

わが恩師・教官のおかげである。 そう、今日はその赤白ランプがさしずめ『幸せの赤白ハンカチ』のように見え、最高にハッピーでハイな気分になれた不思議な一日だった。

ちょうど節目となる訓練10日目、ハイハイからやっとつかまり立ちくらいの時期へとさしかかった私の訓練日記に刻まれた今日のフライトは、一緒に飛んだ訓練生Aさんと私と教官の3人で大空の魅力を目一杯楽しんだ秋の思い出として残る

 とても感慨深い日

になるに違いない

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メモリアルフライト・訓練9日目

2005年10月23日 | 航空祭

暑過ぎた夏もようやく終わり、ようやく秋らしい天気に・・と思っていた矢先、早くも季節外れの寒波による強風が吹き荒れた昨日の土曜日。日曜は晴れてくれ!と願わずにはいられなかった

涼しさを通り越し、寒さを感じるほどの朝夕の冷たい空気と、めっきり遅くなった夜明けとが、晩秋へと移り行く季節の変わり目をそれとなく告げていた。

朝起きてみると、夜半に音を立てて吹き荒れていた寒風はすっかりおさまり、雲の量も減っていた。やったー!と心の中で叫びながら、いてもたってもいられず車に乗り込み空港へ。 いろんな意味でとても楽しみにしていた今日のフライト。

 まるで遠足前の子供

のようにソワソワしていた昨夜の自分を思い出し、思わず笑いがこみ上げる

今日は県東部のリアス式海岸を見ながら海上へ出て、その海上でアラウンドパイロンと呼ばれる旋回訓練を行った後、3000m滑走路を持つ大分空港へタッチアンドゴー訓練に行く計画だ。

やや風が強かったものの、視程40Km以上で水平線バッチリという絶好のフライト日和となった。アラウンドパイロンとは通常の旋回訓練から一歩進んだ訓練で、眼下に目標を設定しその周りに円を描くように飛行し旋回の技量を磨く訓練だ。

イカリを降ろし操業中の漁船を目標に見立て、風下側と風上側でバンクを深くしたり浅くしたりしながら旋回飛行する。しかしいざやってみれば風下側では大きく風に流され、まったく形にはならない。

海上でのこの訓練を2回ほど繰り返した後、方位を西に向け、続いて大分空港南西側から所定のポイントを経て、着陸進入を試みる。 しかし状況は滑走路方位10度に対し、ほぼ左真横である300度から15ノットの風。訓練生にはとてもじゃないが手におえない横風。

しかし、だからといってまったく教官任せでは訓練にならない。 機首を左に向けたまま降下中の機体は左横からの風と釣り合って、滑走路の中心線に向かって真っ直ぐに降下していく。カニの横ばいに似ている事からクラブ飛行と呼ばれるこの飛行技術を操縦席で目の当たりにした私は、実は

 

すごく感動していた

 

進入~接地までの操作のほとんどはもちろん教官に頼りっきりの操縦だが、自分としてはその飛行感覚(カニの横ばい)を経験できただけでも大いなる収穫だった。

セスナ172の横風限界ギリギリでの教官の見事な操縦技術。凄いとしかいいようがない

秋たけなわのこの時期、澄みきった空気の中で上空へ上がって地上を見下ろすと、日常生活でのいろんなわずらわしさや心配事などがとても

ちっぽけなことのように

思えてくる。 秋の澄み切った大気の中を飛ぶってほんとに気持ちがいい。 この素晴らしい大空の世界をこれからも楽しんでいきたい。今日のフライトは私にとって忘れられない素晴らしい

 

 メモリアルフライト

 

となった。

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翼よあれが大分の灯だ!

2005年10月12日 | 航空祭

念願だったセスナ機の操縦訓練を始めて8ケ月という日が過ぎました。1年にも満たない短い期間ながら、振り返ってみると一回ごとのフライトの様子がまるで走馬灯のように頭の中を駆け巡っていきます。

 教官!

と呼べる人にシゴかれながら、手に汗握るという光景もまた自分の希望するところでした。

私にとって飛行機の操縦桿を握って空を飛ぶということは夢のまた夢だった。物心ついた時からパイロットになりたいという気持ちをずっと抱き続けてきたことと

最後まで希望を捨てなかったこと

が、セスナ機の操縦をするようになった原動力となったと言えるかもしれません。

実際に飛行機の操縦をして感じたことは飛行機って、なんて素直な乗り物なんだろう、と実感したいうことに尽きます。

パワーを入れれば機体は上昇するし絞れば降下する。操縦輪を右に回せばすっと右へ傾く。 航空力学的には当たり前のことであっても、目に見えない空気を相手にし、飛行機と一体となって飛ぶところにロマンを感じ、感動を覚えるのかもしれません。

印象的だった映画『パールハーバー』の1シーンをご紹介しましょう。身体検査で視力検査に落ちかけた戦闘機乗りレイフは

飛行機と一体になって飛ぶんだ!

俺は優秀なパイロットだ!俺を飛ばせてくれ、お願いだ! とナースに訴えたあのシーンがとても印象的でした。

 

一つ実現したい夢があります。それはナイトフライト。それが可能となるのはパイロットの特権でしょう。

上空から見下ろした夜景は、地上を走る車のヘッドライトやテールレンズがつながって見え、それはそれは見事なんだそうです。 そしてライトアップされた地元大分空港(国東半島武蔵町)のランウェイを見ながらチャールズリンドバーグのように、こう叫んでみたい・・

翼よあれが大分の灯だ

と・・・

 

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シーリング・・・訓練8日目

2005年10月10日 | 航空祭
ただ 一度だけの たわむれだと 知っていたわ もう会えないこと 知ってたけど 許したのよ そうよ愛はひとときの =途中略= シーリング ウォーウォーウォー シーリング ウォーウォーウォー シーリング 泣かないわ

私の好きなハイファイセットの『フィーリング』の一部替え歌です。シーリングとは航空専門用語ですが、上空に上がったら予想外に雲がべったり(シーリング)で、今日はその下を這って飛んできたもので、ついついこんな替え歌が飛び出ました・・

今日は訓練半分、遊覧半分のフライトでした。離陸を振り返ってみると前回のフライト同様、右ラダーが足りずフラフラッと離陸してしまいました。なかなか主人の言うことを聞いてくれない右足です

技量は一日にしてならず・・いっこうに上達しない操縦技術に歯がゆさを感じながら、しかしその一方では空をむしょうに飛びたくて・・

今日は後席に私の友人Aさんを乗せて飛びました。最初に目指すはAさん宅。家の近くの大きな橋を目指し一直線。教官がすぐに見つけてくれました。まもなく家も無事見つかり、教官の操縦で家の上空をグルグル旋回。二人して大興奮でした

次に目指すは、今や全国的に有名になった湯布院上空へ。地上からは見慣れた景色でも上空から見下ろすとまた違った風情というかとっても新鮮です。教官に操縦を代わってもらい
金鱗湖上空へ。

やっぱり空は最高です
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