チーム駿河湾

静岡県水産技術研究所の職員が公私を問わず入手した静岡の海、漁業、海の生き物の旬な情報を発信します。

見慣れぬ貝は何者?

2014年03月28日 | 日記
 バイという貝をご存知でしょうか。焼津周辺では「海つぼ」の名で知られており、居酒屋などで目にすることが多く、煮物が定番メニューです。
 茶褐色の綺麗な斑紋がバイの特徴ですが、焼津の漁業者から、「形がバイにそっくりだが、斑紋がない貝がバイと一緒に採れるので調べて欲しい」と依頼がありました。

 サンプルをいただいて調べたところ、確かに形では見分けがつきません。貝殻をよく見ると、綺麗に斑紋が出ている貝と全く斑紋が無い貝だけでなく、斑紋が一部にある貝や斑紋が薄く出ている貝など、中間形の貝も見つかりました(写真1)。

写真1:今回調べた貝の一部。一番左はよく目にするバイの模様。左から右になるにつれ斑紋が少なくなり、一番右の貝では斑紋が見当たらない。

 ためしに斑紋が無い貝の肉を取り除いてみました。貝殻の内側を見てみると、斑紋らしき模様が見えたため、貝殻の内側から光を照射してみたところ、バイ特有の斑紋が浮かび上がりました。(写真2~4、全て同じ個体)
 写真2:貝殻に斑紋がない貝
 写真3:貝殻の内側に模様
 写真4:内側から光を照射すると斑紋が浮かび上がる。


 これらのことから、斑紋の無い貝も同じバイだろうと判断しました。文献を調べると、日本海側ではこのような斑紋なしのバイが見られるそうです。ネットで検索してみたところ、太平洋側の他地域でも斑紋なしの事例がありました。静岡では斑紋ありのバイがほとんどですが、何らかの条件によっては斑紋が隠れてしまうようです。その条件が何であるかについては、残念ながら解明することができませんでした。