小松・木場潟でスマート農業 太陽の光と熱で温室栽培
県内で、太陽エネルギーを農業に利用する取り組みが本格化する。焼却炉メーカーのア クトリー(白山市)と東大先端科学技術研究センター、県工業試験場が、共同開発した新 たな太陽発電システムを使い、野菜を温室栽培する全国初の実証実験を小松市の木場潟で 開始した。暖房に重油を使う従来の温室栽培よりも光熱費、管理の手間が減り、収穫でき る期間は長くなる。県は「石川発のスマート農業」(産業政策課)として事業化を支援す る。
事業は昨年10月、県から東大先端研との共同研究支援の第1号に採択され、研究が進 められてきた。
新たな発電システムは、太陽光だけではなく熱も利用できるのが特長。従来の太陽光発 電では日射量が強すぎるとかえって発電量が落ちるが、県工試などが熱エネルギーを電気 エネルギーに直接変換する装置を開発したことで、「邪魔者」だった熱を活用した効率的 な発電が可能になった。
実証実験はメガソーラー発電を手掛けるウイビリーブ(小松市)とJA小松市、本田農 園(同市)が協力して先月初旬にスタート。発電装置横に建てられた45平方メートルの 温室にトマトの苗木約50本が植えられた。
通常、県内でトマトを温室栽培する場合よりも3週間ほど早い植栽だが、苗木はすでに 高さ1メートルほどに育ち、枝には青いトマトが鈴なりに実っている。アクトリーの担当 者は「大型連休明けには収穫できそうだ」と順調な生育を喜ぶ。
温室内では発電装置から送られる電気が照明に使われているほか、室温に応じて水やり や肥料の量、天窓の開閉を自動制御するシステムが作動し、栽培にかかる人的負担を軽減 する。余った太陽熱で作った温水が24時間循環して空気を暖めており、夜間も室温が下 がらないため、収穫時期を延ばすことが可能になる。夏場はヒートポンプ技術を利用して 、太陽熱から冷風を作り出すという。
県やアクトリーなどは10月までの実験結果を見極める。2020年にはスマート農業 システムとしての販売を開始したい考えだ。JAなどを対象に年間1億円の売り上げを目 標とする。
県産業政策課の担当者は「地元企業の技術と東大先端研の知見を融合し、これからの石 川の農業を支える事業の一つとしたい」と話した。