入社4か月の女性3等航海士、客船の急旋回指示
【木浦モッポ(韓国南西部)=釈迦堂章太、珍島チンド(同)=中川孝之】韓国・珍島沖で旅客船「セウォル号」(6825トン)が沈没した事故で、韓国の検察と海洋警察の合同捜査本部は18日午前、記者会見を開き、同船が16日朝に横転する直前、操舵そうだ室にいた3等航海士が操舵士に対し、急旋回を指示していたことを明らかにした。
同船は横転前、不自然な急旋回をしており、捜査本部は18日、船の運航会社を捜索。近く、業務上過失致死傷容疑でイ・ジュンソク船長(68)らの逮捕状を請求する方針だ。
捜査本部によると、事故当時、船長は休憩時間で、3等航海士が操船の指揮をしていた。船長が航海士に操船を任せることは可能だが、急旋回は不自然で、捜査本部は航海士らから事情を聞くとともに、船長の指示が適切だったか、詳しく調べている。
事故当時の船長の居場所については、「操舵室の後方にいた」「服を着替えに行った」など、関係者の供述が分かれているという。
韓国メディアによると、3等航海士は入社4か月の20代の女性。船長は捜査本部の調べに対し、「危険な所なので自分が直接みるべきだった」と供述したという。
一方、現場海域では18日も潜水士が船内への進入を試みているという。現場海域周辺にはサルベージ船3隻が到着し、船内の生存者がいる可能性がある場所に酸素を注入する作業も始まった。現場では、船舶173隻、航空機29機などによる捜索も続いている。
海洋警察庁は18日、乗客乗員は475人、179人が救出され、死者28人、安否不明者268人と発表した。
船長には船員法で最後の乗客が下船するまでの在船義務があるが、韓国紙・朝鮮日報は、船長が取り調べで、「船が沈み始めて救助隊が来たので、急いで乗り込んだ」と供述したと報じた。今回の事故では、案内放送で乗客に待機を求めた一方、船長が乗員に退避を指示した疑いも浮上。韓国内では乗員の58%が救助された一方、乗客は35%だったとして、運航会社や船長の対応に厳しい批判の声が上がっている。