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コンサルタントのネタモト帳+(プラス)

ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

更新案内:「労働トラブル予防相談所」2件追加

2008-08-20 | 経営実務
事務所サイト内で展開しているAwing労働トラブル相談所に2件のエントリを追加しました。

「部門まるごとハンティング」への対策は?


報道事例からのエントリです。
最近増加を見せている「部門がまるごとヘッドハンティング」について、合法性の検討と企業側での対応策について解説しています。


私傷病休職の期間満了による退職


相談事例からのエントリです。
うつ病の増加などに伴って増えている「私傷病休職の期間満了退職」について、退職手続を進める上での取扱の注意点について解説しています。


ご参考になりましたら幸いです。


居酒屋タクシー問題:「深夜帰宅時のタクシー代」は賃金になる?

2008-06-06 | 経営実務
世間を騒がせている「居酒屋タクシー(タクシー接待)」問題ですが、なんというか、ケチ臭い話題ですね。 個人的にはタクシー運転手側は、方向性はともかくとして「自由競争の中の営業努力」の一貫として考えられなくは無いのですが、自分でもらう給料以外の税金をつかってビールやらキックバックを受け取るというのは・・・・なんともふてぇ野郎ですね(-_-;;

閑話休題、このような深夜帰宅時にタクシーを利用させることは何も公務員だけの話ではなく、一般の民間企業でも日常的に行われています。こうした「タクシー代」を会社が負担した場合については、この費用は「会社の経費」となるのかそれとも「従業員の賃金」とされるのでしょうか?

この正解は「時と場合によっては『通勤手当的な賃金』として扱われる場合がある」となります。。詳しくは、「Awing労働トラブル相談所」をご覧ください。

Awing労働トラブル相談所」にて、深夜帰宅時のタクシー代について調べる


労働契約法:いよいよ3月1日施行!対応は進んでいますか?

2008-02-06 | 経営実務
今日はマジメなお話です。

このブログでも取り上げてきた「労働契約法」がいよいよ今年の3月1日から施行されます。

これまでの人事労務の分野では「労働基準法」が中心的な規制法として取り扱われておりました。しかし、平成20年3月1日以降は、労働基準法に加えて「労働契約法」についても同程度以上の重みを持つ「労働に関する基本的な法律」となります。

労働契約法には罰則規定は有りませんので、労働契約法違反そのものでは刑事罰を課されることは有りません(労働基準法違反は刑事罰を課せられる場合があります)。しかし、労働契約法に従わなければ、労働トラブルとなった場合に会社側が不利な状況に追い込まれ、多額の損害賠償をはじめとした直接的でかつ刑事罰以上に大きな不利益が生じる可能性があります。

そこで、待ったなしの対応を迫られる労働契約法の施行にあわせ、「労働契約法対応度簡易チェックリスト」を準備しました。
労働契約法対応度簡易チェックリスト付き労働契約法解説はこちら(立石智工事務所)

労働契約法の施行をきっかけに、ぜひ自社の労務管理の見直しを進められることをお勧めいたします!


資本政策:従業員持株会の整備

2007-10-30 | 経営実務
今日は事務所で終日仕込み作業。顧問先からご依頼を受けている「従業員持株会の整備」にあたっての各種資料の作成を行っていました。

従業員持株会は「古臭い制度」と思われがちですが、実際には大半の上場企業(予定含む)で取り入れられ、また、非上場のオーナー企業でも数多くの企業で取り入れられています。

従業員持株会の役割は一義的には「従業員の財産形成」という福利厚生的側面にあります。これに加え、上場企業の場合であれば「安定株主対策」の側面を有しており、昨今では「従業員による意図しないインサイダー取引の抑止」といった機能も期待できます。また、非上場企業であれば「相続・事業承継対策」「経営参画意識の向上」といった点ともあわせて活用される場合も多いでしょう。また、ベンチャーのような比較的株主数が多い非上場企業の場合には「株主数の圧縮」という効果も期待できます。

従業員に対する資本政策では、一時期「ストック・オプション」が活用されていました。しかし、最高裁判決で税法上のメリットが少なくなる一方、会社法施行に伴ってストック・オプションにかかる会計処理がやや面倒になった(一定の債務処理が必要)ことにより、以前と比べるとストックオプション発行のメリットが少なくなってしまいました。これにより、主たる目的である福利厚生的側面と照らし合わせても再び「従業員持株会」を活用するメリットが出てきていると言えます。

