goo blog サービス終了のお知らせ 

出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

著名な著者

2006年03月06日 | 発売前
以前、著名な人だとある程度の売上が読めて楽だという話を書いた。いい物を作っていれば口コミで…という話もあちこちで聞くが、やっぱり著名人云々は実感としてある。

著者の希望で発売日を決め、著者の仕切りで出版記念パーティーを決め、その日程に合わせて発売日を変更したんだが、見事にフライングをしてくれる。「ほしい人がいるから」とか「売れたから」と言って、百部単位でどんどん「送ってくれ」リクエストが来る。

パーティーに来るお客さんや書店で買ってくれるお客さんより早く届けちゃっていいんですか?ときいてみたけど、売れるのが嬉しくてたまらないようだった。原稿のやり取りをしていた頃は、書店での発売日についてもいろいろ考えていたようだが、全部吹っ飛んだらしい。

見本ができた時点で、すごくテンションが変わった。やはり、美しく装丁された現物を手にすると違うらしい。もちろん私も毎回そうなんだが、いよいよ感が高まったのがよくわかった。

そこからは怒涛のまくり。

以前にも書いたと思うが、手紙でちんたらやり取りしていたのが、私の携帯に電話がかかってくるようになった。それはそれで嬉しいが、原稿のときにもそうだったら、ちょっと楽だったかも・・・。

自分で売れるように動いてくれる著者は非常にありがたいが、ファンが多い人だと動く数が違う。

問題は、ここで「だから無名はダメ」とか「名前だけでも確保」とかの道に走らないようにすることだ。言うのは簡単だが、すごく難しいと思う。経営者としてはそっちに偏りがちだが、幸いうちにはあまりコネがない。部数を見込める人とじっくり作るってことが、できるかもしれない。

コネじゃなくて企画だということも真実だろうから、いろんなアプローチがありそうだ。

巷の編集者にとっては当たり前のことだろうけど、まあ、実感を伴って覚えて行くのもよかろう。

出版記念パーティー その2

2006年03月01日 | 発売前
著者サイドで開く出版記念パーティー。どういう人を呼べばいいのかわからなくて困っていたが、心配なくなった。

先日会ったとき、ドサッと案内状をもらってきた。よくあることなのかもしれないが、著者主催なのではなく、著者の贔屓が連名で「出版記念のつどい事務局」というものを作っていた。

取材はどうしたいかとたずねると、いらないと言う。取材お断りというわけではなくて、出版記念パーティーだけは身内でやりたいということらしい。みんなで楽しく飲みましょうよとのこと。

いや~、よかったよかった。数百人のお客さんの受付ぐらいは手伝うんだが、これまでに世話になった人たちに声をかけるだけで済む。いっぺんに気が楽になった。

図書館流通協会見本

2005年12月15日 | 発売前
製造業である出版社でどこまで「一貫生産」できるかってことを考えたりしてたんだが、もう少し考えをまとめてから書く。

出版社らしいブログを書きたいのは山々だが、私なんかの日常業務では小さいことしか起こらない。

ただし、小さいことにも気づく。

先日来の「返本の中に献本が混ざっていた」に絡んで、しばらく伝票とかも小まめにチェックしていた。そうしたら、「図書館流通協会見本」という名目で、新刊が「注文返品」扱いで返ってきた。

図書館流通センターというのは知っている。取次の図書館担当者に見本として献本するときもある。しかし「協会」というのは初めて聞いた。

初めてといったって、出版ナントカ協会とか書籍ナントカとか、やたら団体が多くて全部きちんと把握なんかしてないんだが、「返品伝票に出てくる」時点で少々怪しい。

ちなみにトーハンである。

普段なら無視する(しょうがないと思う)んだが、日販のことがあった後なので電話してみた。

やっぱり図書館流通センター宛の見本だという。じゃあ、いかにも「一企業への見本じゃなくて必要なもの」みたいにわざわざ「協会」なんて嘘つくな。必要なら見本ぐらい出しますがな。

本当の問題は、見本云々じゃない。以前、図書館への見計い品について書いたが、似たような問題である。

書店へ配本してくれるだろうと(少なくとも私は)思っている本を、図書館流通センターへ「これ、どう?」と1冊送って、返ってきたら普通に「書店からの返本」と一緒に返す。

日販と違って、実害はない。細かいことを言えば「返品手数料」ってのがあるんだが、他の本と一緒に返ってきたし、「取調べのための電話料金」のほうが高いくらいだ。

けど、またまた「なんとなく気分悪く」なったのは事実。

ああ、こんなことばっかり気にしてるわけじゃないんだが、もうついでに書きましたよ。

出版記念パーティー

2005年12月06日 | 発売前
本日は著者との打ち合わせに出かけた。

内容の確認はほぼ終わっている。「いついつ頃に著者校を頼むよ」とか「イラストの確認はどこまでしたいか」など、ほとんどがスケジュール管理的話だった。

前回書いたように有名な人なので、出版記念パーティーについて確認するということも、大きな議題の一つだった。たまたま、10年ほど前に本を出したときにはパーティーをしたという話を別の人間から聞いていて、なら今回も…と提案した。

