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ヘタレ創作ヤログ~人生これでいいのだ!!

原点に立ち返った、創作ヤロウのブログ!
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2005年06月21日 19時58分20秒 | 俺的映画人列伝
追加しちゃいました。
「俺的映画人列伝」
よく考えたら、映画好きなのに、映画人については全然ふれてないじゃん!?ってことで。
ということで、これからもヨロシク!

第一回
「押井 守」

 押井監督の作品にはじめてふれたのは、テレビの「うる星やつら」。
 まだ小学生だったな。
 押井さんにとっても、初めての監督作品だったから、かなり荒っぽい内容だったが、当時はそれが原作とのいい味わいの違いが出てて評判だった。
 押井さんは、特に貧乏ネタが大得意だ。
 例えば、アニメ「うる星」にはかならず「たこ焼き」「立ち食い」「コンビニ」「銭湯」など、押井さんの青春時代にはかかせなかったであろう貧乏アイテムがぞくぞく登場し、ギャグの材料として使われる。
 押井監督の後年の作品は難解なものが多いので、その論理や、画面構成が話題になるが、自分にとっては押井監督といえば、これら貧乏ネタの人なのである。
 「うる星」では2本映画を撮っている。
 1本目は、前の監督が降板して、ピンチヒッターで登板して、ファンサービスに徹したものの全体的には評価が低い「うる星やつら オンリー・ユー」。
 自他共に認めるアニメ界のライバル・宮崎 駿監督と激論を交わし始めたのもこの作品から。
 この作品は、押井さんにとってはよほど悔しかったらしく、リターンマッチで、自分で脚本(ストーリー)も書いてのぞんだのが2作目「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」。
 この作品は、アニメ界に激震を起こした。
 何せそれまで映画文法に根付いていたハリウッド式ドラマ作劇法を全く無視した、イメージの連続による映像構成。「うる星」という世界を一見まったく無視したかのような舞台設定。
 だが、この作品は押井監督にとっては「うる星」の完結を意味する映画だった。
 この作品からみられる映画文法は、とりあえず置いておいて、「うる星」とはまったく異なる世界観での番外編的な捉えられ方が多い本作だが、押井監督にしてみれば、崩壊してしまった友引町にレギュラーキャラを放り込み、好き放題させていくことによって、より「うる星」らしさを見せ、結局はラムの夢をみているというあたるの夢だったということで「うる星」の世界を完結させてしまっているという、このことで押井さんが考える「うる星やつら」をあますところなく述べてしまっているのだ。

 ただ、この作品の評価は高かったものの、その後のアニメに与えた影響も大きく、若手演出家が次々と「オレ作品」を作り始めたため、アニメはそれまでの明るい子供から大人まで安心してみる事の出来るメディアから、一部のマニアックなファンしか見られないものへと変質していったのもまた事実だ。

 そんなことはお構いなしに、押井監督は、それまで所属していたスタジオぴえろを退社し、激論相手の宮崎監督の個人事務所にしばらくやっかいになっていたらしい。
 その当時、テレビでは「ルパン三世PART3」が放映されていて、映画化の話が東京ムービー内で流れはじめ、監督の話が2作目「カリオストロの城」をやった宮崎監督にきた。
 だが、宮崎さんはきっぱりとその話を断った。
 「ルパンの時代はとっくに終わってる」
 というのが宮崎さんのルパン感である。
 どうしてもやるのなら、と宮崎さんは監督に押井さんを推薦した。
 当時押井監督はあらゆる意味で有名だったから、東京ムービーのプロデューサーも乗り気になり、押井さんにオファーした。
 「ルパンの時代は終わっている」
 その認識は、押井さんも同じだったが、同時にもう一回だけならやる意味があるんじゃないか、押井さんは最終的にそう考え、オファーを引き受けた。
 そして、プロットから脚本(伊藤和典さん)へと進捗したが、そこで東宝のプロデューサーから横槍が入る。
 東宝にしてみれば、「ルパン三世」は子供から大人まで楽しめなければいけない作品になっていた。つまり彼らが望んでいたのは「ルパン三世」の映画ではなく、「カリオストロの城」の続編だったわけだ。
 あんなことやってもしかたない、と考えていた押井監督は直しを拒否し、結局監督を降板された。後に鈴木清順を監督のひとりにすえて製作された「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」があまりにも不出来だったことを考えると、このときの東宝のプロデューサーの判断がいかに誤りであったかを証明している。

 押井さんは、しかしこの幻の「ルパン」企画でやろうとしたことにその後こだわり続けた。
 その後まもなくして、OVAの「天使のたまご」を発表する。
 この作品は、評価はともかくとして、アニメの演出を質を問い直す作品となったが、押井さんがここでやったのは「ルパン」へのリターンマッチのひとつである。
 物語中盤で出てくる「天使の化石」は、ルパン企画の目玉のひとつだったのである。

