巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
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不安定な人間存在

2018-05-27 14:34:15 | 
「不安定な人間存在」

洋々と拡がる海原を見つめる二十年前の若輩者
彼の魂が死んだのはいつの日だったか
残った身体を支配する邪気に蝕まれ
あと何日、あと何時間
今の自分でいられるのかわからない

そもそも、今の自分とは何なのか?
死に至る病に憑りつかれ
これが最期の痛みだと何度確信したことか
薬漬けにされたこの身体は
もはや今の彼でも過去の彼でもない

何が救いになるのか天を恨みもした
このまま終わることも既に覚悟済みだ
あと一日、あと一時間がほしい
そう虚空に訴えているうちに
いつの間にか、大人になってしまった

この世の悲哀もある程度知り
自分より苦しんでいる者の存在を当然知りつつも
自らを守ることに汲々しながら
自分が生きる意義を探してみたり
安定とは程遠いところにいる人間存在

そんな出来損ないの彼はいかにも人間的だ
そう思い始めたのはいつの日だったか
友を持ち、家族に支えられ
何となく人生なるものを歩んでいる
そう素直に受け容れられる気がした

だから、いつ消えることも覚悟している
支え合いの日々ですら、
この胸の鼓動を全否定するその時まで

二十年前の若輩者に語りかけたい
洋々と広がる海原を遠くに見遣りながら



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