比較的従業員数が多く規模の大きな企業の場合には、従業員持株会の運営を証券会社などが幹事となって行っているケースが大半です。しかし、実際の運営手続き自身は「入退会」「持株等の財産管理」「決算・個人別計算」程度です。民法上の組合として従業員持株会を設立すれば、特別の届出や登記なども特に必要とされませんので、中小企業であれば、自社で全ての事務管理を行うことも十分に可能です。

また、非上場企業の従業員持株会であれば、制度設計時においても自由度が広く、自社の狙いにマッチした工夫も織り込むことが可能です。もちろん、これから上場を目指す企業であっても、その時々の状況に応じた仕組みづくりを行うことが出来ますので、工夫一つで「面白い持株会」を構成することができます。(現在進行中の案件にも「工夫」をいろいろとこなしています。)

とはいえ、一つの「組合」を作る従業員持株会の設立にあたっては、いくつか注意すべき点もあります。コンプライアンスにしっかりと対応させつつ、より有効に活用できる持株会を作るには、「最初にしっかりと考える」ことが大切だと感じます。

「将来的な上場を目指す」「事業承継・株価対策が必要」「従業員の経営参加意識の向上」「株式の受け皿が欲しい」といったニーズをお持ちの経営者の皆さまは、ぜひ一度「従業員持株会」制度の検討をおススメいたします。

有給休暇:「基準日に基づく付与」の留意点

2007-09-21 | 経営実務
今日は社労士業務からの話題を一つ。労務に関する事務は様々なものがありますが、その中の主要な一つの事務として「年次有給休暇の管理」があります。

年次有給休暇は、労働基準法に基づいて従業員に付与される休暇で「一定の範囲で従業員が原則として自由に取得する時期を指定できる休暇」です(但し、繁忙期など一定の理由がある場合には会社側に時期変更権が認められているので注意が必要です)。

年次有給休暇は「勤務開始から継続して半年経った時点」から発生し、その後1年を経るごとに新たな年次有給休暇が発生します。なお、時効の関係から一旦付与された有給休暇は、2年経過時点まで有効とされています。

年次有給休暇は(たとえ就業規則等に定めがなくても)自動的に発生する労働者の権利であり、後々のトラブルを避けるためには会社側としても適切に管理することが不可欠です。しかし、ここで注意しなければならないのが、年次有給休暇の付与の時期です。

先に述べたとおり、労働基準法上の年次有給休暇は「勤務開始から継続して半年経った時点」で発生するとなっています。これは、すなわち採用の日が異なる労働者ごとに、年度ごとの有給休暇の発生日が異なってしまうということを意味しています。法律の定めをそのまま間に受けて管理しようとすれば、毎年新たに付与される日がバラバラになってしまうことから、実務上の負荷も大きくなり、また、ミスも発生しやすくなってしまいます。

このため、労働実務上は「1年度内に有給休暇を付与する基準日」を設け、入社日に関わらず、この基準日において一斉に有給休暇を付与する方法を採用することが一般的です。この方法では、新たな有給休暇の付与を概ね「1年に1回のルーチン・イベント」として集中的させることが可能であり、事務ミスの防止に繋がります。
実際、私の関与している顧問先の皆さまもこの「基準日方式」による有給休暇の管理を行っているところがほとんどです。

しかし、この基準日方式を採用する場合、労働基準法との兼ね合いから次の2点については注意を要します。

【注意点1】 基準日で付与される有給休暇の日数は「前倒し」にしなければならない


従業員に付与しなければならない有給休暇の日数は「勤続年数」ごとに異なります。労働基準法では、付与すべき日数を「0.5年目に10日、1.5年目に11日、2.5年目に12日・・・・・6.5年目以降は1年ごとに20日」と定めており、付与する時期に合わせて日数が決められています。

しかし、基準日付与方式で行う場合には、基準日における勤続年数が「1年2ヶ月」「3年8ヶ月」等中途半端な月数となってしまいます。このような場合には、基準日において「次に到来する時期に付与しなければならない日数」を前倒しして付与しておなければなりません。これは、本来の付与対象日(○.5年経過日)になった時には本来付与すべき日数を満たしていなければ、従業員にとって不利=労働基準法違反となってしまうためです。

【注意点2】最初の半年の取り扱いには注意が必要!


