《ライフ・オブ・パイ》

トラと２２７日間、漂流したインド人の少年《パイ》の お話、《ライフ・オブ・パイ》。第８５回アカデミー賞において、１１部門にノミネートされ、監督賞他、数々のオスカーを受賞した映画だ。


主人公を演じた少年《スラージ・シャルマ》は、実は泳げなかった。それだけでなく、撮影が始まるまで海を見たこともなかったという。

彼は俳優ではなく、１７歳の一般人。まずは泳ぎを特訓。見事 習得した。

細身の６８キロの体重を、筋肉質の７５キロまで、トレーニングにより増やした。そして、長い漂流でやせ細った肉体を表現するため、今度は６０キロまで体重を落としてみせた。

しかも、トラの映像は、その ほとんどがＣＧで、実際には そこにトラは いない。そこに いないトラに対して、恐れたり威嚇したりの演技を彼は しているのだ。


すごい…、凄すぎる！



アカデミー賞の授賞式の会場に、彼《スラージ・シャルマ》は座っていた。彼自身はノミネートさえ されていなかったが、《ライフ・オブ・パイ》が数々のオスカーを受賞する度に、ほんとうに嬉しそうに微笑んでいた。きっと素晴らしく素直で、心の綺麗な少年なんだと思う。私は いっぺんにスラージのファンに なってしまった。監督賞を受賞したアン・リーは、スピーチの際、彼に敬意を表した。スラージは、満面の笑みを浮かべて、それに応えた。アカデミー協会よ、副賞としてカレーの詰め合わせでもいいから、『スラージくんに何か贈ってくれよ～』と、ちょっと思った。


《ライフ・オブ・パイ》は、ただトラと人間が２２７日間 漂流したという話ではない。みんな の心の中にいる神様のことやら、友情や信頼の儚さやら、希望と絶望、孤独と勇気、など様々なことが描かれている。宗教も民族も超えた世界観を、台湾人の監督とインド人の少年に よって、見事に描いた作品。映像の美しさにも、心奪われる映画です。


レンタル開始してます。是非、ご覧に なって下さい。ラスト、助かってからの物語。あなたは どちらを信じますか？


ちなみに私がファンに なった彼《スラージ・シャルマ》くんは、現在１８歳だが、俳優に なるつもりは ないそうだ。もったいないなぁ～。