大きな宴会や何かのお披露目パーティーの手配をしたことはある。とにかく面倒だ。自分自身が招く側なら事は簡単だが、「招く人間」の代わりに手配するとなると、打ち合わせ項目は倍になる。

出版記念パーティーというものは初めてだ。開催するのも初めてだし、招かれたこともない。

なんとなく、出版社が開催して著者を祭り上げるもんだと思っていた。

以前どこかで、「誰それの出版記念パーティーで○○出版の誰それと会って…」ってなことを読んだことがある。業界の人がワーッと集まってて、著者そっちのけで旧交を温めたという感じだった。

うーん、よくわからないが、とにかく相談した。

そしたら、自分でやると言う。逆に、出版社側の客のリストをくれと言われた。

確かに、「出版記念」なるものは10年ぶりだし、ファンの方々へのお披露目だけで数百人のパーティーになってしまう。

私はどうしたらいいんだろうか。

なにしろ出版業界の知り合いは、少ない。ネットを通じて知り合えた若い編集の人とか、第一線を退いた人くらいしか知らない。

でも、立食パーティーに「知らない者同士」というのは、日本では辛い。それに、やはり「やっと知り合いになれた人を呼ぶ」ってのは、出版記念パーティーにはどうかと思う(当たり前)。

ここは、(日頃は文句ばかり言ってるが)取次に相談するべきか。大手書店などを呼ぶのが一般的なのか。あるいはとにかくマスコミに声をかけるのか。

そもそも、版元が「ご招待」するものなのか。

せっかくだから実り多いパーティーにしたい。これから数ヶ月のうちに猛勉強をしなければならない。

---

勉強はしますが、出版記念パーティーなるものについて少しでもご存知の方、コメント欄に「こうだったよ」情報をぜひお願いします(ペコリ)。

見本の行き先

2005年05月12日 | 発売前
EDITOR NAVIさんのブログに、献本が古書店で売られていたという悲しい話が。。。

似たような話で恐ろしいことを昨日聞いた。新刊を出すときの見本納品。国会図書館なんかに行かないことは知っていたけど、それより恐ろしい話。

その前に、見本納品といえば、1年前くらいまではきかれなかったことがある。

「献本でよろしいですか?」

初めてきかれたとき「伝票ありますか?」ときかれて、何のことかわからなかった。見本は「あげる」もんだと思い込んでいた。なんだよ~、買う気あるなら最初から言ってくれと思ったけど、その日は当然伝票なんて持ってない。

でも、つい最近の見本納品のときも、献本のつもりで伝票は持っていかなかった。というのも、売っていただくんだから、商品サンプルをタダで提供するのは当たり前と思うから。なぜ4冊も…と思わんでもなかったが、あちこちの部署に行くもんだと想像してた。

それに、ホラ、新刊のときってドサーッと本が来るから、周りに気前よく「読んで、読んで」と配ったりしてて、あんまり気にしなかったのだ。(最近はそんなことない。宣伝用は別として、ちゃんと買っていただく)

ところが昨日聞いた話では、見本が返本されてくるという! 残念ながら書店から返ってくる本はしょうがないが、それと一緒に!

よく考えたら、1日300冊を超える新刊が出て、それぞれ4、5冊の見本が提出されるんだから、取次には毎日1000冊を軽く超える本が持ち込まれるということ。じゃまに思うだろうくらいのことは、想像するべきだった。

それも、ただブツが返ってくるだけじゃなくて、返品伝票にその数がきちんと含まれていて、当然計算書でもマイナス数字で入ってくるってこと。仕入れてないのに、引いてくるとは何事だ!

おまけにうちなんか初回配本数が少ないから、4冊だけでも返品率に影響を及ぼす。

勘弁してほしい。

そのことを教えてくれた人は、献本のしるしをつけると言っていた。で、おじさんがドサーッと持ってくるときに、しるしがついた本は受け取らないと言い張るらしい。

いいことを聞いた。うちも今度からマークかなんかつけてやる!

連休に本を読む人

2005年05月02日 | 発売前
身内のごたごたのせいで、久しぶりのブログ。

本日は、見本納品(部決)に行ってきた。ところで、本日のように見本を持っていく日は、部数は決定しないが、やっぱり部決なんだろうか。6日に電話して確認するので、その電話が「部決電話」という気がする。

今回は、著者にいついつまでに出したいと(自分が書くのが遅いくせに)言われることもなく、非常にスケジュールが楽な本だった。見本も4月末には私の手元にあった。

で、いつ持ってくか自由なので、悩む余裕もあった。

4月中旬に「今度出す本に関するお伺い」に行ったとき、トーハンからは「連休前に入れろ」と言われた。別に命令じゃないんだけど、「連休前に書店に行って連休中に本を読む人が多い」から、だそうだ。同じくお伺いに行った日販では「連休前は新刊が多いので後で入れろ」と言われた。