 「天使のたまご」をやった押井監督の元には、しばらく依頼がこなくなった。
 「天使~」の難解さ、興行的失敗から考えればしごく当然のことだったが、押井さんは、その間も次なる「ルパン」へのリターンマッチを考えていた。

 それは、当時の同志ともいえる脚本家・伊藤和典、漫画家・ゆうきまさみらによるユニット「ヘッドギア」に押井さんが参加するということから始まった。
 出来上がった作品は、OVAのロボット物?「機動警察パトレイバー」。
 これで押井さんは、「うる星」のようにチーフディレクターを務め、全6巻(別監督で7巻まである)を監督した。
 警察で活躍?するロボットものの企画だったが、押井さんは、はなからロボットなどに興味はなく、ひたすらキャラ遊びと貧乏ネタにはしった。
 この作品は好評をはくし、ゆうきまさみによるコミック化、そして押井監督による映画化が実現された。
 映画「機動警察パトレイバー」は、押井監督のフィルモグラフィーの中でも傑出した娯楽作品である。ハリウッドばりのケレン味たっぷりあふれる演出は、「あの天使のたまごを作った監督か?」と思わせるものだったが、これでも押井さんは「ルパン」に対するリターンマッチをやっている。終盤での「箱舟」とよばれる巨大建造物内でのアクションは、「ルパン」企画の「東京のど真ん中に建った巨塔内でのアクション」から来ているらしい。東京という町へのこだわりもまた、押井監督のこの時点での物創りのテーマだった。 映画はヒットし、テレビシリーズが開始され、テレビでは押井さんは演出にはいっさい手をつけず、ひたすら本筋とはなんら関係ない、シュールなギャグエピソードの脚本を数本担当し、映画2作目の監督をすることになる。
 「機動警察パトレイバー2」は、戦争をテーマにした、それまでのパトレイバーとは異なる雰囲気を持つ作品である。ここで押井さんの「ルパン」へのリターンマッチは終了する。最後にやりたかったこと、それは「虚構の中での戦争」だった。
 「2」では、まさに東京は虚構の中で戦争状態に突入する。これは「ルパン」の企画では、虚構の中で核爆弾が爆発する、というアイディアだったという。

 この「2」を終えて、押井監督は自身曰く「だしがら」になったという。
 もう積極的に自分でやりたい、と思うことがなくなったということだ。
 ちなみに押井ルパンはどうだったのか、というと「本当はルパンなんて最初から存在しなかったんじゃないか」ということだったという。実現してれば、少なくとも「バビロン」よりは話題になっただろうに。

 「機動警察パトレイバー2」の後、テーマ的にやりたいことをやりつくした押井さんは、久しぶりに原作付のOVAの仕事を請けた。
 いわずとしれた、「攻殻機動隊~Ghost in the Shell」である。
 テーマは特にあまりないので、押井監督はその分、作画のクオリティ、演出の妙、そして今の押井さんが抱えるテーマであるデジタルとアナログの融合がこの作品にこめられた。
 この作品はOVAながら世界中でヒット(米・ビルボード売り上げチャート1位)、脱皮した押井監督は、世界が認める監督となったのである。

 ただ、アメリカの映画人はもっと早くから彼の演出力には注目していた。
 自分はシラキュース大学の映画学科に留学していたが、講師に押井監督が干されている間にとった低予算実写映画「紅い眼鏡」の一部を見せたところ、その演出力に感嘆していた。

 「攻殻機動隊」の後、押井監督はあらたなテーマとなったデジタルとアナログの融合を更におしすすめるべく、大作「GRM(仮)」を企画するが、いまだに実現にはいたっていない。
 「GRM」が進まない間、押井監督は趣味のオンラインRPGを題材にした実写映画「AVALON」を監督、これは中々に評価は難しいが一応カンヌに招待された。確かに映像は美麗である。
 そして、矢継ぎ早というわけでもないが、次回作をアニメで発表する。
 「攻殻機動隊」の続編「イノセンス」である。
 この作品では特筆すべきところはやはりCGと手作業の融合と話の中でのデジタル(ネット)とアナログ(人格)の融合だろう。
 話はわけわからないわけだが、まあ「こんなアニメもたまにはいいね」という内容である。
 自分が思うに、商業映画監督として考えたとき、押井さんの最大の弱点は脚本だと思う。自分で書いたり、自分の100%コントロールの元他人に書かせたりした作品は、正直見ていて辛いのである。
 むしろ押井さんの要素がそこそこに入っていても基本的には別の人が書いた娯楽作の監督作の方が、見ていて鳥肌がたつくらい面白いし、評価も高い。
「機動警察パトレイバー」がその典型的な例だ。

 せっかくハリウッドでも注目されてる監督だし、是非ハリウッドのシナリオで監督進出してもらいたい日本人のひとりである。