
今日の訓練科目は45度バンクの急旋回。30度バンクの旋回訓練をした後、水平儀を見ながらバンク角を45度に合わせる。すると・・・
機体は真横に???
初めて経験した45度のバンクは、自分の感覚ではほとんど真横になっているくらいの感じだった。教官から高度が下がっている、速度が落ちている、ボールがとんでいる、と次々に指摘されるが頭のなかはまたもや飽和状態。
さらに30度バンクではほとんど感じなかったG(重力加速度)が全身、特に頭にかかってくるため、それでなくても上空に上がり、低下している思考能力と判断力とをさらに低下させていく。
バンク角が深まるにつれて失速への危険も同時に高まっていくはずだ。自分のへたな操縦でスピンに入れてしまう可能性だってあるんじゃないか・・・まったく余裕はないくせに、なぜかふとそんなことが頭をよぎる。
教官はこの道一筋に歩んできた生っ粋のパイロットだ。総飛行時間はなんと1万2千時間を越えているという。
私みたいな超ど素人からすれば文字通りそれこそ雲の上の人だというのに、すこしも偉そうなそぶりは見せず、丁寧に指導してくれるありがたい存在だ。
一応、脳波の検査をパスして訓練許可書を手にしてきているとはいえ、気圧の低い上空に上がって、訓練生が100%予想外の操作をしないという保証はない。 飛行機の場合は高速で飛んでいるわけだからちよっとした油断が命取りになりかねない。
訓練生が気づかないうちにしだいに高度が下がっていく状況でも、指示はするがギリギリまで手を出そうとはしない。車の教習ならせいぜい路肩のガードレールにでもぶつけるくらいで済むかもしれないが、飛行機だとそうはいかない。
飛行機の教官となれば、いざという時の心構えも常にできていなければならないのだと思う。 さて今度は失速の訓練だ。パワーをアイドルにして、高度を下げないよう操縦桿を引きながら失速を待つ。速度計の数字がどんどん減っていく。そして・・・失速警報ブザーが鳴った直後に、機首がガクーッと下がる。
失速だ!
すかさずフルパワーにして回復操作を。 FLT前に教官から今日は失速をやります。と聞いて実は内心ビビッていた・・失敗したらそのまま墜落するんじゃないか・・普通に飛ばすのさえままならない技量なのに?大丈夫???
普通に飛ばすのがままならない技量だからこそ、失速回復の訓練をやっておかなければならないのだが、恐怖心があったのも事実である。 航空身体検査にやっとの思いでパス出来たことも嬉しかったが、なんといっても私の
最大の幸運
は、経験豊かなうえなにより飛行機を愛し、空を飛ぶことが大好きなこんな教官に出会えたことだと思う。
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