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労働契約法制:報告案に見る実務対応ポイント(2)

2006-12-28 | 経営実務
いよいよ「報告書」のとりまとめが行われた「労働契約法制の在り方」の審議。ホワイトカラー・エグゼンプションも一応は「法制化」という方向とはなったようですが、労働側からの反発は強く「反対意見明記での意見取りまとめ」となったようです。

関連記事をWebからピックアップしてみました。
ホワイトカラー・エグゼンプション:労政審報告に盛る(Mainichi Interactive-毎日新聞)
残業代ゼロ「導入適当」 労政審(asahi.com-朝日新聞)
ホワイトカラーの労働時間規制除外、労基法改正案へ(Yomiuri Online-読売新聞)

産経・日経の2紙のWeb版にはまだ記事が掲載されていません(8:00現在)が、恐らく近いうちに何らかの記事が載るのではないかと思います。

さて、「残業規制除外」という強いインパクトをもったホワイトカラー・エグゼンプションばかりに目が向けられていますが、今回の報告はあくまでも「労働契約法制及び労働時間法制の在り方」全体についての話です。「労働契約」を初めとした労働実務に大きな影響を与えると予想される報告は他にも数多くあります。ということで、前回のエントリに引き続き、厚生労働省発表の報告案をベースとして、今回の「報告書」の内容からみた労働実務上の対応ポイントを考えます。本日は「」
なお、本エントリ及び関連エントリにおいて記載する内容は、あくまでも平成18年12月27日時点で入手した「報告案」をベースに立石個人の見解を取りまとめたものです。最終報告の内容や法律化にあたって取り扱いの変更・修正が行われる場合もありますので、ご覧になる際にはこの点について十分にご注意いただきたいと存じます


【2】確立する『使用者側の権利の濫用』への対応


「労働契約法制の在り方」報告書に含まれているもののうち、意外と大きな影響を及ぼしそうなのがこの「権利の濫用によって無効とされる状況の拡大」です。今回の労働契約法制の整備に伴って、今まで「解雇」に関してのみ法律の言及があった「権利濫用による無効」が、重要な労働条件(=労働契約内容)の変更等にも拡大されることになりそうです。

これまでも解雇については、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、その権利を濫用したものとして無効とする。(労働基準法第18条の2)」とされてきました。これは、判例による「解雇権濫用の法理」が法律上明文化されたものですが、労働基準法上非常に重みのある条文として現在も考えられています。(なお、この解雇権濫用の法理は労働基準法から労働契約法に移行することとなるそうです。)

一方、今回の審議では、同じように判例法理がある程度確立されてきていた「出向」「転籍」「懲戒」の3点について、同様の「権利濫用による無効の明文化」が行われる見通しです。

まず、出向(在籍出向)については
(1)出向の必要性
(2)対象労働者の選定その他の事情
の2点が要件として挙げられています。このままでは曖昧な部分も多いのですが、既に過去に蓄積された判例の読み解き等によりある程度「事実上の基準」が形作られておりますので、これらを尊重した対応が必要となるということでしょう。

一方、転籍(移籍出向)については「労働者と合意した場合に」行い得るとされました。すなわち、従業員を(関連会社を含めて)他の会社へ転籍させるような場合には「個別の同意」が必要であることが明確になりました。転籍については、これまで「元の会社を退職し、期間をあけずに転籍先の会社に入社」という形が実務上多くとられておりましたが、今後は個別同意を持って「労働契約の譲渡(退職金引継ぎ相当額金銭対価の支払を含む)」という形の処理も可能となると考えられます。

この出向・転籍についての実務対応ポイントは次のようにまとめられます。
(1)在籍出向の場合には、たとえグループ会社・関連会社への出向であっても、出向の理由や出向者の選定等についてきちんと明らかにする。
(2)出向契約書や出向辞令は確実に作成する。
(3)転籍(移籍出向)の場合には、たとえグループ会社・関連会社への出向であっても、個別の同意が必須。
(4)転籍は「労働契約の譲渡契約」と捉え、転籍元-転籍先、転籍元-対象者、転籍先-対象者の3つの「2者間契約書」をきちんと残しておく。


また、懲戒についての「権利濫用法理の明文化」について、「適切な懲戒処分」に必要な要素としては
労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、
(1)客観的に合理的な理由
(2)社会通念上相当であると認められること

となりました。これまでも懲戒解雇については解雇法制で押さえられていた部分ですが、懲戒処分全般(戒告や減給、降格・降職・停職等を含めて)に拡大されたと考えればよいかと存じます。

ただ、この「客観的な合理性」や、「社会通念上の相当性」というのは、最終的には裁判所の判断によるところが大きくなると予想され、しかも「時とともに変遷する」性格を持っています。(例えば、現在は普通の話しとして捉えられている「飲酒運転検挙による懲戒解雇」も、過去の判例では「合理性がない=重過ぎる」として否定されるケースがありました。)

ということで、懲戒処分に関する実務対応としては、次のようにまとめられます。
(1)基本的には業務内での注意指導に留め、懲戒処分は「抑制的」に運用する。
(2)どうしても懲戒処分が必要な場合には、「対象となる客観的事実」を文書で示し、最低限「事実の有無」については可能な限り同意のサインを取る。(相手に証拠を確認させる)
(3)「対象となる事実によって当該懲戒処分を受ける理由」が明確になるよう、就業規則等にある懲戒処分の内容及び基準を整理する。