基準日を年1回しか設けない場合、入社の時期によっては基準日より前に「0.5年経過日」が到来してしまうケースがあります。この場合、基準日とは関係なく「10日の有給休暇」を付与することが求められるので、そのままの状態では若干の事務手間がかかってしまいます。

もちろん、この影響は最初の0.5年目だけの話しですので「従業員の出入りが少ない会社」であれば大きな問題とはなりません。しかし、従業員が頻繁に採用される会社の場合には、このままの状況では折角の「基準日による事務集中化」のメリットが半減してしまいます。

これを回避するためには、「0.5年経過時点についてのみ、通常とは異なる基準日をもう一つ設ける」「予め年2回の基準日を設け、入社時期によってどちらの基準日を使うかを選択する」などの方法があります。これらの方法を活用することで、事務の集中化のメリットを最大限に引き出すことが可能となります。


労働実務上で考えると、有給休暇の付与モレそのものを原因としてトラブルになることは少ないでしょう。しかし、従業員との間で労働トラブルが発生した時に、適切に有給休暇の付与・管理が行われていないと、無用なトラブルの種を一つ増やすことに繋がってしまいます。たかが1日の違いと侮ることなく、簡単にできる工夫を活用しつつもしっかりと管理を行っていくことが、労働トラブル防止の第一歩につながっています。

なお、有給休暇についてはこの他にも「斉一的付与」や「退職を控えた従業員への付与」「パートタイマーへの付与」等様々な論点があります。有給休暇の管理や従業員からの有給休暇の請求にお困りの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問合せください。

NOVA:「給料遅配」だけはマズイです・・・・

2007-08-02 | 経営実務
英会話大手のNOVAで給料の遅配が発生したとの報道です。

NOVAの給与一部遅配 「システムトラブル」と説明(Yahoo!ニュース - 産経新聞)


誇大広告などで経済産業省から業務の一部停止命令を受けた英会話大手のNOVAで、7月27日に予定されていた給与の支払いが一部で遅れていたことが1日、分かった。また、社内規定で「業績に応じて6~8月に支給」としている賞与も、猿橋望社長名で「社内の経営態勢が整うまで協力してほしい」として支給を10月まで先延ばしすることを社員に伝えた(以下略)

同報道によればNOVA側も給料遅配の事実を認めているとのことです。報道の断片的情報だけで判断することは難しいですが、「給料遅配」というのは現従業員の生活に直結する重大な問題であり、コンプライアンスはもとより、労基法上も重大な問題となります。

労基法では、賃金の支払い方法について通貨で、直接、全額、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないとされています(賃金支払の五原則)。これは、日本においては国民に「勤労の義務」を課しており、国として「生活の糧は働いて稼ぎなさい」という方針をとっているために、その「生活の糧」である賃金の支払いについては、きちんとした生活の糧の確保が出来るよう、使用者側に対して上記の五原則をはじめとした非常に強い制限を設けています。(なお、賃金支払五原則への違反は30万円以下の罰金という罰則がもうけらられています)

また、一定の条件を満たす給料遅配・不払いの場合は「賃金支払確保法」による保護を受けられることとなっており、労働者の生活の安定と保護ができる限り行われるよう整備されています(ちなみに、賃確法の適用を受けてしまった事業所に対しては、労基署の監督官による送検処分が行われることが通例です。)

たった一日であっても給料の支給が遅れれば、従業員の生活には即座に影響を与えますし、何よりも「生活の糧が手に入らないかもしれない」という非常に強い不安を与えることになります。私は、従業員を一人でも雇った場合には、その瞬間から給料を確実に決まった日に支給するということが「絶対死守」のラインとなると考えます。これを守れないのであれば従業員を雇う資格は無いといわざるを得ないでしょう。

NOVAからはシステムトラブルという説明があるようですが、システムが動かなければたとえ多少の誤差が生じて「後で過不足の修正」を行うことになっても暫定的な金額を手作業で振込み支給することも出来るわけですから、これは全く言い訳にもなりません。今までの給料遅配の事例では「経営不振で、本当に従業員に払うキャッシュがない」という状況で起こっていたものですし、このような会社は当前の事ながら早晩倒産の憂き目に遭っています。

ちなみに、NOVAホームページのIR情報には、本日現在ではまだ本件に関するリリースが出されておりません。本件については、経営上の事項として株価にも影響を与える情報であり、適時開示が求められる事項になるのではないかと感じます(この点、適時開示に詳しい方がお見えでしたらご教唆頂ければと幸いです。)

NOVAについては、業務停止命令や信用の低下などで経営が相当に苦しい状態に追い込まれているということですが、一社労士としては今回のことで「企業として守らなければならない一線」を超えてしまったと言わざるを得ないと考えます。

懲戒処分:「頼んだ上司」と「頼まれた部下」、さてどっちが悪い?

