東京都指定障害福祉サービス事業者LLCてくてくゆかりのブログ

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青い芝の会の「ニワトリ理論」

2014年03月04日 | てくてくのまいにち
(以下、「青い芝の会」の横田弘さんの自伝『ころび草 脳性麻痺者のある共同生活の生成と崩壊』(自立社、1975年)より引用。)
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彼は長い間養鶏を続けているうちに、ニワトリ社会に一つの法則があることを発見していた。その法則を思想的に極めたものが「青い芝の会」の基本的な思索の一つとなっている「ニワトリ理論」なのである。

「例えば十羽のニワトリを飼っている、と考えてね。その内の一羽が周りからよくいじめられるんだ。方々仲間から突っつかれてさあ。痩せて、見るのも痛々しいんだよ。そいつが餌箱に近づこうとすると周りのニワトリが蹴とばすんだ。無論、卵なんか産まないよ。そんなニワトリ、飼ってるのは『ムダ』だってつぶしてしまう訳にはいかないんだ。その一羽をつぶした後、九羽が仲良くやっていくかと思うと、そうはいかないんだな。後の九羽の内からまた一羽弾き出されるやつがでてくるんだよ。そいつをまたつぶすと、また弾き出されるやつが出るんだ。つまり完全な形で九羽を生かしていく為には、最初のみんなからいじめられ続けているニワトリを生かしておかなければならないんだ。」
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横田弘さんの著書『ころび草』を読んで、強い衝撃を受けました。
古本屋に行っても入手困難で、Amazonでも手に入らず、国立国会図書館に行かないとたぶん読めないくらい貴重な本ですが、隠れた名著です。
青い芝の会を紹介する本はたくさんありますが、横田さんたちが暮らした「マハラバ村」という共同生活コロニーのことを伝える本はほとんどありません。
『ころび草』は、青い芝の会の思想的揺籃の地とも言えるマハラバ村の生活を知ることができる貴重な資料です。
同時に、人間社会を深くえぐるような彫りの深い思索に貫かれた「思想書」でもあります。

この「ニワトリ理論」を私が初めて読んだ時には、かなり打ちのめされたような気持ちになりました。
そして、青い芝の会のラディカルな行動を裏打ちしていた思想的な深みを覗き込んだ気がして、めまいを覚えました。

しかし、最近はちょっと違う見方でこの「ニワトリ理論」を考えるようになっています。
なぜ、ニワトリがニワトリをいじめるのか?
それはニワトリをぎゅうぎゅう詰めの鶏舎に閉じ込めているからではないか、と思うのです。
もしも、ニワトリを狭い空間に閉じ込めたりしないで、たとえば広い野原で放し飼いするなどしていたら、弱いニワトリが一方的にいじめられることもないだろうという考えが浮かびます。
よしんば、いじめが生じるとしても、広い野原ならどこまでも逃げていくことができます。

そう考えると、これは人間社会にも同じことが言えて、社会が一人一人の人間を窮屈に束縛し続ける限り「いじめ」が絶えることはないが、一人一人の自由を十全に保障する仕組みを整えた社会がつくられるようになれば、やがて差別や迫害も生じなくなるのではないかという気がします。

横田弘著『ころび草 脳性麻痺者のある共同生活の生成と崩壊』は思索の種の宝庫なので、ぜひ手に取って読んでみることをお勧めします。

(安田)

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