特に(2)のポイントは重要です。「客観的な事実」について確認書をとっておくことで、「納得の上(というか、しゃーないなーという気持ちの中)での懲戒処分」を形成することが容易となります。このあたりは、ISO9001やISO14001等のマネジメントシステムが要求する「内部監査」や「是正処置」の技法が応用できるところではないかと私は考えます。

続きは次回のエントリに。次回は「辞める・辞めさせるへの対応」について考えます。

労働契約法制:思わぬところから意見具申が・・・

2006-12-26 | 経営実務
労働契約法制に関する「審議会答申」が出るのは明日の予定のようですね。今日は昨日の続きのエントリを書こうとしたのですが、こんなニュースを見つけてしまったので、急遽方向転換です。

太田公明代表:労働関係法案の見送り申し入れ 首相に(毎日新聞-Mainichi Interactive)


公明党の太田昭宏代表は26日、安倍晋三首相と首相官邸で会談し、厚生労働省が来年の通常国会に提出を予定している労働関係法制について、「法制化を急ぐような拙速であってはならない」と伝え、法案提出を見送るよう申し入れた。
(以下略)


支持率が下がっている安部内閣への牽制と来年の参院選を睨んでの動きが入り混じっての「申し入れ」と感じますが、公明党がすんなり賛意を示していないとなれば、場合によってはこのまま「今回はお蔵入り」となる可能性が十分に考えられると感じました。

この議論自体は小泉内閣時代から行われていたと記憶していますが、もし本当に「先送り」となれば、「この内閣では大きなテーマは扱えない」というイメージを招きかねず、政権運営にとっては直接的な支持率云々よりも「ボディーブローのように重くのしかかるダメージ」が生じるのではないかと私は考えます。

労働契約法制の議論、まだまだ予断を許しません。

労働契約法制: 報告案に見る実務対応ポイント(1)

2006-12-25 | 経営実務
労働契約法制の審議会における議論が大詰めとなっておりますが、本日届いた労働法令通信に労働政策審議会に提示された「報告案」が掲載されております。

今回の「報告案」に提示されている大きな論点は次の7つです。
(1)労働契約の内容は労使の合意により自主的に決定され、できる限り書面により確認するようにすること。
(2)合理的な労働条件を定めた就業規則がある場合、その労働条件が労働契約の内容となること。
(3)就業規則の変更が合理的な場合、労働契約の内容は就業規則に定めるところによるものとすること
(4)解雇の金銭的解決方法を導入すること(⇒その後の議論で今回は見送り)
(5)一定の要件を満たすホワイトカラー労働者については、労働時間規制除外の対象とすること
(6)長時間労働者の割増賃金率を引き上げること
(7)時間単位の年次有給休暇の取得を可能とすること
(以上、労働法令通信平成18年12月28日号より引用)

このうち、解雇の金銭的解決方法の導入については「今回は見送り」という方向となり、また、ホワイトカラー労働者の労働時間規制除外についてもギリギリの綱引きが行われています。

審議会に提示された報告案全文は厚生労働省 審議会ホームページにてご覧いただけますので、ご興味のある方はご覧頂ければと存じます。

さて、今回の労働契約法制の議論は、これまでの労使関係のあり方を根本から見つめなおし、より一層「エッジを効かせる」ものとなっております。大企業だけではなく、中小企業にとってこそ影響の大きい部分が数多く含まれていることから、本ブログにおいても、数回にわけて「労働契約法制の在り方報告(案)に見る中小企業労務での実務対応上のポイント」を考えていきたいと思います。
なお、本エントリ及び以降のエントリにおいて記載する内容は、あくまでも平成18年12月25日時点で入手した「報告案」をベースに立石個人の見解を取りまとめたものです。法律化にあたって取り扱いの変更・修正が行われる場合もありますので、ご覧になる際にはこの点について十分にご注意いただきたいと存じます


本日は1回目ということで総論の話題から。

【1】就業規則と労働契約の関係はどうなるのか?


これまでの労働基準法ではあまりはっきりしていなかった「就業規則」と「労働契約」の関係ですが、今回の「報告案」では、今までより明確となりました。

まず、労働契約は「労働者及び使用者の対等の立場における合意に基づいて締結・変更されるもの」という立場が明確となりました。その上で、労働契約の内容については「締結された労働契約の内容についてできる限り書面により確認するようにする」ということが織り込まれるようです。

一方、就業規則については、「合理的な労働条件を定めて労働者に周知させていた就業規則がある場合には、その就業規則に定める労働条件が、労働契約の内容となるものとすること」とされ、その変更についても「使用者が就業規則を変更し、その就業規則を労働者に周知させていた場合において、就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとすること」とされました。即ち、合理的な内容で正当な手続に基づいて作成・周知が行われた就業規則には、労使双方に契約上の拘束力を持つことが明確化されたこととなります。したがって、就業規則の作成・変更手続はこれまで以上に「手続面での正当性」と「内容の合理性」に配慮を要することになると考えられます。

また、労働契約と就業規則の関係については「労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働契約の内容を合意した部分(特約)については、その合意によることとすること」ということが明記されました。これにより、例えば、ごく少数の「他の人とは別の取り扱いをする従業員」のために就業規則上の手当てをすることが不要となり、「一般原則としての就業規則」と「個別の合意に基づく労働契約」という役割分担がより明確化されることになります。

