出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

予約販売

2006年04月05日 | 発売前
以前、予約販売に必要なことという記事を書いた。

書いたときには、予約販売ってのがすごくいいことに思えて張り切った。張り切って営業した結果は無残だった。つまり、予約販売に成功したオンライン書店がたったの1軒。やっぱりメールじゃなくて個別に訪問して売り込まないとダメだな~と思ったんだが、いろいろ忙しくて忘れてしまった。営業嫌いなので、他のことを優先してしまう。

が、よく考えたら、予約販売は何のためにするんだろう。

予約なんだから、よく言う「口コミで広がってよく売れた」って効果は望めない。タレントの写真集なら「出たんだって!」という口コミもありそうだが、普通読んでもいない本を人には薦めないだろう。

直販だったら「金が先に入る」という大メリットがあるが、オンライン書店じゃ意味がない。予約は注文扱いになるんだろうか。「うち&取次」より「取次&オンライン書店」のほうが仲が良さそうなので、うちの場合は新刊配本数の中に含まれて終わりという気がする。

それとも、予約殺到!と煽るためだろうか。殺到しなかったら、どうするんだろう。

カッコよく言えば、私は出す本の潜在読者数はわかる。その先はわからないんだが、「この人たちには買ってもらいたい」って人たちの数はわかる。

予約販売したとして、その人たちが予約したとして、「発売後に買う人」が減るだけじゃなかろうか。

よく考えたら、購買申込が殺到したら発売前だろうが発売後だろうが、同じ「売れてる!」じゃなかろうか。

以前知り合いが、「書店に新刊営業をしたら注文が多かったので、発売前に増刷した」と言っていた。一瞬、羨ましいと思ったんだが、やっぱり「見本出しのときに出す短冊(指定短冊というらしい)に含まれる」わけですよね。となると、新刊委託配本となって、歩戻し取られるわけですよね。おまけに、入金は7ヵ月後ですよね。

歩戻しはいいとしても、印刷代がかかる。うちの場合、新刊が少なくて、新刊納品月も他の月も入金額は大して変わらないという、非常に「平均された」経営になっている。そこで「新刊刷ったばっかりなのに、また刷る」ってことは、非常に厳しい。

増刷ったって、資金がなきゃできない。納品書なんかを担保にして金を借りるつもりはまったくない。あ、できないのかな、したことないのでわかりませんが。

委託清算が結構多くて、かつ注文数が多くて月々の入金が多くて、やっと増刷への準備も整う。

となると、予約殺到!というのは、なんかすごく怖い。オンライン書店だから返品は少ないとしても、やっぱり怖い。

地道にゆっくり売れ続けてほしい。じゃなかったら、うちが読者から直接購買申込を受けて、先に払ってもらいたい。

版元側のワガママではあるが、そこから出す本のタイプも見えてくるような気がする。