2007-07-06 | 経営実務
企業における「懲戒処分」は職場の秩序・風紀の維持のために不可欠なツールです。しかし、対象者に対して不利益を与える懲戒処分は“さじ加減”が難しい「劇薬」でもあります。懲戒処分を発動する際には、こうした“さじ加減”と真剣に向き合っていかなければなりません。

この“さじ加減”の中でも難しい判断を迫られるケースの一つが、「上司が不正行為を依頼した」というケース。「仕事の関係」を引きずりやすいこうしたケースでは、どちらにどの程度の「懲戒処分」を課す必要があるのかは、大変難しい問題となります。

しかし、警察という組織の中では、残念ながらあまりこの点について考えられていないようです。今日の毎日新聞に、こんな報道がありました。

掘り出しニュース:押収わいせつDVDを私的複製、巡査長を書類送検(毎日新聞)


【埼玉】押収した違法なわいせつDVDを私的に複製して上司らに渡したとして、埼玉県警監察官室は5日、羽生署警備課の男性巡査長(27)をわいせつ図画頒布と児童買春・児童ポルノ法違反(提供)容疑でさいたま地検に書類送検し、懲戒免職処分にした。巡査長は「安易な考えで犯行をしてしまい反省している」と話しているという。

 調べでは、巡査長は今年2~3月、同署員3人に対し、児童ポルノを含むわいせつDVD計15枚を複製したり、私有パソコンに取り込ませるなどして渡した疑い。同室によると、巡査長はレンタルビデオ店のわいせつDVD事件の捜査を担当。違法DVD制作販売会社から押収した機器を使って複製していた。3月上旬、別の署員が署内の証拠品保管室で複製しているところを発見した。

 また同室は同日、DVDを受け取った同署の男性警部補(55)ら3人を停職1月などの懲戒処分とし、複製を依頼した同署員ら6人を本部長訓戒などの内部処分とした。同室は「恥ずべき犯罪行為で誠に遺憾。証拠品の管理を徹底する」としている。【村上尊一】

この懲戒処分について、この報道からだけでは「妥当性」が検証しにくい部分があります。それは「懲戒免職となった巡査長」にどれだけの“主体的な能動性”が認められるかと言うのがいまいち不明確であるからです。

例えば、巡査長自身が「こんなすごいDVDありますよ。どうです、一つコピーいりませんか?」と積極的に勧誘していのなら、懲戒免職もやむなしでしょう。しかし、例えば、警部補等の依頼者側から「こないだのDVD,あれ、一つコピーしてもらえんかね?」等と依頼されたとすれば、警察と言う組織での力学を考えれば巡査長がきっぱりと断ることは実際問題として難しい側面もあるでしょう。場合によっては巡査長は「パワー・ハラスメント」の被害者とも捉えられる可能性も考えられます。

今回の懲戒処分の決定に当たってどのような調査が行われたかわかりませんが、一般的な「上司である依頼者」と「部下である実行者」の力関係で考えれば、処分の軽重バランスが適切かどうかということに素朴な疑問を感じざるをえないと私は考えます。

年度更新:手続きはお早めに!

2007-04-23 | 経営実務
さて、久しぶりに料理以外の話題から。雇用保険法の改正の遅れの影響で先延ばしとなっていた「労働保険年度更新」ですが、ようやく改正雇用保険法が国会で成立し、手続きが開始されたのことです。

平成19年度労働保険年度更新手続の開始及び申告・納付期限の変更(延長)について(厚生労働省)


年度更新申告書(概算・確定保険料・一般拠出金申告書)の送付については、例年4月1日頃に事業主・労働保険事務組合の皆さんに送付させていただいておりますが、本年度については、雇用保険率の改正等を国会でご審議いただいていたため、送付が遅れておりました。

この度、雇用保険率の改定がなされたことから、速やかに、事業主・労働保険事務組合の皆さんに年度更新申告書を送付させていただくこととしております。


国会審議が遅れた理由は「成立前に『成立しました』とフライングしてしまった厚生労働省担当者の大ポカ」となっていますが、実際には「国会議員の国民軽視な邪魔臭いプライド」の方が正直たちが悪いと感じています。この影響で4月分の給与計算に相当な混乱が生じたことを、国会議員はどこまで認識しているのでしょうか?