ただし、先に紹介したとおり「締結された労働契約の内容についてできる限り書面により確認するようにする」とありますので、労働契約において個別に特約を設ける場合には、後のトラブルを避けるために「労働契約書」の整備が実務上不可欠となると考えられます。

以上から、労働契約と就業規則の関係における実務対応ポイントを考えると次のようにまとめられます。

(1)就業規則は『労働契約』の内容となる=一種の「約款」的な取り扱いとなる。
(2)「就業規則」の整備はこれまで以上に必須。
(3)「労働契約の特約」は原則有効 ⇒ 「労働契約書」の整備が重要。
(4)就業規則の変更手続をきちんと行えば、「労働契約の変更」と認められる。


労務実務の観点から言うと、この「就業規則と労働契約の関係の整理」が行われることは、今回の労働契約法制の中で実は「最も実務上影響のが大きい部分」ではないかと感じております。「合理的な範囲であれば、個別の契約で『特約』を設けることが可能」ということは、ある面では「個別対応に向けた労働契約の柔軟性」をもたらすものですし、「書面化による労働契約内容の確認の努力」とは、「書面化した労働契約に対する効力を認める」ということに繋がっているためです。したがって、きちんとした「書面化」は「労使紛争の予防線」として機能させることができ、万一紛争となっても「早期の問題解決」のための道具として活用することが出来るのです。

これまでは一般従業員について「労働契約書」を取り交わすことは少なかったですが、これからは労務実務の第一歩として「最初に押さえておく」ことが大変重要になると私は考えます。

ということで今回はここまで。次回は「労働にまつわる『権利の濫用』関係」を見て行きたいと思います。

労働契約法:新「厚労省試案」の行方は?

2006-11-10 | 経営実務
労働契約法の改正論議、一時は「頓挫か?」と思われていましたが、ここに来てようやく少し動きがあった模様です。

本日の報道では、特に激しく揉めていた「ホワイトカラー・エグゼンプション(自律的労働時間制度)」について、厚生労働省側から「新試案」が登場したとのことです。

週休2日確保し導入 労働時間規制見直しで厚労省が新案


労働法制改正の焦点となっている労働時間規制の見直しで、厚生労働省が新たな素案をまとめた。一定の年収以上の会社員を労働時間規制の対象から外す自律的労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)について「自由度の高い働き方にふさわしい制度」と名称を変えて導入を明記。同制度には過労による健康被害を懸念する声が強いことから、対象者の休日を週2日以上とすることを企業に義務づけ、適正に運営しなかった企業には改善命令や罰則を科すなどの内容を盛り込んだ。

 同省は、10日午後に開かれる同省の審議会に素案を提示。来年の通常国会に労働基準法改正案など関連法案を提出する考えだが、休日確保で過労が防げるのかなど論点も多く、労使の調整は難航が予想される。 (以下略)
(asahi.com-朝日新聞)


上記報道によれば、今回の試案では、ホワイトカラー・エグゼンプションに伴って懸念される長時間労働防止措置として「週休2日の確保」「医師面接基準の引き下げ」が明示されたようです。また、別途検討されていた残業の割増賃金率については、同省は6月の当初案で「1カ月の残業が30時間を超えた場合は現行の25%増しを50%増しに引き上げ」としていたが、素案では、割増率引き上げの義務づけは健康にかかわるような「長時間労働者」に限るとされたようです。

この件についての報道は今のところasahi.comにしか見当たらず、労働者側のみの反応が寄せられていませんが、まだまだ紆余曲折するのではないかと感じています。

個人的には、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入には賛成の立場です。しかし、に長時間労働を防ぐための措置としての『基準』や『罰則』には、有効性が乏しいことは現状から明らかです。では、どうすればよいのかといえば、私はアメリカ労働市場にヒントがあると考えています。

ホワイトカラーのプロ化が進んでいるアメリカでは、『より良い条件の会社に、優秀な人材が集まる』ようなホワイトカラー労働市場が構築されています。だから、「ホワイトカラー・エグゼンプション」のような仕組みを入れても、会社が要求を呑まなければ『会社を替わる』というオプションを行使して、自分の環境を変えることが出来、また、会社としても「優秀な人に辞めてもらいたくない」という動機から『良い労働条件』を整えます。これらが、両輪となって、はじめて「ホワイトカラー・エグゼンプション」が有効に機能しているといえます。(もちろん、他の要因も多々ありますが、ここでは簡略化しています。)

したがって、日本で「ホワイトカラー・エグゼンプション」を入れる場合にも、これは『労働者側の自由意志で簡単に転職ができ、キャリアパスが傷つかないホワイトカラー労働市場』が整備されることが必要と考えます。これは、即ち「ホワイトカラー市場」と「ブルーカラー市場」を分けることにほかならず、「個人の能力や個性に左右される度合いが大きい仕事」と「だれがやっても余り代わりが無い仕事」で雇用体系も賃金体系も採用体系も「働くということ」について何から何まで「格差」が生じてくるということに繋がるのです。

私個人の意見で言えば、「働き方」が違う以上、このような「格差」が就くのはやぶさかではないと考えますが、日本全体でコンセンサスが取れる問題かどうかというと?をつけざるを得ません。ただ、現実には、特に後者については「派遣労働」「請負労働」「パートタイマー」という形で既に「市場」も「体系」もできつつあります。あとは前者について「市場構造の変化」が生じるか否かというのが現在と割れているところではないかと感じます。ただ、日本としてこのような「格差」を許容しない(できない)環境にあるのであれば、「ホワイトカラー・エグゼンプション」は長時間労働の誘発等のデメリットばかりが強調されてしまうと私は考えます。

取り留めの無い話になってしまいましたが、取り急ぎ報道と自分の頭の仲の備忘録まで。

コンプラ:管理職なら労働法の理解は必須!

