発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

ことばの骨

2022年12月14日 | 日記

◆ことばの骨

 

ことばの骨が抜かれていく

それを嘘だと言うひとの声も

だんだん聞こえなくなってくる

真実も痛みも覆い隠され

 

ことばの骨が抜かれていく

ひとがひとであることのわけは

ことばであったはずだが

 

声が汚染されていく

病巣はゆっくりとひろがっていく

美辞麗句の売り文句と

ポジティヴ語彙の順列組み合わせから成る歌を

この期に及んであのひとたちは歌う

嘘だとわかりきってるそんな歌だけが

空中を飛び交うなか 

聞きたいのはあなたの声だ 真実の

 

ところでわたくしのことばの骨はまだ大丈夫か

腐ってはいないか

何者かに抜かれてはいないか

負けずに叫ぶ力はあるか

何かと取りかえようなどという誘惑に

ぼんやりと乗ったりはしていないか

ことばの骨など

抜かれたほうが楽だなどと

よもや頭の片隅を

掠めるようなことはないか

 

ことばの骨が抜かれ粉々になって

できるのは

平滑な荒野

のっぺりした風景は

晴れているうちはまだいい

雨ともなれば

雨ともなれば泥濘となり腐臭を放ち

足をとられて身動きできなくなる

それにすっかり慣れたころには

わたくしも骨抜きとなり

からだ中汚染されて野たれ死ぬこととなるのだ

 

まだその日は来ていないから

声の生き残りを

探しつづけている

自分の肋を時おり指で確認しながら

 

いつもいまだって

あなたの声を探している

(MTJ)

 

2018年初出。4年たって世の中は、もっと悪くなっている。この時代にいる大人しかも後半として、何かしなくてはならないが、何をすればいいのか。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ラーゲリより愛をこめて 1 | トップ | そして1月が行く »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事