みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

大文字焼き

2017年08月16日 | 俳句日記

今日もまた、義理ある方の御霊にご挨拶
せんと、電車バスを乗り継いで廻った。
十数年ぶりに伺うお宅の、最寄りの駅を
間違えて、バス路線もない道を、乏しい
記憶を頼りに、てくてくと歩いて、途中
で身に危険を覚えたので、とある神社の
境内で小休止をした。

あまりにも長く、ご無沙汰を続けて来た ので、「もう来なくていいよ!」なんて言われているのではないかと、ネガティヴ
な思いにも駆られもしたが、一度決心し
た事、汗を拭いて立ちあがる。

御庭を去るにあたって、休憩をさせて頂
いた事への感謝と、どうぞ目的地にたど
り着きますようにとの祈念をして、先へ
向かった。

川があった。
見覚えのある川岸であった。
変電所がある。
これも憶えている。

街並みは、すっかり変わっているのに、
それらは道標のように、そこにあった。
胸がドキドキしだした。
初めてのデートの時もそうだった。

目的のマンションの頂きが見えた。
私は、脱兎の如く駆け・・ることは出来
ないので、その方向を見失わないように
慎重に歩みを進めた。

夏仕立ての背広でも、すっかり濡れそぼ
っていて、着ていると気持ちが悪い。
このままではと思い、上着を脱いでアプ
ローチへと進む。

エントランスホールで、一人のご婦人と
出くわした。
しばし立ち止まり、お互いを見定めた。
「え、〇〇さん?」

声を掛けられた時、私は師匠の奥方だと
確信した。
日差しを避けるためのツバ広の帽子に、
薄いサングラスをされていたので、すぐ
には分からなかったのである。

「はい、〇〇です」
「エーッ、今出掛けるとこだったのよ」
「では、また出直します」
「ちょっと待って、上へ上がって」

こうして、私はもう一人の恩人の仏前に
手を合わす事が出来た。
私の中では、電話を掛けて伺うなど恐れ
多いのである。

お盆には、こんな奇跡のような事が時た
ま起こるから恐ろしい。
見られている事が有り難く、また観られ
ている事が恥ずかしくなる。

斯くして今日の目的を達成したが、それ
にしても疲れた。
8月16日は、京都の大文字焼きの日。

〈木の下に 横になりたや 大文字〉放浪子
季語・大文字(秋)

8月16日〔水〕雨のち晴れ
今朝も、夜来の雨は激しかった。
日が昇るにつれて晴間が覗いた。
とはいえ風は秋の風、過ごし易し。
郡山は雨みたい。