2006-07-11 | 経営実務
前回のエントリで“解雇”という視点から労働法とコンプライアンスのかかわりについて考えてみました。最初のネタを提供いただいたtoshi先生のビジネス法務の部屋はもちろんのこと、私がよくお伺いさせていただいている法務の国のろじゃあでも大変有意義な議論を拝見させていただくことが出来ました。(ただ、両ブログとも現在ココログのメンテナンスに引っかかっており、コメントやエントリの投稿が出来ない状態になっているのが大変残念です。)

さて、このような流れのなかで、とある方から「労働法とコンプライアンス」に関わるような別のお話をお伺いしました。

舞台となっているのは、大手企業の系列に属している某営業会社。そこで、ある日こんな出来事があったそうです。

いつものように仕事をしていると、お客様から商談の電話が掛かってきた。そのお客様の担当は同期の仲間だったのですが、あいにくとシフトの関係で今日はお休み。そこで、まずは分かる範囲で対応し、責任者である上司の管理職へ報告しました。

すると、報告を受けた上司は、担当者である部下に連絡を始めました。そして、なんと
「今から見積もり資料を持っていくので、家からお客さんに電話を入れて!」

と指示を出したそうです。

さて、このケースを分析してみましょう。まず、シフトを組んで順番に休みを取っている以上、会社が営業日であろうが、部下にとってはは間違いなく「休日」です。その休日に「お客様への対応」を指示しているわけですから、例え自宅で作業をしようとも、立派な「休日労働」となります。そうすると、当然「働いた分の賃金+3割5分増し以上の休日労働手当」の支払いが求められます。これは、きちんと支払われなければもちろん「違法行為」となるわけですし、きちんと払ったとしても当然会社から見ればコスト増=収益圧迫要因となります。

次に、今回の「指示」そのものが「指揮命令権の濫用」に当たる可能性も考えなければならないでしょう。部下は「休日」とされた日を自由に自分の時間として使うことが出来るのは当然のことです。会社が営業中でたとえお客様からのお問合せがあったとしても、それは、他の出勤しているメンバーや管理職自身がカバーすべきものであって、よほどの不要不急の用件でもない限り、休日中の部下の自宅にまで押しかけて仕事をさせることはそもそも筋違いというものです。

また、この上司はさも当然かのように部下の家庭へ仕事を持ち込んでいますが、これ自身も上司がそこまでの権限を有していることは自明ではなく、(万が一これがトリガーとなって家庭不和でも起こったらどう責任を取るつもりだったのでしょう?)

上司としては「CSに向けたお客様への迅速な対応」を図りつつ、休日中の部下へ出来るだけの配慮をしたつもりかもしれませんが、私の目には「マネジメント不在で、休日中の部下に対応と責任と押し付けている」としか写りません。労働法に抵触する可能性が高い事案であることはもちろん、「部下のキモチを大事に大切にする」という管理職として最も基本的に求められる規範からも外れていると言われても仕方が無いでしょう。

管理職にとっては「労働法」や労働規範といった類のものは「マネジメントという仕事を行う上での基本的なルール」といえます。このような「基本的な部分」が出来ていないような状況の中で「コンプライアンス遵守」などというのは遠い先の話のように感じざるを得ません。

ろじゃあさんが自らのブログの中で指摘されているように、コンプライアンスシステムの構築や維持管理を行っていく中では、管理職や従業員に対する労働法関係の研修・教育プログラムというものを組み込んで行かなければならないのではないかと考えさせられる事例でした。

経営者の対応:コンプライアンスと労働問題

2006-07-07 | 経営実務
私がよく拝見させていただいている法務系ブログ「ビジネス法務の部屋」にて、大変興味深い事例が紹介されていました。

コンプライアンス経営はむずかしい・・・(06.07.07のエントリより抜粋)

事案は支店長の使い込み、いわゆる業務上横領事件です。その支店長は社内では非常にやり手で、部下の信頼もかなり厚い方です。しかしながら、この1年ほどで相当程度の金額を流用していたことが判明しました。(判明したのは、財務情報に関する内部統制システム構築の作業によるものです。)

支店長と私が面談をして、流用金員のほぼ全容が解明されたのですが、すべて本社に稟議があがっていたにもかかわらず、「リスクが高い」として却下した取引事案に関するものでして、その取引を独断で進めるべく、接待交際費やリスク低減のための準備調査費用に充当されていました。(つまり、私的流用は一切ありませんでした)。そして、その支店長の努力の甲斐(?)あってか、取引先開拓は順調でして、前年比2,5倍の収益を計上する「最優秀営業店」となり、事実を知らない一般社員はその支店長を尊敬しております。

