発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

宇宙兄弟

2012年04月26日 | 映画
 宇宙兄弟試写会。都久志会館。

 宇宙飛行士になって月に行く弟と、時を同じくして宇宙飛行士の採用テストを受ける兄の物語である。あまり内容にふれないので見たい人は安心して読んでね。

 宇宙開発にお金をかけるよりも、地上の生活を充実させた方がいい、という意見は、先年のいわゆる事業仕分けのときに語られた。結果、都内にあるJAXAの広報施設が閉鎖になった。嘆かわしいことである。なにしろ、宇宙開発には、日本の命運がかかっている。その成否が、日本を独立国たらしめるかどうかを決定するといっても過言ではない。
 おお、大上段に構えて、何を言い出すのか、エンドー?
 
 さきの戦争は、資源収奪戦争だったわけで、その点では問題は戦前から全っ然解決していない。もしも、資源収奪の絡む国際紛争なり戦争なりが起きたら、わが国の脆弱さったら半端ない。70年代のオイルショックで、パニックが起きたというのは、そういうことだ。
 そう思えば、石油石炭より燃料の「もち」がいい、程度のメリットしかない原子力発電よりも、太陽光なり地熱なりの、自前でできる発電方法の開発に、時間やお金をもっとかけて、さっさと現実的な実用化をはかるのが、真の防衛というものだが、あれこれ利権が絡む原子力発電の方が先に推進され、その結果がこのていたらくである。
 さて、太陽光発電は、宇宙で行えば効率が良い。発電衛星を打ち上げ、宇宙で発電して電磁波なりレーザーなりに変換して地表に送り、それを電気として使う計画がある。2005年、福岡で開催された宇宙フェアで、JAXAの人は、発電衛星を2030年までに実現化したいと、言っていた。発電コストが原子力や化石燃料と競合できるところまでいったら実現する、ということだった。今も研究は続けられている。
 当時と今の状況はまったく異なる。原子力発電が頼りにならないことがはっきりした以上、早く実現してほしいものだ。 コストのハードルも低くなってることだろうし。

 その2005年宇宙フェアでは、若田光一さんの講演を聞いた。宇宙飛行士がなぜ人気者であるのかがよくわかった。ただ宇宙へ行く人、行った人、ということではない。子ども達の、どんな質問にも、適切でわかりやすい言葉で受け答えしているところで確信した。
 宇宙飛行士とは、知識技術体力は当たり前として、それを越えた、人格面、とくにコミュニケーション能力に卓越していて、つまりは完璧に近い。完璧であることは、魅力的なことだと思い知ったのだった。逆からいえば、人として魅力的でないイヤミな優秀さは、真の優秀さではないのである。
 優秀な人はもっと増えていいし、そういう面での優秀さを目指すのはいいことであると思う。

 方向性として、宇宙飛行士を目指す子どもが増えることは、世界を救うと思うようになったのである。

 事業仕分けで、都内のJAXA広報施設を閉鎖したことは、ふたつの点で間違っていたと思う。
 宇宙開発こそ、わが国の未来を救うものであることを知らない。(あまり声高には言えないのかな、日本の完全自立を望まない向きもあるだろうからね)
 宇宙飛行士を目指す子どもたちが増えることこそ、日本の技術力を底上げし、社会を明るくするものだということへの認識が足りない。

 ともかく、宇宙兄弟。明るい気分になる映画でした。
コメント
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