巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
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隣町の雨

2018-05-21 22:27:53 | 
「隣町の雨」

隣町に雨が降りだして
紅い傘
碧い傘
黄色い傘
居並ぶ道路信号とともに
色とりどりに
世界を彩る

いざ振り返ると
いつか歩んだ道は遥か遠く
もはや戻ることができない
それはあの日の自由を呼び起こす

美しきものが美を否定するように
醜きものは醜さを否定する
許されざる穢れた世界に
怨念、邪念は封印されてしまう

鳥達はどこへ舞い降りるのだろう
この広い世界の中で
居場所を見つけられず
迷い子になっていやしないか

余計な心配をして
急に心持が悪くなった人間たち

あの日の自由が眩しかったから
より一層、
今日の喪失感が身に沁みる

隣町の雨が止んで
せっかく色づいた町が
パラパラと透明に戻る

その瞬間を捉えた鳥達は
この町の居心地をどう感じたのだろう

一羽の鳶がひらりと宙返りして
遠くに居並ぶ山々に向かっていった