もちろん、取締役会の意思決定に反して、独断で取引を進め、会社の金員を流用した事実については「領得意思」はないものの、会社に対する害意は認められるでしょうから、刑事告訴の対象にはなるでしょう。(収益を上げていても、使い込みしている以上は、損害が発生していると考えられます)しかし、世間の好景気と支店長の才覚によってこの企業は近年まれに見る好成績を残しました。本人は流用の事実が発覚しないと思っていたようですが、残念ながら会計士の先生と内部監査人の調査によって発覚してしまい、いまは不満はあるものの、退職の準備をしているところであります。

この事例を拝見して、率直に感じたのが「大変難しい事案だよな~」ということです。もし仮に私が“顧問社労士”として会社から対応の相談を受けた場合には、「懲戒解雇」までを視野に入れた助言指導が出来るかといえば、“流用金額”の多寡にもよりますが恐らく難しいのではないかと考えます。

過去の判例では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」というのが定まっており、これは現在では労働基準法第18条の2として法律上も定められています。これを具体的に見ていくと、「正当な解雇」といえるための要素としては、(1)解雇に合理的な理由があること、(2)不当動機・不当目的でないこと、(3)解雇理由とされた行状と解雇処分との均衡が取れていること、(4)使用者側の対応に信義則から見て問題がないこと、(5)解雇手続が適正に行われていること等が上げられています。

そこで、今回のケースを照らし合わせて考えた場合、従業員である支店長側から見れば、この内容だけから判断するとなると(3)の「行状と処分の重さの比較」の部分で争う余地があるのではないかと考えられます。なぜなら、「結果」からだけ追っていくと、確かに支店長の行動ベースでは不適切な行為があったにせよ、それによって会社は損失どころか利益を得ているわけですので、「裁量権の逸脱はあったにせよ、結果としては支店長の判断は誤っていなかった。」ということを主張する余地が出てきます。このため、これによってもし解雇が許されるとすれば、「部下が出した結果に、異なる判断を下した上司(経営者)がただ乗りして、あたかも掠め取ったかのように見える」という、大変嫌な状況が待っています。したがって、この事例のケースの範疇の情報を前提とすると、「一発レッドカード」とするのは、労働法的にはかなり“無理筋”の話になってしまう可能性があります。

また、「使い込み」の事実がどれくらいの期間にわたってどのような状況で行われていたかによっては、「支店長には暗黙上の権限が与えられていた」とされたり、また「会社がこのようなことを防ぐ手立てを怠っていた」ということが、会社側に不利な要素として加わる可能性もあります。

では、会社としては何も対応できないかといえば、そんなことはありません。細かな状況によっては、降格や減給等の“重めの懲戒処分”は可能でしょう。また、懲戒処分とは別に話し合いによる「合意退職」に持っていくことも考えられます。

ただ、ここに紹介されている事例の範囲の情報だけで考えてしまうと、解雇や合意退職といった方向性は「コンプライアンスを重視したことにより、より大きなロス(優秀な人材の喪失+従業員全体のモラルの低下)を引き起こす」といった状況を生み出しかねないのかなとも感じます。

もし、私が“顧問社労士”このような事案に直面したとすれば、「懲戒処分として支店長の任を解き中間管理職相当まで降格をさせた上で、本社の企画又は総務系(内部監査でもよいかも)の然るべきポジションへ異動させる。」といった処置を提案すると考えます。これは次の4点に注目して導き出しています。

(1)この支店長が「非常にやり手」で、「部下の信頼もかなり厚い」人物であること - 会社としては失うには忍びない
(2)そして、結果だけ見れば、この支店長の意思判断に基づくマネジメントによって、業績が大きく伸びている。
(3)しかしながら、今回の一連の行動は会社のルールを大きく逸脱するものであり、非難は免れない。
(4)さらに、支店長という「独立した判断を行い、一定の権限を有する地位」までを任せるだけの適正に欠く部分があると考えざるを得ない。

そして、このような“処分”の裏で「本社部門で社長(OR重役)直轄のプロジェクトを特命的に任せる」ということを合わせ技として持ってくることで、マネジメントについてのしっかりとした“議論”を行いつつ、“復活の目”を持たせることが望ましいのではないかと私は考えます。(とはいえ、これを実行するには経営陣が支店長に食われないだけの相当な『度量』が必要ですが・・・・)

この事例に触れて、私が一つ感じることは「業務執行の適正を保つこともコンプライアンスであれば、企業(経営者)として労働法の“趣旨・精神”を守ることもコンプライアンスの一つである」ということです。このように考えるとコンプライアンス経営というものは、内部に複雑でかつ対立的な要素をはらんでしまうことにもなりかねません。しかし、「コンプライアンス経営」に徹することで、常に経営者が多面的な要素を見据えて考え抜くようになり、経営全体として「法令や規範に従う=誰に対しても一定の筋道は説明できる」ような意思決定が行われるようにっていくのではないかと、私は考えます。

もちろん、今回の事例のようなケースは、具体的な事象のわずかな違いによって判断が大きく変わってくることが通常です。、今回のエントリで述べた私の考えは、あくまでも「非常に抽象化されたケース」だけを見た中での意見であり、具体的な内容次第では判断が大きく変わることは十分にあり得ます。本日の私のエントリは、あくまでも「一般的な話の中での一つの見方」程度としてご覧頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

