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労働契約法:新「厚労省試案」の行方は?

2006-11-10 | 経営実務
労働契約法の改正論議、一時は「頓挫か?」と思われていましたが、ここに来てようやく少し動きがあった模様です。

本日の報道では、特に激しく揉めていた「ホワイトカラー・エグゼンプション(自律的労働時間制度)」について、厚生労働省側から「新試案」が登場したとのことです。

週休2日確保し導入 労働時間規制見直しで厚労省が新案


労働法制改正の焦点となっている労働時間規制の見直しで、厚生労働省が新たな素案をまとめた。一定の年収以上の会社員を労働時間規制の対象から外す自律的労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)について「自由度の高い働き方にふさわしい制度」と名称を変えて導入を明記。同制度には過労による健康被害を懸念する声が強いことから、対象者の休日を週2日以上とすることを企業に義務づけ、適正に運営しなかった企業には改善命令や罰則を科すなどの内容を盛り込んだ。

 同省は、10日午後に開かれる同省の審議会に素案を提示。来年の通常国会に労働基準法改正案など関連法案を提出する考えだが、休日確保で過労が防げるのかなど論点も多く、労使の調整は難航が予想される。 (以下略)
(asahi.com-朝日新聞)


上記報道によれば、今回の試案では、ホワイトカラー・エグゼンプションに伴って懸念される長時間労働防止措置として「週休2日の確保」「医師面接基準の引き下げ」が明示されたようです。また、別途検討されていた残業の割増賃金率については、同省は6月の当初案で「1カ月の残業が30時間を超えた場合は現行の25%増しを50%増しに引き上げ」としていたが、素案では、割増率引き上げの義務づけは健康にかかわるような「長時間労働者」に限るとされたようです。

この件についての報道は今のところasahi.comにしか見当たらず、労働者側のみの反応が寄せられていませんが、まだまだ紆余曲折するのではないかと感じています。

個人的には、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入には賛成の立場です。しかし、に長時間労働を防ぐための措置としての『基準』や『罰則』には、有効性が乏しいことは現状から明らかです。では、どうすればよいのかといえば、私はアメリカ労働市場にヒントがあると考えています。

ホワイトカラーのプロ化が進んでいるアメリカでは、『より良い条件の会社に、優秀な人材が集まる』ようなホワイトカラー労働市場が構築されています。だから、「ホワイトカラー・エグゼンプション」のような仕組みを入れても、会社が要求を呑まなければ『会社を替わる』というオプションを行使して、自分の環境を変えることが出来、また、会社としても「優秀な人に辞めてもらいたくない」という動機から『良い労働条件』を整えます。これらが、両輪となって、はじめて「ホワイトカラー・エグゼンプション」が有効に機能しているといえます。(もちろん、他の要因も多々ありますが、ここでは簡略化しています。)

したがって、日本で「ホワイトカラー・エグゼンプション」を入れる場合にも、これは『労働者側の自由意志で簡単に転職ができ、キャリアパスが傷つかないホワイトカラー労働市場』が整備されることが必要と考えます。これは、即ち「ホワイトカラー市場」と「ブルーカラー市場」を分けることにほかならず、「個人の能力や個性に左右される度合いが大きい仕事」と「だれがやっても余り代わりが無い仕事」で雇用体系も賃金体系も採用体系も「働くということ」について何から何まで「格差」が生じてくるということに繋がるのです。

私個人の意見で言えば、「働き方」が違う以上、このような「格差」が就くのはやぶさかではないと考えますが、日本全体でコンセンサスが取れる問題かどうかというと?をつけざるを得ません。ただ、現実には、特に後者については「派遣労働」「請負労働」「パートタイマー」という形で既に「市場」も「体系」もできつつあります。あとは前者について「市場構造の変化」が生じるか否かというのが現在と割れているところではないかと感じます。ただ、日本としてこのような「格差」を許容しない(できない)環境にあるのであれば、「ホワイトカラー・エグゼンプション」は長時間労働の誘発等のデメリットばかりが強調されてしまうと私は考えます。

取り留めの無い話になってしまいましたが、取り急ぎ報道と自分の頭の仲の備忘録まで。


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