発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

今さらですが「風立ちぬ」美しいから飛ぶのか、飛ぶから美しいのか

2014年08月07日 | 映画
◆ブロジェクトX
 このアニメ映画は零式戦闘機やYS11を設計開発した堀越二郎の話だけど、彼の人生そのままと飛行機にまつわる話を追うだけでは「プロジェクトX」になってしまい、BGMは「地上の星」、田口トモロウのナレーションとなる。ユーミンの「ひこうき雲」をエンディングタイトルに使うジブリアニメにするために、その上から「風立ちぬ」的味付けをした映画、だと思った。
  本当は操縦したかったんだけど近視なのでそれは無理ということで技術屋に。堀越少年は少年のときからメガネくんである。丸いメガネといえば、坂本龍一か大江健三郎か東海林太郎か……それと、忘れてはいけない野比のび太。

◆計算尺
 1970年頃までの技術屋にとって、計算尺は大事な道具だ。この映画では、主人公の仕事の道具として印象的に登場する。震災のケガ人には添え木となり、列車移動中には、片手で操作できるモバイルな仕事道具ともなる。
 うちにもあった。父が使っているのを見たことがある。大きくなったらぜひ使ってみたいものだと子供心に思っていたが、私が使い方を知るよりも前に、関数電卓が普及し、普通の計算尺は世の中から消えた。電卓以前は、算盤とセットだったはずである。また、オフィスにおいては腕抜き(黒い事務用袖カバー)とセットだったと思うが、算盤と腕抜きはアニメには登場しなかったような? おしゃれではないからかしら。

◆おしゃれ堀越くん
 で、「風立ちぬ」的味付けとして、胸を悪くしている良家の令嬢菜穂子との恋愛と結婚である。これまた戦前恋愛物語のテンプレ的パターンである。(と、書いてはみたものの、読書傾向に偏りのある私は、戦前恋愛な物語などほとんど読んでいないことに今気がついて少し反省)。下宿先上司夫妻と新郎新婦だけの急ごしらえではあるが古式ゆかしい婚礼が味わい深い。髪に花をひとつ飾った花嫁。もちろん菜穂子ちゃんが普段着てる大正昭和レトロな洋装もとてもステキ。夏には麻と思われるスーツに帽子で登場する堀越。帽子は近年少し復権してきているが、麻のスーツの普及率は現在はどのくらいなのだろうか。上下揃いでワードローブにしているのはよほどのおしゃれさんではないかと。冷房のない時代は結構着てる人は多かったのだろうか。


◆美しいから飛ぶのか
 それにしても、登場する汽車やバスなどの乗り物に心ひかれる。国内乗り物のみならず、欧州の汽車なども登場する。航空機の美しいことは言うまでもない。
 九試単座戦闘機、逆ガル主翼の特徴的に美しいデザインがなければ、このアニメは成立しなかったかもしれない。自動車を美しくしているのは空力性能だと思っている。いわんや空力性能の極致である航空機をや。美しいから飛ぶのか、飛ぶから美しいのか。

コメント
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