もう亡くなって何年たつのだろうか。十数年なのかな。高校の同級生で面白い奴がいてね。今思ったら「芸術家肌」っていうのだろうか。茶目っ気があって人懐っこいのだけどどこかに孤独感を隠していて懐かしく思い出すことが時々あった。そいつの話が久しぶりにでてね、またこれがそいつらしくて面白いんだ。悲惨だけど。「芸術家肌」というか自己主張が強いから当然一般の会社じゃ勤まらない。職業は転々としてたらしいけどナンセ「芸術家肌」だからまともにやってても途中でムクムクと創作意欲が湧く。すると仕事ナンカやってられるかとなってクビ。の繰り返し。中でも土鈴の絵付けの仕事には笑っちまった。あるとき土鈴に絵付けしてたらまた例の創作意欲がムクムクと湧いてきたんだってそしたらたまらず土鈴にミロを描いちまったって。社長もぶっ飛んだってっていうからね。土鈴は廃棄処分でアイツはクビ。だけどなんかアイツらしいと笑ってしまうエピソードではある。自分をどこかで受け入れてもらいたかったのか創作を考えすぎたのかあっけなくアル中で逝ってしまった。まだ絵に興味も関心もなかった高校の時、教室でこっそりアイツがクリントイーストウッドの「荒野の用心棒」の似顔絵を見せてくれたことを思い出す。今思えば、ペン画でウマかったんだなぁ。生きていれば一緒に絵を描いていたかもしれないのにと残念に思う。底抜けに楽しいバカが俺たちの世代には多かったんだね。いまでもみんな悲しくも笑わせてくれるもんな。
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