寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3454話) 出世しないサル

2023年02月16日 | 行動

 “夫が帰ってきたと思ったら「お~い、サルはいないの?」と呼ぶ声がする。「あ! 忘れていた」と返事をする。サルとは、豊臣秀吉が織田信長に「サル」と呼ぱれていたときのエピソードをもじったものだ。木下藤吉郎を名乗っていたが、サルとあだなされた秀吉は「草履取り」として信長に仕えた。ある冬の日、信長が素足で玄関から外へ出ようとしたとき、サルはすかさず、懐で温めていた信長の草履を土間に置いた。殿様に冷たい思いをさせてはいけないとの一心だった。その忠義心を高く買った信長は以後、サルに目をかけるようになった。
 このエピソードのように、我が家では冬になると家族の着替えの服を炬燵の中に入れて温めておく習慣がある。寒い外から帰ってきて着替えるとき、温められた服を着るのは嬉しいものだ。これは私が子ども時代から続く習慣だ。母が炬燵の中で温めておいてくれた服を着るときの、何とも言えない満ち足りた幸福感を忘れられないからだ。
 夫が帰宅する前に、着替えの服を温めておく。私は、さながら我が家の「サル」である。秀吉は草履を温めたおかげで出世したが、私は主婦業か一向に出世する見込みはない。”(1月26日付け中日新聞)

 愛知県半田市の主婦・対比地さん(74)の投稿文です。この文で最初に驚いたのは「お~い、サルはいないの?」と呼ぶことである。本当にご主人は奥さんのことをサルと呼んでおられるのだろうか?ただ文章上そうされた気がするが、本当にそう呼んでおられたとすると、それを受け入れておらる夫婦仲がまた面白い。
 矢倉こたつで衣服を温める、これはわが家でも昔よくやっていたことである。帰ってからすぐに下着を替える場合にはそうなるであろう。いつからかしなくなったのはそんな生活で無くなったからではなかろうか。その時その時の生活がある。知恵を生かし、工夫をし、生活を楽しもう。何でも便利なものを買うことがいい訳ではなかろう。


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