長くなりましたが、今日はここまで。

【追記 06.07.07 23:30】
このエントリを書き終えた後に元ブログへのコメントをみると、同じくよく拝見しているブログの筆者であるbun様から示唆に富んだコメントが寄せられていました。
bun様のご意見は「早めに取締役にしてしまった方がいいのではないか?」ということ。事例を通じてみた“支店長の持っている資質を最大限に発揮される”という方向で考えられているようです。私よりさらに一歩踏み込んだ考え方で、大変勉強になります。

bun様のコメントにもありますが、「必要なリスクすら取らない縮小均衡の会社になる」ことが、実は会社にとっては一番怖いリスク要因であると感じます。どのような選択を行うにせよ、このことは頭の中からはずすことが出来ない重要な視点になると私は考えます。

消費税:仕入れる時は忘れずに。

2006-05-18 | 経営実務
今日は久しぶりに事務所に詰めての仕事。フルに事務所に詰めての業務日は、今月に入って初めてだったりします(もうすっかり後半ですが・・・)。

さて、今日のニュースで気になったトピックスを。報道によると、NHKが消費税の申告漏れを指摘されたそうです。

NHK、制作費領収書20億円不備…税1億申告漏れ(読売新聞)
NHK、消費税2億7000万円申告漏れ(日本経済新聞)
NHK、消費税2億7千万円申告漏れ 領収書保管せず(朝日新聞)

消費税では、「売上等に伴って受け取った(預かった)消費税額」から「仕入れなどに伴って支払った(預けた)消費税額」を差し引いて納税すべき金額を計算します。この方法では「仕入れに伴って支払った消費税額」が多ければ多いほど、実際にの納税時にキャッシュで納める金額が少なくすむことになります。(ちなみに、多額投資を行った等の理由で差し引き額がマイナスになると、消費税が還付されることになります。)

しかし、消費税の場合には事業活動でのすべての支出が「仕入れ税額」の計算基礎となる「仕入れ額」とできるわけでは有りません。企業が行った支出のうち、一定の要件を満たすものを「課税仕入れ」として認識し、「仕入れ税額」の計算に算入できるということになります。(ちなみに、非課税取引、不課税取引等はそもそも取引行為の中で消費税が発生していませんので、全体で見れば損得は生じません。)

今回のNHKで問題となったのは、この「課税仕入れ」に関する「経理書類の保管」についてです。消費税法では「課税仕入れについては、一定事項を記入した帳簿を作成し、かつ、請求書や領収書等を保管しなければならない」となっています。そして、仮にこれらの帳簿や請求書等が保管されてない場合には、「その分については、控除(差し引き)の対象としない」というように定められています。今回のケースはまさにこの部分に引っかかったということです。

ただ、個人的には今回のケースではわずかながら同情すべき向きもあるんじゃないかな・・・と感じています。というのも、そもそも「請求書や領収書等の作成は、相手方が行うこと」であるからです。特に、芸能界の場合には「芸能界というところは、口頭ベースで仕事が進んでいく」といった印象があり、「請求書・領収書」をつくるという慣習が薄いんじゃないかな・・と感じています。(読売新聞の報道ベースでは「領収書の発行を拒まれるケースもあった」とのことです)

また、現在の取引慣行で考えると、「銀行振込」の際には口座に記録が残るので、領収書を発行しないケースが大勢を占めていると考えられます。このとき、継続的な取引を行っている等の理由がある場合には、「契約書」はつくっていても「請求書」の作成までは行っていないケースというのは、案外多くみられます。

この場合、「口座の記録」では、消費税法が求める「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」や「課税資産の譲渡等を行つた年月日又は期間」がありませんので、「請求書・領収書等」とは認められませんので、このままでは「課税仕入れ」として認められない=余分な消費税を払わなければならなくなります。

これに対しては、消費税法の施行令では「一定額(30,000円)未満の場合」又は「請求書等をもらえなかったやむを得ない理由があるときで、帳簿に相手方の住所か所在地を記入している場合」には、請求書等がなくても課税仕入れを認めるということとして、商慣習に対する手当てを行っています。

ただ、この「やむをえない理由がある時」というのは何とも曖昧な表現です。今回のNHKのケースでは細かな状況まで明らかになっていないので分かりませんが、もしこの「やむをえない理由がある時」の範囲について限定的な解釈が行われたとすれば、若干NHKに同情できる余地はあるのかな?と感じました。

いずれにせよ、相手方がある話なので難しい状況はあるかもしれませんが、無用なトラブルを避けるには「仕入れる時は、(請求書や領収書の受領を)忘れずに」が一番かもしれません。

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疑問:中央青山に対する処分は「フェア」か?(追加アリ)

2006-05-11 | 経営実務
中央青山監査法人に対する金融庁からの一部業務停止命令が正式発表されたことは既報の通りですが、ようやく少し時間ができましたので、この事件について少し考察をしてみたいと思います。

まず、このような事件に出会って私が考えてしまうのが「処分がフェアに行われているか」点です。

フェアとは何ぞや・・・という話はありますが、ここでは、『フェア』の一要素といえる
(1)公正妥当な手続により行われているか?
(2)一罰百戒となっていないか?

という2つの側面を考えてみたいと思います。

疑問1:公正妥当な手続が踏まれたか?


