第161回芥川賞受賞作品 今村夏子著
むらさきのスカートの女が気になるわたし。自分と同じ職場で働くように彼女を誘導しその生活を執拗に観察するストーカー的なわたし。近所に住むむらさきの女を観察すると若さのない不気味なイメージが広がる。わたしの職業はホテルの清掃員。働く女性同士の内輪のたくましい心理状態をさらけだしたり、むらさきの女と上司との不倫、短絡的な恋の最後のわたしへのしっぺがえし。むらさきの女が姿をくらましその代償に上司をそそのかし私の仕事の時給を上げさせたり、給料の前借を約束させたり、わたしもなかなかのやり手だ。友達になりたいばかりに近づいたが結局は逃げられた黄色いカーディガンのわたしはまたひとりぼっち・・・・。考えれば滑稽なストーリーだがやすやすとこの物語に中に入り込んでいった。
友人のいない寂しい人の考えた滑稽でもあるが切実な日常生活がうかがわれる。年を取ると友人も少なくなり、いまさら今までのような関係は築けないだろう。幸いにも私には古いお付き合いの人がいるので心強い。