それはさておき、この雇用保険法改正遅れにより遅れていた労働保険年度更新手続について、以下のような注意点がありますので御注意ください。

また、平成19年度の労働保険料・一般拠出金の申告・納付の取扱いについては、次のようになりました。
(1)  改定後の雇用保険率については、平成19年4月1日以降の労働保険料に遡って適用されます。
(2)  平成19年度の年度更新申告書の提出及び労働保険料・一般拠出金の納付の期限については、平成19年6月11日(月)まで延長されます。
(3)  平成19年4月1日から4月22日までの間に
ア 保険関係が成立し、又は廃止した事業、
イ 労災保険の特別加入の承認を受け、又は取り消された事業、
 に係る労働保険料・一般拠出金についても、法定の申告・納付期限に22日を加えた日まで申告・納付期限が延長されます。


ちなみに、雇用保険料率は一般の事業で15/1000(うち事業主負担分9/1000、従業員負担分6/1000)、建設事業では(うち事業主負担分11/1000、従業員負担分7/1000) とそれぞれ4.5/1000ずつ引き下げとなります。平成19年度分の概算申告の際には、料率を間違えないよう御注意ください。

労働保険の年度更新に関するご相談は当事務所でも随時受付中です。お気軽にご相談ください。

労働契約法制:いよいよ閣議決定とのこと

2007-03-14 | 経営実務
「ホワイトカラー・エグゼンプション」の議論が終わったらすっかり盛り下がってしまいました労働契約法制ですが、「ナントカ還元水」問題で国会がすっかりグダグダになっている間に、さらっと閣議決定が行われたとのことです。

労働3法案を閣議決定、社保庁改革法案も(NIKKEI NET-日本経済新聞)


政府は13日、残業代の割増率引き上げを盛り込んだ労働基準法改正案など労働関連の3法案を閣議決定した。すでに国会に提出している雇用保険法改正案など3法案と合わせ、雇用ルール改革の6法案が出そろった。社会保険庁の廃止・解体と新組織の設立などを規定した日本年金機構法案も閣議決定した

「ホワイトカラーエグゼンプション」こそ見送りとなりましたが、今回の労働契約法制は労使双方にとって大変影響の大きいものとなっています。

詳細分析は法律案が発表された後に回すとして、今回の「労働契約法制」の整備による影響を要点だけ簡単まとめると、次のようになります。

「労働契約」に関するルールの明確化


・「労働契約の書面化」が進められる(「通知」から「締結」へ)。
・就業規則は『労働契約』の内容とされる(一種の「約款」的な取り扱い)。
・「就業規則」の整備はこれまで以上に必須。
・「就業規則には無い労働契約の特約」が有効化される
・就業規則の変更手続をきちんと行えば、「労働契約の変更」と認められる。

『使用者側の権利行使』への規制強化(濫用法理の拡大)


・「出向」「転籍」「懲戒」にも「濫用法理」を適用。

労働時間法制


・長時間労働者に対する時間外割増率の引き上げ(50%以上の割増率!)
・一定の条件下において、時間単位での有給付与が認められるようになる。

その他、他の関連法令の整備とあわせて、重要ポイントが目白押しです。何よりも今回新設される「労働契約法」は、今後の労働実務において極めて重要な影響を与えると思われますので、本ブログでも法案公表以後順次分析したいと思います。

ということで、まずは速報ベースまで。

マニアック労務:転勤者に対する「経済的支援」は必要?

