巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
【連絡先】
cosgyshow@gmail.com

4時間

2018-01-27 18:59:40 | 
「4時間」

黄金色の月が今日も僕の頭上から大地を眺めている。
寒さなど、いつもは気にしないのに、今日は心の芯まで冷え込む。

西方を向き、僅か4時間の距離を恨む。
ひとりの女が心と体を解放しているのだ、否、したのだ。

あれはまだ夏の日。
そう、思い起こせばいつも夏だった。
徒に年齢を重ねる僕を君は見捨てたりしなかった。
同様に年齢を重ねたはずの君。お互いの人生はどこで離れてしまったのか。
4時間の積み重ねが二人の関係を弄ぶ。

いつか、こんな日が来ると思っていた、恐れていた。
だから、そんなときはいつも家を飛び出して夜空の星屑を眺めた。
今、手元の写真を眺め、ひどく傷ついた心を抑えて放つ優しい言葉。
苦々しい感情はどこに捨てようか。

言葉は魔法だ。
強がりならいくらでも言える。優しい労りの言葉がいくらでも出てくる。
二人の距離が僕の涙を隠す。それが唯一の救いなのかもしれない。

幸福が西方に訪れた。
空白が東方に訪れた。

現実はあまりに唐突で、あまりに残酷だ。
夢や思い出は朽ち果ていつか消え失せる。

そうやって心を落ち着かせるのも単なる魔法であり、儀式でしかない。
それがわかるほど齢(よわひ)を重ねた自分をただただ嘆く。

黄金色の月が秒刻みで西へ向かう。僕は東端に昇る太陽を待つ。


コメントを投稿