さあ、どっちだ。

うちはどっちでもいいが、できれば混んでいる連休前納品は避けたい。見本納品のカウンターも混んでるし、書店に送られる新刊も、少ないときのほうが見てくれそうな気がする。

新刊が多かろうが少なかろうが、見て置いてもらえる本を作るのが筋だ。けど、「あまり多いと、箱を開けもしないで返す」なんて、2ちゃんに書店員の書き込みがあったりして、結構気にしてしまう。ちなみに2ちゃんは、正確な情報が必要なときはあてにしないけど、こういうちょっとした本音っていうのは、本当に本音じゃないかと思って読む。

実際、どうなんだろう。

私の場合、以前勤め人だった頃は連休と言えば旅行で、旅先で読むための文庫をいつも連休前に5冊くらい買っていた。家で読むのは、ゴールデンウィークより正月休みのほうが多い。こういうときは、重くても構わない。

ただ、新刊っていうのは出たときに読みたいので、「連休に読みまくる」となると、ちょっと前に出た本とかが多い。

などなどと考えて結局、本日見本納品にした。つまり連休後納品。それも連休後ちょっと経ってから書店に並ぶ。

結果は、とにかく仕入部のカウンターはすいていた。いつもと違って、ほとんどお休みモード。ちなみに私が行った10時頃で、トーハンの「10日納品新刊数」だったかなんだか、入り口の少し奥にある看板、あれは「280冊」だった。普段もだいたい同じ時間に行くけど、もっと多い。

いや、数だけが理由じゃない。今回の新刊の内容が、連休に合わないから。

天気のいい5月の連休中にちょっとベランダに椅子でも出してビール片手に読むって感じなら、連休前納品にした。ところが、作ってる最中は「5月病の季節! 時期ピッタリ!」と思って作ってたうつ病関連の本だから、休みが終わって仕事に戻った頃に…と考えたわけです。

どう転ぶか、楽しみではある。

出版企画をひねり出す

2005年03月07日 | 発売前
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

その知人の本を出せないことになって、一瞬めげたが、好きな本を出していいとも言えるので、あっという間に立ち直った。立ち直ったが、考えたらやっぱりそんなに簡単じゃない。

ちなみに取引申込で年間10冊くらい出すと言ったが、実際の契約では「6冊は出しなさいね、じゃないと代金払わんよ」と書いてある。

後になってわかったけど、この契約はいいかげん。実際は冊数ではなくて、売掛金だけがモノをう。売掛残高があるうちは、出さなくても大丈夫。出さなくても…というのは、ずいぶん後ろ向きな姿勢だが出すには金がいるので、うちは無理しない。

よく「売掛金の回収のために新刊を出して、自転車操業に陥る出版社」と言われる。けど、そういう業界知識を慌てて詰め込んだ私としては、現実の経営状況を把握する前に「次々出したらいかん!」というのが頭にこびりついている(笑)

とりあえず自分ひとりでじっくり作ってみて、何ヶ月かかるかやってみようと思った。3、4ヶ月くらいだろうと踏んだ。勝手に。たぶん年に3冊出せば文句言わんだろう。

皆さんは、「編集とか雇えばいいだろ」と思われるでしょうけど、ひとつ問題があった。取引開始の条件として1500万円の資金を作れとトーハンに言われてたが、本当は作ってなかったのだ。帳簿操作だけ。後は様子見と思ってた。何にも知らない業界に、大金つぎ込むか、普通?

1冊目の資格本くらいの予算なら、あと何回かいけそうだ。しかし、ということは、何回か出して生き残るためには印刷代以外に予算はかけられない。ということは、やっぱり私がひとりでやらないとダメだ。

けれども、本当の問題は予算じゃなかった。(この頃は)

例の知人が「いち抜けた」した後、出版企画というものを考えてはみました、本当は。

けれど!

芸能系にコネがあったが、アホタレントの本なんて嫌だ。文芸は、手を出さない方がいいらしい。個人的に「幸せになる」系の本は、好かん。経済系はいいんだけど、範囲が広すぎて悩む。ダイエット本は売れるらしいが、軽薄な気がする。

自分の会社の金だから、やりたいことができるのだが、あまりにもチョイスが多すぎて、これ!というのが思い浮かばない。お腹いっぱいのときに、「何でも好きなもの食べて」とずら~っと食べ物を並べられたような感じ。

後になって気がついたのだが、企画、企画といってもまっさらな状況から生まれるわけではない。前に出した本とか、誰かが会いに来るとか何かきっかけがあって「あ、これ面白いかな?」と思い、いろいろ調べてみて「イケルかも」となる。

私は「応用は得意だけど、ゼロから作れない」タイプではない。自分で言うのは恥ずかしいが、クリエイティブなほう。なのにというべきか、だからというべきか、企画で行き詰ってしまったのだ。

これまでの本との関わりは、あくまでも「読者」。突然作れと言われて(言われてないけど)困ってしまった。