2007-03-12 | 経営実務
久しぶりの「マニアック労働実務」のコーナーです。先日頂きましたご相談に、こんなテーマがありました。
遠隔地に複数の支店を持つ企業で、ある従業員Aに対して転居を伴う転勤を命じました。Aは転勤について同意の意向はあるようなのですが、一つ条件をつけてきました。それは、「住宅ローン減税が受けられなくなる分の補てん」です。

Aは数年前に住宅を購入しており、ここ数年住宅ローン減税の恩恵に預かっています。しかし、今回転勤をするとなると、この住宅からA一家が転居を余儀なくされ、本来受けられる住宅ローン減税の適用から外れてしまいます。そこで、Aはこの住宅ローン減税の見合い分について、補てんをすることを条件として出してきたのです。

さて、会社はこの条件を受け入れなければならないのでしょうか?(ちなみに、
Aは家庭の都合から単身赴任は難しいという前提です)

今回のご相談の趣旨はこのようなものでした。

住宅ローン減税は、住宅ローンを使って一定の要件を満たす住宅を購入した場合などに、年末時点の残高をベースとして、納付すべき所得税を減らすことが出来る制度です。サラリーマンの場合ですと、通常は「源泉徴収」によって予め納税していますので、住宅ローン減税の手続きをすることによて「還付」を受けられる形になります。場合によっては十万円単位の還付金を得られるケースも有ることから、実際の額よりも「気持ち」の面で大きなメリットに感じる減税措置の一つではないかと感じます。

ただし、住宅ローン減税の場合には「自らの居住の用に供していること」が減税措置を受けるための条件となります。したがって、今回のケースの場合には、Aが転勤によってすめなくなってしまうことから、確かに「経済的な不利益」が発生することとなります。

また、このようなケースの場合には、自宅に住む・住まないに関わり無く「住宅ローンの返済」が発生します。しかし、転勤となった場合には転勤先において別に住居を借りる必要が出てくるため、この点においても「住宅ローンの返済」と「転勤先での家賃」という「2重の経済的負担」が発生するとも考えられます。

これに対し、労働法ではどのように取り扱っているかといえば・・・・・直接的には何の手当ても行われていません。したがって、会社は従業員に対してこのような場合の保証をしなければならないという「法律上の義務」はないと言うことになります。

しかしながら、過去の労働裁判を紐解くと、「人選の合理性」や「転勤の必要性」などの要件を満たさない場合には、「命令権の濫用」として転勤を無効とされるケースも見られます。特に、会社の命令にて転勤させるような場合において、転勤者に経済的な負担を押し付ける形になる場合には、なかなか裁判上も受け入れられないようです。また、裁判に至らないとしても、「転勤」をさせるということは、ただでさえ従業員に負担を強いることになりますので、従業員に気持ちよく働いてもらうためには、会社としてはやはり「一定の配慮」があって然るべきではないかと私は考えます。

「配慮」の一例としては、次のようなものが考えられます。

○「住宅ローン減税が受けられなくなる」等、転居に伴う経済的不利益への補てんとして・・・
 ・一定年数(2年程度)を区切っての特別手当・上乗せ賞与の支給
 ・転居費用の会社負担
 ・会社が従業員の持ち家を借り上げてしまう
○ローン返済と家賃の「二重の負担」を回避するために・・・
 ・会社での社宅の借り上げ
 ・転勤者に対する住宅手当の支給

ただ、これらの仕組みを作るときに注意しなければならないのは「あまり個別具体的なケースにとらわれすぎない」と言うことです。実際に転勤者が出る場合には、個別具体的に千差万別なケースが出てきてしまいますが、これに対していちいち対応していてはとても大変な上、他の転勤者との「不公平感」を生じさせる可能性もあります。ただ、どのような状況であれ「転勤」となれば、従業員にはそれなりの負担が生じます。したがって、「従業員(とりわけ、転勤者)に気持ちよく働いてもらうためには、何が必要か?」と言う観点から、会社として取るべき「筋」をきちんと考えた上で、何らかのルール作りを進める必要があるのではないかと私は考えます。

この話しをまとめますと、転勤者への経済的な保証・補てんといった部分について、「法律上の義務」があるかといえば「基本的には無し」と言うことになります。しかし、実務上では「従業員が戦力としていかに気持ちよく働いてもらえる環境を作るか」という観点で、会社が可能な範囲で可能な対応をとっていくことはやぶさかではないのではないかと私は考えます。

この件に限らず、人が動くこのシーズンは「転勤・出向・転籍」にまつわる様々な労働問題が発生する時期でも有ります。こうした「転勤・出向・転籍」にまつわる労働実務についてお悩みを抱える経営者・経営幹部の皆様を、立石智工事務所では積極的にご支援いたします。