まず、今回の処分に至る手続がどのようになっていたかについての検証です。行政が処分(特に不利益処分)を行うためには、法令による定めが間違いなく必要となります。今回の『監査法人に対する処分』の場合についても公認会計士法公認会計士法第三十四条の二十一第2項が処分の根拠となっています。

(虚偽又は不当の証明等についての処分等)
第三十四条の二十一  内閣総理大臣は、監査法人がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき、又は監査法人の行う第二条第一項の業務の運営が著しく不当と認められる場合において、同項の業務の適正な運営を確保するために必要であると認めるときは、当該監査法人に対し、必要な指示をすることができる。
2  内閣総理大臣は、監査法人が次の各号のいずれかに該当するときは、その監査法人に対し、戒告し、若しくは二年以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は解散を命ずることができる。
一  社員の故意により、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。
二  社員が相当の注意を怠つたことにより、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。
三  この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反し、又は運営が著しく不当と認められるとき。
四  前項の規定による指示に従わないとき。


今回の処分理由を見ると、「同監査法人の関与社員は故意に虚偽のないものとして証明した」となっていますので、前述の第2項第1号該当として処分が行われたことがわかります。

また、このような不利益処分を行う場合には、行政は一定の「申し開きの機会」を与えなければなりません。これについては、公認会計士法では第三十四条の二十一第3項にて準用する第三十二条のうち、第4項と第5項にて、次のように定めています。
(懲戒の手続)
第三十二条
4 内閣総理大臣は、前二条の規定により戒告又は二年以内の業務の停止の処分をしようとするときは、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第十三条第一項 の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
5  前二条の規定による懲戒の処分は、聴聞を行つた後、相当な証拠により前二条に該当する事実があると認めた場合において、公認会計士・監査審査会の意見を聴いて行う。ただし、懲戒の処分が第四十一条の二の規定による勧告に基づくものである場合は、公認会計士・監査審査会の意見を聴くことを要しないものとする。
(なお、処分権者は「内閣総理大臣より委任を受けた金融庁長官」)


この「聴聞」+「審査会」という手続は、耐震偽造問題に関する建築士の登録抹消でも同様の手続が行われています。このように、当事者にとって不利益となる場合には慎重な手続が行われることになります。

耐震偽造問題の事件の場合、マスコミによって「聴聞の期日や場所」が報道されていますし、国土交通省自信も聴聞の通知を行ったことを発表していますので、少なくとも行政法に定める「聴聞」が行われたことは確認されています。しかし、今回の処分については「いつ誰が聴聞を行ったのか?」ということが全く明らかにされていません。

聴聞自体は原則非公開で行うこととされていますので法律上問題はないとはいえます。しかし、私は行政側が最低限として「適切な聴聞手続を行ったこと」、可能であれば「どのような点を聴聞で確認し、かつ、どのような弁明があったか」については事後的にでも明らかにしなければ「フェア」とはいえないのではないかと考えます。

特に、今回のケースでは、処分の影響が「監査法人」だけでなく「監査契約を結んでいる企業(=利害関係者)」にまで波及することが想定されています。業務停止や登録抹消といった、利害関係者にまで多大な影響を及ぼす処分については、「フェアに処分が行われた」ことを対外的に立証するために、その手続を明らかにすることが必要だと思われます。

疑問2:一罰百戒となっていないか?


また、今回の一部業務停止処分についてはどうしてもどこなに「見せしめとして行われた処分」という印象を感じざるを得ません。これは、前述の「処分決定プロセスの不透明さ」にも関連しますがもう一つは「処分理由の不透明さ」にあります。

繰り返しになりますが、金融庁の報道発表資料では、中央青山監査法人に対する処分理由として次の文章で明らかにされています。
カネボウの平成11年3月期、平成12年3月期、平成13年3月期、平成14年3月期及び平成15年3月期の各有価証券報告書の財務書類にそれぞれ虚偽の記載があったにもかかわらず、同監査法人の関与社員は故意に虚偽のないものとして証明した。


この文章からは、「中央青山監査法人の関与社員が故意に虚偽証明したと金融庁が判断した」ということは分かります。しかし、処分の必要性や軽重を決める肝心の部分である「虚偽証明行為について、どのような事象を持って故意と認めたのか」ということについては全く触れられていません。これでは、今回の処分が妥当であるかどうか、判断をつけることが出来ない=行政に対する監視が出来ないということになります。

ちなみに、3月30日付けの金融庁報道発表資料では、今回とは別の3件の事案に関する公認会計士・監査法人の処分が行われた旨の発表が行われています。この場合には「事案の概要」として「『相当の注意を怠っている』と判断した根拠となる事象(監査での手続)」が公表されています。なお、このケースでは監査証明を担当した公認会計士個人には1~3月の業務停止処分、各会計士が関与社員となっていた監査法人には『戒告(=業務上の支障は極めて軽微)』という処分が出されています。

今回のケースについては「故意性」を認定したことによって、「注意義務違反」よりも重い処分として「監査法人に対する一部業務停止処分」が決定されています。しかし、少なくとも現時点では「『相当の注意を怠っている』とした前ケースとの今回のケースの間での『監査手続き上の相違点』」を知ることは出来ません。このため、「監査手続き上の不備のレベルは同じかもしれないが、事件の知名度やインパクトでを今日慮して『見せしめ』的に重い処分が行われた可能性がある」と疑う余地が残ってしまうと私は考えています。

