出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

一般的手法

2009年02月10日 | 営業
前回書いたことに続けて、さらになるほどと思ったこと。

今回とてもお世話になっている書店さんに、著者と一緒に挨拶に行った。業界の人に自己紹介するときはいつも、『日本でいちばん小さな出版社』の・・・と言うことにしている。言うだけじゃなくて、読んでない人向けに版元が作ってくれたカードを持っていって見せる。相手が書店の場合、「ああ、知ってる」ということになって具合がいい。

今回もそういう感じだった。普段(著者と一緒じゃないとき)は、読んでくださいとか注文してくださいとか営業するんだが、今回の主役は著者なので、「そうですか」程度の返事をした。すると、その方曰く「本は売るもので、読むものじゃない」。

今回協力してもらっているのも、本がいいとか悪いとかとは関係なくて、単純に著者の知り合いからの紹介である。「あの人が頼み事をすることなんて滅多にないから協力する」という感じ。それはそれでありがたい。

考えてみれば、今回協力してもらっているのは「懇意の店の担当者を紹介してくれる」ことや「懇意の版元に、そこの雑誌で紹介してくれと頼んでくれる」ことである。つまり、対象がどの本でも同じ。いや、読んでくれと言いたいわけじゃない。もう作っちゃったんだから「ここをこうしたらよかった」なんて言われたら悲しいだけだし、読者対象からもはずれている。

ただ、今まで熱心に営業をしたことがないわりには協力してもらうことは何回かあって、それはみんな「本を気に入ってくれた」からだった。気に入った上で、じゃあ書評を…とか、じゃあ平積みを…という展開になったんだが、今回は違う。本の評価はさておいて、「より売れるためにする一般的なこと」をしてくれる。

そこで、前回書いた「売れるかどうかわからない」話を思い出して、わからないから(60点だから)そうなのかな?と思ったんだが、それもちょっと違う。この方は、本はそういうふうに売るのである。

世話になってる人のブログで、「出版社をパン屋とすると、手作りパン屋と製パン工場では違う」というような話を読んだ。ちなみに製パン工場は、「素材の均一性を管理し工場での大量生産にも関わらず品質の維持に技術を磨き物流や販売の管理まで頭を悩ませる」という説明。もしかして私が感じたのは、本屋版「手作りパン屋と製パン工場」なのではなかろうか。もちろん、「商品の均一性」ってことはないんだろうけど、パンがどうとかいうこと以外の「できること」をするという感覚が同じだ。もちろん、出版社のほうの製パン工場は品質管理も気を抜かないだろうから、製パン工場ならではの「いいものを」という感覚もあるだろう。

私は別に「本を売るなら読んでくれ」とか「読んでいいと思ったものだけを売ってくれ」なんて全然思わないし、営業嫌いなくせに「物流や販売の管理」は好きだ。でも「いいと思ったから協力する」という姿勢のほうが安心感がある。より嬉しいというわけではないし、より長く協力してくれるかといったらそれもわからない。

うーん、何を言いたいのかわからなくなってしまった。街のパン屋と製パン工場の中間みたいなことがしたいんだろうか。で、書店に関しても、その中間みたいなのがしっくりくるというか・・・?

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