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ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

コンプラ:管理職なら労働法の理解は必須!

2006-07-11 | 経営実務
前回のエントリで“解雇”という視点から労働法とコンプライアンスのかかわりについて考えてみました。最初のネタを提供いただいたtoshi先生のビジネス法務の部屋はもちろんのこと、私がよくお伺いさせていただいている法務の国のろじゃあでも大変有意義な議論を拝見させていただくことが出来ました。(ただ、両ブログとも現在ココログのメンテナンスに引っかかっており、コメントやエントリの投稿が出来ない状態になっているのが大変残念です。)

さて、このような流れのなかで、とある方から「労働法とコンプライアンス」に関わるような別のお話をお伺いしました。

舞台となっているのは、大手企業の系列に属している某営業会社。そこで、ある日こんな出来事があったそうです。

いつものように仕事をしていると、お客様から商談の電話が掛かってきた。そのお客様の担当は同期の仲間だったのですが、あいにくとシフトの関係で今日はお休み。そこで、まずは分かる範囲で対応し、責任者である上司の管理職へ報告しました。

すると、報告を受けた上司は、担当者である部下に連絡を始めました。そして、なんと
「今から見積もり資料を持っていくので、家からお客さんに電話を入れて!」

と指示を出したそうです。

さて、このケースを分析してみましょう。まず、シフトを組んで順番に休みを取っている以上、会社が営業日であろうが、部下にとってはは間違いなく「休日」です。その休日に「お客様への対応」を指示しているわけですから、例え自宅で作業をしようとも、立派な「休日労働」となります。そうすると、当然「働いた分の賃金+3割5分増し以上の休日労働手当」の支払いが求められます。これは、きちんと支払われなければもちろん「違法行為」となるわけですし、きちんと払ったとしても当然会社から見ればコスト増=収益圧迫要因となります。

次に、今回の「指示」そのものが「指揮命令権の濫用」に当たる可能性も考えなければならないでしょう。部下は「休日」とされた日を自由に自分の時間として使うことが出来るのは当然のことです。会社が営業中でたとえお客様からのお問合せがあったとしても、それは、他の出勤しているメンバーや管理職自身がカバーすべきものであって、よほどの不要不急の用件でもない限り、休日中の部下の自宅にまで押しかけて仕事をさせることはそもそも筋違いというものです。

また、この上司はさも当然かのように部下の家庭へ仕事を持ち込んでいますが、これ自身も上司がそこまでの権限を有していることは自明ではなく、(万が一これがトリガーとなって家庭不和でも起こったらどう責任を取るつもりだったのでしょう?)

上司としては「CSに向けたお客様への迅速な対応」を図りつつ、休日中の部下へ出来るだけの配慮をしたつもりかもしれませんが、私の目には「マネジメント不在で、休日中の部下に対応と責任と押し付けている」としか写りません。労働法に抵触する可能性が高い事案であることはもちろん、「部下のキモチを大事に大切にする」という管理職として最も基本的に求められる規範からも外れていると言われても仕方が無いでしょう。

管理職にとっては「労働法」や労働規範といった類のものは「マネジメントという仕事を行う上での基本的なルール」といえます。このような「基本的な部分」が出来ていないような状況の中で「コンプライアンス遵守」などというのは遠い先の話のように感じざるを得ません。

ろじゃあさんが自らのブログの中で指摘されているように、コンプライアンスシステムの構築や維持管理を行っていく中では、管理職や従業員に対する労働法関係の研修・教育プログラムというものを組み込んで行かなければならないのではないかと考えさせられる事例でした。


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