そもそも、このような状況が発生するのには、一つには「外部の検証が行われない状態で、自ら基準をつくって、自ら状況を評価して、自ら処分を決定してしまう」という「極めて透明性の低い処分決定プロセス」が影響を及ぼしているのではないかと感じています。このような例は日本の行政には共通して見られる部分であり、個人的には最も「悪しき慣習」が残っている部分であると感じています。

ここまで「行政処分におけるフェアプロセス」にこだわるのは、最近ある仕事の中で「フェアでない」と感じざるを得ない出来事に立て続けに出くわしているためです。明日以降のエントリの中で、この点についてもご紹介していきたいと思います。

今後の展開については参考ブログを是非ご覧ください


この話題については、様々な角度から各ブログで取り上げられています。より深く、より詳しくこの問題について知りたい皆様は、ぜひ次にご紹介するブログもあわせてお読み頂ければと存じます。(私も勉強させていただいておりますm(_ _)m)

Grande's Journal
 今回の事件の経緯や資料が分かりやすくまとめられています。
 また、各監査契約先企業の動きもすばやく伝えられています。

法務の国のろじゃあ
 法務系の有名ブログ、いつも勉強させていただいているところです。
 今回の事件でも、特に企業側から見た影響や考えなどが大変勉強になります。

ビジネス法務の部屋(06.05.13追加)
 同じく法務系の有名ブログです。今回の処分に関する問題点の指摘の他、
 監査法人(会計監査人)の内部統制のあり方(+内部統制の限界)についても
 詳しくまとめられています。

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労働保険:申告手続のシーズンです

2006-04-03 | 経営実務
4月に入って、新しい年度に変わりました。今年の名古屋は、まだ桜が「三分~五分咲き」程度なのですが、おかげで入学式とともに桜が楽しめそうです。

さて、年度初めとなる今日は「社労士としての業務」の日でした。新たに法人設立をされたお客様からのご依頼で、労働保険&社会保険の新規適用手続に役所を回っていました。

ご存知の方も多いかと思いますが、労働保険・社会保険の新規適用では「労働基準監督署」「公共職業安定所(ハローワーク)」「社会保険事務所」と3つの役所を回る必要があります。これらの役所は必ずしも同じような場所にあるわけではなく、管轄によっては都合数十キロの距離を巡回しなければならない場合もあります。役所によって求められる書類もまちまちであるため、非常に神経を使います。

今日は年度初めということもあり、どの役所も大変混雑していました。特にハローワークは「新入社員の雇用保険加入手続き」がピークを迎えており、窓口を増員しての対応が行われていました。

さて、既に事業を営んでいる企業・事業主の皆様にとっては、4月に入ったところで「労働保険の申告手続」が控えています。そろそろ役所から書類が届いているのではないでしょうか?

本年度についてはは、労災保険について業種の細分化及び料率改訂が行われています。これに伴って、サービス業系の業種では、通常より慎重な記入が必要となる場合があります。

特に、それぞれの事業所で異なるサービス業系の事業を営んでいる場合には、継続一括事業の適用を受けられなくなる(労働保険の処理を一本化して行えなくなる)場合があります。このため、「もしかして該当するかも?」と思われる方は、送付された書類をよく確認して手続を行っていただきたいと思います。

また、料率改訂では労災保険での最低料率が「1000分の5」から「1000分の4.5」に引き下げられています。こちらも料率を間違えないようよくご確認のうえ、確定&概算申告を行っていただきたいと思います。

労働保険の申告手続期限は5月22日(月)までです。3月決算企業の場合には、5月には法人税の支払も控えています。少しでも資金繰りを楽に進めるために、可能であれば資金手当ては早めに済ませ、出来れば4月中に申告&支払を済ませてしまうことをおススメいたします。

早めのチェックと先読みの対応が「経営を楽にする」コツの一つです。

新規開業:労働保険&社会保険の新規適用手続き

2006-03-09 | 経営実務
今日は、「社会保険労務士」としての業務の一つである「新規設立法人の労働保険&社会保険の新規適用手続き」の仕込み。

手元に様式が全く無かったので、まずは役所に出かけて書類の確保。労働保険と社会保険の手続きを行うためには

○労働基準監督署(基準法関係+労働保険成立+保険料申告手続き)
○公共職業安定所(主に従業員の雇用保険資格取得手続き)
○社会保険事務所(事業所の社会保険適用+従業員の資格取得手続き)

と3つの役所を回らなければならないのですが・・・・これが見事にバラバラに所在しているんですね(^^;; 今日は事務所⇒社保⇒職安⇒労基⇒事務所と回りましたが、移動だけで2時間はかかってしまいました。

ちなみに、労働保険の書式はOCRの専用用紙になっているため、インターネットから印刷することはできません。したがって、新規適用を受けるためには、一度必要書類の一式を取りにいかなければならないのです(めんどくさい・・・・)。

そして、事務所に戻ってきて書類を確認しながら、お客様をサポートするための資料づくり。新規法人設立の場合には、保険料の算定基礎となる「給料」の捉え方に注意が必要なため、一つ一つ確認しながら資料を作成しました。

それにしても労働保険・社会保険手続きは「同じようなことを何度も書かなきゃいけない」とあって、正直言って大変面倒です(-_-;; 電子申請が普及すれば、大変効率化できる分野の一つではないかと感じます。